BloomingClover14巻とinfernoの可憐についての考察
可憐がとった行動の真意を、inferno の台詞パートやソロ曲の歌詞考察を交えながら紐解いていく
前書き
先日発売されたBlooming Clover 14 にて、可憐と海美の2人という新たな人物関係が描かれていた。また、カバー曲である inferno のセリフパートは海美・可憐によるオリジナル仕様となっており、本編における彼女らの行動や感情との強い関連性が見られた。
例の場面での可憐の行動や態度を見て、少し意外に思った人も少なくないのではないだろうか。かくいう私がそう感じてしまったので、彼女の行動が本当に意外性のあるものなのかを考察した。
すると、あの場面での可憐の行動は彼女にとって驚く程自然なものであったという結論に至った。
この記事では可憐に焦点を当て、infernoの可憐の台詞パートを彼女のソロ曲と照らし合わせながら、彼女の決断の理由とそうなるまでに至った真意を紐解いていきたい。
その為この記事ではBC14後半のネタバレを含むため注意されたし。
BC本編における可憐
あらすじ
同じオーディションを受ける事になった海美と可憐。それを知った海美が可憐に対し協力を提案するが可憐はそれを拒否する。しばらく気まずい関係が続いてしまう2人だが、後に明かされた可憐の本音は「私は自分を変えたい。だから海美ちゃんと一緒には頑張れない」。可憐のライバル宣言を聞いて海美は不器用にも様々な思いを巡らせるが、最後には覚悟を決めその想いに正面から応えた。
可憐に抱いた意外性
まず、可憐が海美にとった拒絶という行為に対し、自分が抱いた感覚は意外性だった。
可憐はどちらかというと温厚な性格であると思うし、ミリシタにおける「りるきゃん」や「G♡F」 などにおいてもアイドルとの仲睦まじい様が見て取れる。そんな彼女が仲間である海美に敵意とも呼べるものを向けたのが不思議であった。
可憐の思いをもう少し詳しく見ていくと、彼女は次のように語っている。
きっかけは「地味で臆病な自分を変えたいから」、目標を「皆のようなかっこいいアイドルになる事」、海美と協力しない理由を「憧れや想いを夢見るだけで終わらせたくないから」と可憐は話している。
しかしこの言葉を聞いてもなお、可憐の決断の理由は分からなかった。可憐の中で、自身の夢を叶えることと海美と一緒に頑張る事がなぜ両立できないのかが分からなかったからだ。
その答えは、当場面と強くリンクした inferno の台詞パートと、これまでの可憐を築き上げてきた彼女のソロ曲との関連性を考察することで自ずと見えてくる。
inferno 台詞パート
海美パート
可憐パート
本編とのリンク
おおよそ可憐のライバル発言から海美がそれに答えるまでの場面の事を指していると考えていい。全て網羅することはできないが該当の場面と台詞パートとでは共通する単語や表現が頻出している。
可憐の真意を図るため本記事では可憐パートについて考察をしていく。
本編とのリンクもそうだが、そもそもこの台詞自体が可憐という人物の性質を実によく表している。その根拠は考察の欄で丁寧に説明していきたい。
篠宮可憐について
歌詞を読み解いていく前に、いまいちど篠宮可憐というアイドルについて、そして彼女のソロ曲について軽くおさらいしておきたい。
可憐は自称地味で臆病な女の子だ。ある日プロデューサーにスカウトされ一度は断るが、今の自分を変えたいという気持ちでアイドルになる事を決意した。
基本的に物腰が低く緊張に弱かったり自分に自信が持てない場面も多いが、ステージの上では持ち前のビジュアルと高いパフォーマンスを発揮してくれる。
可憐のソロ曲は、可憐という人間の性質・心情・人生に物凄く添った曲が揃っている。
ソロ曲の性質上そのアイドルに寄り添った歌詞や表現になる傾向が強いのは当然なのだが、中でも可憐のソロ曲は彼女の時間経過とそれに伴う成長が詳しく描かれている。
つまり、infernoの台詞パートにソロ曲と重なる部分があれば、可憐がアイドルとしてどの程度の成長段階にあるのか、その時の可憐がどのような心情であるかを読み解くことができる。
その為、本考察の上でソロ曲の引用には大きな意義がある。ソロ曲の歌詞と照らし合わせながら、infernoの台詞パートを一行ずつ解き進めていく。
考察
1行目 瞳
瞳 貴方を見つめる事が怖かった
人見知りな所がある可憐は人の目を見るのが苦手な時もある。だがここでの見つめるとは、前向きになる事、そして目の前の人間と向き合うという事であろう。
しっかりと前を見る事が怖い事、そんな自分を変えたいがそれでも一歩を踏み出せない様子が描かれている。
「教えてlast note…」では、イントロはPと出会った直後の頃の、1番はPのスカウトを受けてアイドルになりたての頃の可憐が描かれている。
BC14の可憐は一通りの仕事を経験した後であるから、この時点よりは少し成長した可憐と考えるべきだろう。
