見出し画像

腕時計

ダラダラと生きていると、自分の事なのに、何でこんなことになってしまってるのか、もはやわからないということもいくつかあるものです。

私は腕時計はもう何年も、安物のTIMEXのクロノグラフにNATOバンドをとおして使っています。
これまで何度か壊してしまったこともありましたが、そのたびに同じようなモデルを必死で探し回り、なんとか手に入れてきました。

きっかけは、自分がまだ若くてピチピチしてた頃まで遡ります。
当時、私には、
「あぁ、自分の人生、この先も、これ以上に好きになる人なんて出てこないだろうなぁ」
というくらい夢中になった女性がいました。
(自分で書いてて吐き気がしそう🤮)

で、ある日、その彼女とアウトレットに行き、なにかの流れで、さして趣味でもなかったのに G-SHOCKの記念モデルを彼女セレクトで購入することになりました。
直後は「これは一生モノだ!」と興奮は頂点に達していました。。これは当たり前です。

しかし、これはまた今後書くかもですが、その後、その彼女とは神の力により別離させられてしまう(要はフラれた)こととなり、途端にそのG-SHOCKは、自分にとって特級呪物並みのトラウマ物件になってしまったのです。
何度海に投げ捨てようと思ったことか。。

しかし、時計自体がなかなかのお値段だったことに加え、環境想いの優しい好青年でもあった私にそんなことは到底できようはずもありませんでした。
結局は「壊れたらとっとと打ち捨ててやろう」との決意の元、しぶしぶ使い続けることに。。。

ところがです。
1. ソーラーバッテリー
2. 電波制御で自動時刻調整
3. そんな深海潜ったら死ぬやろってくら
 いの圧倒的な耐気圧性能
4. 拳王(ラオウ)の時計なの?ってほど
 の信じられない程の耐衝撃性能
全くビクともしないのです。
少なくとも私本体より寿命が長そうでした。

CASIO恐るべし。

その後、腕時計をすること自体、すっかり億劫になり、スマホ全盛も相まって私はいつしか「腕時計をしない派」の若者になっていました。

その頃、出会ったのが、とある、まぁ、言いたくはないのですが私に仕事を1から10まで教えてくれた当時の上司でした。
そのおっさんがたまたま使っていたのが、NATOバンドを通したたチープ極まりないTIMEXだったのです。
まぁ最初はそれを見て、“いい歳こいてチープな感じがお似合いだな。。と内心鼻で笑っていました。

ただ、今ではもうナイスミドルとなった私も、当然、当時は若かったわけで、仕事で外に出ることも多かったのですが、夜になる度に何故かその上司が「ほらっ」と、そのTIMEXを光らせては、その青白い盤面を私に見せてニタニタするのを見るのがいつも嫌で嫌でたまりませんでした。

毎回、「気持ち悪いなこのジジィ」と思っていたわけですが、当時から人間ができていたからか、その嫌悪感は全く表情には出ていなかった様子で、そのうち調子に乗ってきたジジィは「そもそもお前はなんで腕時計しないんだ?いい歳しやがって」などと、事情を知った上で言ってやがったら鼻頭をグーでしばいてやろうかという程の暴言を吐き出すようになりやがったのです。

それでも人間ができている私は
 「いえ、特に理由はありませぬ」
といつも冷静に大人の対応。

すると、このジジィは、もともとチープなTIMEX野郎なので、更にエスカレートしてくるわけです。
1. 社会人が時計をしないなんてどうなの
2. 腕時計しないようなヤツがモテるわけ
 がない
3. 今買うならTIMEXだ
と、事あるごとに同じ話をしつこく繰り返してくるようになりました。

1は、何となくわかるものの、2なんて自分も全くモテないクセして何言ってやがんだジジィって話だし、3に至っては全くもって意味不明でした。

ですが、ジジィって大体、話の引き出しが少ないじゃないですか?
だから止めないんですよこのイジリを。

毎日毎日おんなじ話を事あるごとに聞かされされ、流石に後々“令和のフグ田マスオ”と呼ばれるようになる程の人格者である私も、遂に“このジジィ!首を蹴ってやろうか!”という衝動に駆られるようになりました。

しかし、いくらなんでも腕時計ごときの話で、いきなり上司の首を蹴っては自分のクビこそが危なくなるだろうと大人の悟りの境地にまで至った結果、きったねえディスカウントショップみたいな所で再度腕時計を購入することになったのです。

で、そこからずっとNATOバンドをとおしたTIMEXなのです。

ですから、かいつまんで言うと、
女の子にフラれる →CASIO恐るべし→ 安物の上司におちょくられる → 首を蹴りたくなる → 悟りの境地→TIMEX購入
という経過でこうなってしまったのです。

正直、今の年齢でこの時計はいかにもチープ過ぎて恥ずかしい。

しかし、今となっては何故かはわかりませんが、もうこの紆余曲折を経て使うようになったNATOバンドの時計を手放すことができないのです。

不整脈が出た時にApple Watchも勧められましたが、それもスルー。
あれはNATOバンドでは無理ですからね。

昨年の忘年会帰り、初めて若い奴にTIMEXの盤面を光らせてニタニタしてみました。
もし首を蹴られたら、Apple Watchに変えるつもりです。🤣

いいなと思ったら応援しよう!