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屋久杉の森と様々な出会い

初めて屋久島へ行った。やっと屋久島へ行けた、と言った方がいいだろうか。

数年前に一度、屋久島旅行を計画した。全部予約をしてあとは行くだけ、だったのに、残念ながら台風が直撃したので行く前に全部キャンセルした。そのときはきっとまだ行くタイミングではなかったのだと思う。それからずっと頭の片隅に屋久島はあり続けて、2ヶ月ほど前に突然、あ行こう、と思って予定を立てた。そして今回は無事にたどり着けた。

今回の旅のハイライトは山登り。屋久杉の森を通って山頂へと続く登山ルートの太忠岳に登った。そこで感じたこと、思ったことなどについて書こうと思う。詳しいルートなどの情報はここに記録してある。

初めての場所でしかも雨が多い島、ということでガイドさんを探して登山ツアーに申し込んだ。ガイド選びは直感。特に登山となると丸一日、おそらく8時間以上を一緒に過ごすことになるので、合わない人を選んでしまうとけっこうきつい。ホームページなどに載っている情報を色々と見比べて、最終的には直感でこの人がいい、と感じた人を選んだ。結果的には大正解だったわけだけど、やっぱりあまり頭で考え過ぎずに直感に頼るのが大事。

太忠岳はとても素敵な森と山だった。そして屋久杉は私の想像を超える、魔法のような生き物だった。樹齢1000年以上のスギが屋久杉。屋久島の森には1000年以上生き続けているスギの木が何本もある。1000年という時の流れに思いを馳せてみたけれど、人間である私には想像できないほど長い時間で、頭では理解できなかった。彼らの生きてきた時間を考えると、人間の一生なんて瞬きするうちに終わってしまう。その想像を絶する長い年月を生き続けて、今も目の前に存在し続ける屋久杉は私が知っている「スギ」とはまるで別の木だった。その木々の間を歩いて同じ空気を吸えることは奇跡のように美しいことだと強く感じた。

屋久杉の森はとても豊かで、静かで、ひたすら深く、神秘的だった。様々な植物や美しい苔が生い茂り、そのまま汲んで飲める綺麗な水が流れている。古くから現在に至るまで山岳信仰の島で、山や屋久杉は神聖で神様が宿っている。日本人は他の民族と比べて自然を敬う気持ちが強いと思うけれど、屋久島の森を体験するとまさに聖地というのはこういう場所のことを言うのだろうな、と思った。島の9割が森林で、中心部は1800メートル級の山々が連なる屋久島はまさに神秘の島だ。そんな森を歩けることが嬉しくて、楽しくて、私はずっと上機嫌だった。

かつてこの島の人々は屋久杉を年貢として収めていたそうだ。その後も林業が栄えて、森の中に集落を作ってさらにトロッコまでひいて伐採を行っていた。当時切り倒された屋久杉の切り株もいたるところに見られる。これらの切り株は新たな木や苔が生える土台となり、ここからまた森が再生していく。その様子をあちこちで目にすることができる。この森は人の歴史、そして人と森との関係までもを現代に語り続けているのだ。巨大な切り株が山のかなり奥深い場所にも見つかる。こんなに深いところまで来て木を切ってさらにそれを運び出していた昔の人々は驚異的だ。屋久島の自然は色々な意味で深く、どこまでも雄大で、懐も限りなく深いのだ。

ここで少し話題を変えて、今回なぜ私が登山ガイドを頼んだのかについて軽く触れたい。理由は大きくわけて2つある。
ひとつ目が安心、安全のためというPracticalな理由。ふたつ目が体験をより豊かなものにしたいというEmotionalな理由。

今回私が登った太忠岳も登山道は整備されているので、登ろうと思えばひとりでも問題なく登頂できたと思う。東京近郊の山はひとりで行くこともあるので私としてはひとり登山にも別に抵抗があるわけではない。でもやっぱりその山を熟知した人と行く方が圧倒的に安全だし安心だ。そのためのガイドさん、というわけだ。実際今回はガイドさんが私にとってちょうどいいペースでずっと歩いてくれて、かつ山岳ガイドとしてのスキルも非常に高い人だったので、私は余計な心配はせずについていくだけでよくて、ただ景色を楽しみ、苔や木々を見て喜び、森での貴重な時間を満喫できたので最高の体験だった。

私はひとりで歩くのも嫌いではない。でも感動は誰かと分かち合った方が何倍も大きくなると思っている。その役割をしてもらうために、自分と相性のよさそうなガイドさんを選んだ。私はわりと好奇心は旺盛なので、新しい場所へ行くとより深くその土地について知りたくなる。色々と疑問が浮かぶのでそれに対して答えを提供してくれる人がいるとより体験が深まり楽しさが増す。今回のガイドさんはとにかく幅広い知識を持ち合わせていたので、非常にありがたかった。私のあらゆるジャンルにまたがる雑多で気まぐれな質問に全て答えてくれた。植物のこと、動物のこと、山の成り立ち、昔の人が行っていた伐採について、世界遺産について、屋久島の観光について、思いつくままに色々と聞いて教えてもらった。

人との出会いは縁だと思う。今回は本当に良い縁に恵まれた。他人との関係を築くには信頼が重要だと私は思っている。特にある程度の危険が伴う環境で活動をする場合、信頼関係が存在することが大事になる。今回のガイドさんは私が全面的に信頼できる人だった。出会ってわりとすぐに、ああこの人は大丈夫と思えた。おそらくそれはむこうも私のことを信頼してくれている、と感じたからだと思う。こういうのは一方通行では成り立たないのだ。それを理解している素晴らしい人間性を持ち合わせた人と出会えてラッキーだった。ガイドと客、という関係から始まったけれど、途中からは親しい友人と歩いているような気分だった。

今回の旅で私はすっかり屋久島の虜になってしまった。島そのものの魅力が無限大なのはもちろんだけれど、それよりも素敵な出会いがたくさんあったことが私を強く惹きつけたのだと思う。
神聖な山の神様との出会い、神秘的な屋久杉たちとの出会い、素晴らしいガイドさんとの出会い、に加えて最高の天気に恵まれた運。様々な出会いがあったからこそ、今回の旅は思い出に残る美しいものになった。とっても可愛いヤクシマザルさんにもたくさん出会った。こんな美しい島が日本にあることがとても嬉しくて、必ずまた訪れようと思った短くも濃密で充実した旅だった。

Life is beautiful, and mother nature is full of love.

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