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ボストンで見つけた大きな弦楽器の話

※本エントリは マンドローネ Advent Calendar 2024 の2日目の記事です。

全国のマンドローネファンの皆さん、こんにちは。
関西では「ブレーメン音楽団」を、関東では「トーン・クラスター マンドリンオーケストラ」を指揮している相原と申します。今シーズンは仕事の都合でボストンに派遣されており、マンドリン活動はお休み中です。
そんなわけで今回はAdvent真っ只中のアメリカから、大きな楽器が大好きなマンドローネファンの皆様に、ボストンで見つけた大きな弦楽器をご紹介します。

ボストンといえば、ボストン交響楽団。

クラシック音楽好きの日本人にとってボストンといえば、やはりボストン交響楽団(BSO)と小澤征爾。BSOはアメリカ5大オーケストラの一つに数えられ、残念ながら今年他界されてしまった小澤征爾が29年間の長きにわたって音楽監督を務めていたことでも知られています。

 名誉音楽監督とされる小澤征爾(左)と現在の音楽監督アンドリス・ネルソンス

BSOは、ボストン市内にあるシンフォニーホールで毎週のように演奏会を開催しています。有名なオーケストラですが、演奏会直前でも比較的チケットは確保しやすいので、ボストンにお越しの際はぜひ足をお運びください。

2階客席からの風景

シンフォニーホールは内装も美しい。1階の客席を確保された方も、ぜひ2階も探検してください。2階のバーカウンターがある部屋には、我らが小澤征爾の肖像画も飾られています。

この写真を撮っていたら、現地の方に「Seijiの演奏はここで何度も聴いたよ!」と話しかけられました。

ホールにあったやたら大きな弦楽器

小澤征爾の肖像画を撮って満足して歩いていると、同じフロアに何やら怪しげな大きな楽器が展示されているのを見つけました。

右の消毒設備との対比からも大きさがお分かりいただけるかと

全長は180cmくらいでしょうか?写真の男性が肩にネックを乗せているので、ひょっとしたらもっと大きいかもしれません。形はマンドローネよりむしろ、バラライカに近いようにも見えます。
解説によると名前はTrumpet Marineとのこと。え?弦楽器なのにトランペット?まぁこんだけデカいからさぞ低い音が出るんだろうと思ってよく読むと・・・


"The trumpet marine is NOT a bass instrument"

…WHAT???

こんなに大きいのに低音楽器ではない、と。解説の全文を訳すと、

トランペット・マリンはその大きさにも関わらず、低音楽器ではない。「高調波」の音が、ネックの上側で弓をひきつつ、弦の様々なポイントに軽く触れることによって生み出される。その音は、ミュートされたトランペットに驚くほど似ている。

と書かれています。いったいどんな音がするのか気になったので、YouTubeで音源を探してみると・・・

ありました!
なるほど、ハーモニクスで奏でる楽器なんですね。言われてみれば、トランペットっぽい音な気もします。

Wikipediaの英語版にはTromba Marinaとして記事になっていました。ざっと要約してみます。

  • 中世からルネサンス期に使われ、主に1本の弦で自然倍音を奏でる。

  • 長い三角形のボディを持ち、片側で振動する特殊なブリッジが金属的な音を発する。

  • ドイツでは修道女がトランペットの代わりに教会で使用したことから「修道女のヴァイオリン」とも呼ばれた。18世紀初頭に衰退してしまった。

確かに修道女がトランペットを吹いている姿は想像できないですが、その代用とされていた楽器だったとは。自然音階の楽器なので、平均律が広まった頃に衰退してしまった、というのも納得です。

以上、「大きい楽器は低い音を出すものだ」という固定観念を覆してくれる楽器のご紹介でした。弦が長いほうが出せる自然倍音の種類は多いわけで、ぜひぜひマンドローネ奏者の皆さんもトランペット・マリン奏法にチャレンジしてみてください!


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