パートナーとなる誰かに寄り添う事で初めて、可憐は前を見つめ自分と向き合う事が出来るようになる。
元の曲から言えばそのパートナーは P のことなのだが、ここではライバルとなる海美の事と考えていい。
少し余談めいた話になるかもしれないが、ちいさな恋の足音のテーマは恋愛というよりも本質は可憐自信の「変わりたい気持ち」であると考えている。変わりたい気持ち、伝えたい気持ちがあるけどもどかしくて伝える事が出来ない様子を恋心になぞらえて歌った曲なのだ。
その為ここでの変わりたい気持ちを自立させてくれる対象としてアイドル仲間である海美を据える事は何ら問題はないと思われる。
2行目 耳
耳 鳴り響く心の声に震えて
この箇所は、夕風のメロディーにかなりリンクした表現がある。
心=胸と置き換えて考えていく。
胸の中に秘めた思いも、誰かの声を聴くための耳も、どちらも可憐が身を置く環境(ここ)にあるものとして同列な扱いをされている。
その2つの違いは可憐の内側にあるか外側にあるかだ。「成果」として誰かの声が聴覚を通じて伝わるからこそ「耳」が心の受け口となるのだ。
しかしここでの耳はそういった対外的な働きではなく、むしろ逆の働きをしていると言える。本来なら胸に秘めた思いを放った後での結果を受け取る事が耳の役割だが、その思いが伝えられない時、行き場の失った想いが胸の内で反響し苦悩の音となってしまう。
心の声を表に出すことは怖いが、それに怯えて何もできない事が一番苦しく感じてしまうというのが当時の可憐の心情という事になる。
3行目 唇
唇 漏れ出る弱気を飲み込んだ
弱音ではなく弱気。
基本的に可憐は自己評価が低く、その評価は「地味で臆病」。
言ってしまえば日常的に弱音を吐いてしまっているともいえるのだが、だからこそ可憐の「自分を変えたい」という意志は際立つ。
弱音は吐いてしまうけど、心の底では前向きでありたいと思っているという気持ちの表れだ。
4行目 両手
両手 不安を握りしめ 夢を掴むため
両手を伸ばしたのは、仲間の手ではなく夢を掴む為。
可憐の自信の無さの元凶は、彼女の持つ劣等感にある。自分は同じ境遇の人間よりも優れてないと思い込んでしまう節があるのだ。
そんな彼女にとっての成長とは、諸々のスキルアップというよりも、周りの人間に追いつくという考え方が強い。自分はあの人よりも劣っているから成長しなければいけない、その為にはまずは自身がその人と対等にならなければいけない、といった考えを本人は持っている。
つまり、彼女が目標となる人物を見つけたとき、「変わりたい」「成長したい」という動機がその人によって与えられたのにも関わらず、その人の手を取ることはできないのが可憐という人物なのだ。仮にそうしたとしても、本質的な自分の成長には繋がらないと考えている。
従って、可憐は目標となる人物の手は借りない。その人の所まで自力で追いつく事が彼女の意志であり、自身の成長に不可欠なものだと考えているからだ。
だから海美との協力を拒絶したのだ。
このことを踏まえて、改めて該当の場面の台詞を振り返ってみる。
海美たちを見て生まれた夢だからこそ、それを叶えるためには海美の手を借りたくない。海美の手を借りてしまうと、海美の後ろを追いかけるだけになってしまう。それではいつまでたっても成長することができない。だから、可憐が変わるため海美にはライバルでいてもらう必要があるのだ。
このように読み解いていくと、あの場面での可憐の行動は彼女の性格や価値観と全く矛盾しない。可憐が成長を望んだ時点で、一時的な決別は起こるべくして起こったものだと言えるだろう。
5行目 決意
決意 覚悟と共にある
ここまで読み解いていけば可憐にただならぬ覚悟があることは明白だろう。
「自分を変える」という強い決意は、「仲間と対立する」、「自立する」といった覚悟と共に決められたのだ。
アイドルになる前から今に至るまで、そういった強い決意と覚悟を繰り返してきたのが可憐という人物だ。あの場面はそんな可憐の強さの一端が垣間見えたに過ぎないのだ。
まとめ
私はこの記事の初めに可憐の行動を「意外に思った」と書いたが、考察を終えた後ではむしろ自然な行動だったとしか言えない。可憐の心情を瞬時に読み解けなかった事は可憐Pとしてふがいないばかりだ。
しかしこの考察はかなり有意義なものであったと実感している。可憐Pにとってもそうでない人にとっても、あの場面の可憐の心情を読み解く手助けになったのなら幸いである。
ちなみにだが、私は可憐Pであり海美Pでもある。じゃあ海美についても考察しろよと言いたくなるかもしれないが、可憐の考察だけでも思ったより長くなってしまった為今回は割愛させてもらった。今回海美の心情は可憐よりは分かりやすいと思うので許してほしい。(仮にやったとしても別の記事であろうが)
さて、可憐が海美との協力を拒み海美もそれに応えるという展開でBC14はあまり穏やかではない終わり方をしたが、このままぎこちない関係が続いていくのだろうか。
そんな懸念を吹き飛ばすような歌詞の引用で、本記事は締めさせていただこうと思う。