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指揮の打点とマンドローネの発音タイミングに関する一考察

※本エントリは マンドローネ Advent Calendar 2022 の4日目の記事です

マンドリンオーケストラの指揮者をしている相原と申します。
関西では「ブレーメン音楽団」を、関東では「トーン・クラスター マンドリンオーケストラ」を指揮しています。(詳しいプロフィールは、こちらをご覧ください。)
今回は、指揮者の視点から、「指揮の打点とマンドローネの発音タイミング」について考えてみたいと思います。

基本原則

まず、指揮の打点と発音の関係において、指揮法では「指揮の打点を見てから発音する」が基本です。

指揮者は頭の中で自分の理想の音楽を鳴らしながら、オーケストラよりほんのちょっと先に進む。オーケストラは指揮者を見て、指揮よりほんのちょっとあとに音を出す。曲が始まったら両者が同時進行、ということはあるが、オーケストラが指揮者より先に音楽を進めることは、ありえない。

岩城宏之, "指揮のお稽古", 文藝春秋

打点と発音タイミングは指揮者やオーケストラによって様々で、打点から発音までに時間をかけるオーケストラもあれば、打点とほぼ同時に音を出すオーケストラもあります。ただし、指揮より早くオーケストラが音を出すことは、(基本的には)ありません。

マンドローネの場合

演奏会のリハーサルで気づいたこと

ブレーメン音楽団では、コロナ禍で幻となった第11回演奏会からローネ互助会の方々にご参加いただいています。前回、第13回演奏会でもローネが2本も登場し、大栗裕のバーレスクなどで大活躍しました。

(ローネが大活躍するシーンから。【注意: 振っているのは私ではありません笑!】)
バーレスクは私が振る曲ではないので、リハーサルでは私はホールの後ろでバランスを確認したり、舞台上で奏者の音の聞こえ方とのギャップを確認したりしていました(決して曲が難しいからサボっていたわけではない笑)。
後ろで聴いたり舞台上で聴いたりを繰り返しているうちに、こんなことに気づいてしましました。

  • マンドローネは、指揮の打点よりかなり早く音を鳴らしている。練習でも早めだけど、ホールだとめっちゃ早い!

  • 舞台上ではローネはハシっているように聞こえて、ローネの前にいるドラやチェロが煽られている!!!(笑)

  • それにも関わらず、ホールの後ろで聴くと、全体とローネは合って聞こえる。

仮説

あまりに衝撃だったので、リハーサルそっちのけでホールの椅子に座って考え込んでしまいました(笑)。そのときに考えたのは、

  • ローネのピックが弦に当たって音が出る打撃音と、弦が震えて楽器が共鳴するタイミングにタイムラグがありそう。

  • 舞台上では打撃音が顕著に聴こえるようだ。

  • ホール後方では共鳴音が知覚しやすいので、全体として合って聞こえるのでは?

ということです。演奏会後にTwitterでつぶやいたところ、出演してくれた石川さんからこんな発言が。

私が学生時代にお世話になった、神戸大学の阪上先生(建築音響がご専門)からも、「大きい楽器(低音)だと、表板全体に、ひいては楽器全体に振動が行き渡るのに時間がかるはず。それで立ち上がりが変わりそう。」「マンドローネが大きいのと胴が大きいので、鳴り始めるのに時間がかかるのだろうと推測できる。」とのコメントをいただきました。

提言

上の仮説を検証するまでには至っていませんが、以上を踏まえて私からこんな提言をしたいと思います。

  • 奏者は、指揮の打点を見てから発音しましょう。(基本原則)

  • メンバーにローネがいるとき、ローネ以外のメンバーは特にきちんと指揮の打点を見てから発音するようにしましょう(=指揮の打点と発音との時間差を長めに取る。するとたぶん、ローネも指揮の打点を見てから発音できる)。

  • ローネは楽器の特性上、指揮の打点と発音の時間差が短めになりますが、他の奏者はそれに煽られないように気をつけましょう。

いつか、ホールリハーサルの時間に余裕があるときに、仮説の検証もしてみたいですね。他のマンドローネ奏者の方や、マンドローネパートが長く常設されている老舗オーケストラのみなさんからも、ぜひご意見を伺いたいです。

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さて、ブレーメン音楽団には今シーズンもローネが沢山出演します。編曲初演となる「マードックからの最後の手紙(2021年版)」には、編曲者の遠藤先生にわざわざローネパートも作ってもらったので、2023年3月18日はぜひぜひマンドローネの活躍を見に神戸にお越しください!


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