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ゴールデンアワー

一般的にゴールデンアワーと言うと日没前の夕焼けの時間、空が美しく写真を撮るのに絶好の時間帯のことを指すことが多いと思う。私もこの時間帯に空を眺めて、携帯のカメラで記念に写真を撮るのが好きだ。

でも今回は私にとっての別の意味でのゴールデンアワーについて書いてみようと思う。それは散歩のゴールデンアワー。私はけっこう歩くのが好きで気分転換や外の空気を吸うという目的でよく散歩をしている。そんな私にとっての散歩のゴールデンアワーは夕暮れ時だ。

夕暮れ時に日本の住宅街の車があまり通らない道を歩くのが好きだ。この時間になると子供達も家に帰っていて外は静かだ。でもそれぞれの家からもれる明かりや話し声から人々の生活の息吹を感じ取ることができる。そして夕飯の匂い。これが私は大好きだ。各家庭が夕飯の準備をしていて、家の前を通ると漂ってくるごはんの匂いがどれも美味しそうで嬉しくなる。あ、この家は秋刀魚焼いてる、とか、今日はカレーかな、とか、煮物作ってるな、と想像力を膨らませながら散歩するのが何よりも好きだ。人の家のごはんってなんであんなに美味しそうな匂いがするのだろう。

この夕暮れ時の散歩がしたいから、私が住むのは高層ビルのない住宅街と決めている。住宅街にしか住みたくない理由は他にもあるのだけれど、これも理由のひとつだ。通りを歩いていると料理の香りが漂ってくるような距離感の街が落ち着く。ビルばかりのコンクリートジャングルは私には向かない。

少し話は変わるけれど、似たようなものでもうひとつ好きなのは、もっと暗くなってから通り過ぎる小さな飲食店。繁華街の中ではなく、これも住宅街の中にところどころ点在している小さめなレストランがいい。暗い中で明かりが輝いていて、窓からこっそり覗くと料理を楽しむ人々の姿が見える。笑顔で会話するカップルや、カウンターでグラスを傾ける人など、みんな何を思い、何を語り、何でお腹を満たしているのかなぁと考えながら勝手に幸せのお裾分けをもらうのが楽しい。見知らぬ人の人生の一部にちょっとだけ触れたような気がして何となく嬉しくなる。

こうやって見ると、私はときどき人間不信になるしかなりの人見知りだけど、それでもやっぱり人間が好きなんだろうなぁと思う。そういう自分も含めて人間って面白い。


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