バーチャルワールド チャプター2 冒険の始まり 後編

チャプター2 冒険の始まり 後編

前回、バーチャルワールドで研究家のカーターさんと知り合いになりました。するとそこに堀崎さんが現れ、二人は口論を始めました。この二人、知り合い…?

カーター:「堀崎さん、もしかしてあなたこの人の上司ですか?」

堀崎:「んじゃなきゃ来ねぇよ。家の会社では成長できないし、やりたいこともできないからといって会社のビリ達を勧誘してるのか?」

カーター:「それは誤解です!有道さんとは5分前に会ったばかりです。意識を失っていたので声をかけただけですよ。」

堀崎:「ふん、そんなことだったとしても私の可愛い部下をお前には渡さないぞ。有道、あいつからは離れなさい!」

カーター:「そうは行かないよな、有道くん?僕の話を興味深そうに聞いていた君だ、こんな上司の不都合な命令、聞くはずないよね?」

堀崎:「カーター!!貴様有道に何を喋った!?」

カーター:「自己紹介しただけですけど。研究やってるって言ったら興味深そうに反応してました。それだけです!」

堀崎:「おいそれは本当かぁ…?なあ有道?」

有道 :「……。」

カーター:「本当でしょ?どうして黙るの?てか堀崎さん、あんたまさか私がこのアプリの研究チームにいるからってそんな酷い態度とるわけ?「元部下」に対してねぇっ?!」

堀崎:「…………。いい。それなら。カーター、俺と勝負しろ。このバトルでお前が勝てばお前は有道と関わってもいい。但しあの研究のことを口出ししない、という条件付きでだな。」

カーター:「フッ。ウザイ言い回しですね。あなたと戦うなんて…随分久々です。お望み通りに受けて立とう。ただ、あの研究を口出ししない、ていうのは理不尽すぎるので私が勝った場合、その条件も無しで。」

堀崎:「無駄口は好きなだけ叩きな。どうせお前は負ける。上司に勝る部下などいない。」

カーター:「そういってる癖に、今まで決着つけたことないですよね?」

堀崎:「決着はついてないけど8割は俺が優勢だったぞ。」

カーター:「その2割が起きたらどうすんだ?」

かつての部下と上司が戦う…?って何で?私をめぐって争わないでほしい。でも怒った堀崎さんは手をつけられないぐらい怖い。ただですら深刻な状況なのにカーターさんも平然と上司をからかってるし…。

二人が戦ってるのをみてわかるのですが、勝負とは格闘(リアルファイト)でした。相手を殴る、蹴る等の暴行をしたり、変な必殺技を放ったりして、先に相手の攻撃能力を100からゼロにしたら勝ち。

バトル開始早々、堀崎さんが手をグーにして、拳に白い光を輝かせながら、カーターさんに殴りかかりました。

堀崎 :「いくぞ!トゥルー・オブ・ムーン!!」

「トゥルーオブムーン」とは月のように白い光に囲まれたグーで相手に殴りかかる技。当たったら怪我しそう。しかし、カーターさんは「甘い!」といって躱し、堀崎さんの肩をキック。二人ともなにやってるんだろう。

堀崎 :「いたたたっ…」

カーター:「必殺技を放ってるときは高速攻撃の方が早いもんでね。」

堀崎 :「やるじゃないか…。なら今度はジャンプしながら…!」

カーター:「スライディングで回避してやる…!」

カーターさんは堀崎さんとは逆の方向にスライディング。攻撃は回避できたけど、堀崎さんがトゥルーオブムーンのパンチで地面を殴ったので…その勢いでアスファルトの破片が飛び出しカーターさんに襲いかかり…。カーターさんに当たり、そしてその時の埃が私にも襲いかかり…。「イタタっ!」とカーターさんは悲鳴を上げ、私は埃で咳き込みました。威力ヤバイ。

堀崎 :「これでお前もダメージを受けたぞ。」

カーター:「技を使えば勝てるとでも思ってるのか?今度はそんな瓦礫踏み台にしてやるからな。」

やばい。この二人のバトル、エスカレートしてしまってる。このままバトルが続けばいずれどちらかが殺される。二人の内どれかが殺人罪で逮捕される。そして僕の運命も彼らによって決められてしまう。ずっと黙ってたけどこれは嫌だ。何とかして、二人を止めないと…。いや、普通死ぬはずの攻撃食らってて二人とも平気なのはなぜ?てか私もなにか技出せる?私はそう思ったので。バーチャルワールドにて必殺技を放つ方法を調べようとしました。しかしスマホを持っていない以上、どうすれば…。

こっそり二人の戦いを抜け出し、他の人を探すことにしました。

ロータリーを抜け、しらかば通りの間の通りを進むと、黄色の肌の大学生が話しかけてきました。

ソフィア・ヌビン(以下ソフィア):すみません。この辺りで私の兄を見ましたか?

有道 :「え、お兄さんですか?お兄さんの特徴を伺ってもいいですか?」

彼女に質問すると、彼女は目を合わせる余裕もないぐらい早口で喋ったのです。

ソフィア:「私の兄は…身長が180cmぐらいで、肌が黒くてフリーのライターで…長時間仮想空間に入っちゃってることが多い人です。お兄ちゃん、今日なんか散歩とかいって自由が丘にいって3時間も連絡ないから、どうせ仮想空間をさまよってると思ったので探しに来ました」

有道:「身長が僕より高くて…肌が黒い!いま僕の上司とバトルしてる人かな?あの二人を止めたくて、必殺技の打ち方探してるんだけど…。」

ソフィア:「わああなたテレブラザーの人?昔お兄ちゃんはテレブラザー勤めてたけど、どういうわけか辞めてからテレブラザーの上司とバトルばっかしてるのよ。」

そういって彼女はノートパソコンを取り出し、カスタマイズアプリを起動しました。

ソフィア:「これであなたのアカウントに入って。マイメニューからカスタマイズを選んで。必殺技作れるから。アカウント作ってないなら新規アカウント作成からやって。使った後ログアウトさえすればいいから。」

有道 :「サンキューです!これで何とかする。」

ソフィアさんのPCから自分のアカウントを作って、必殺技の作成に進んだ。二人を止めたい。そのためには両手からビームを出せる技が必要だ。好きなカラーに応じた色が出るらしい。黄色の服が多いので、イナズマとかどうだろう。自分の必殺技を打てるかもしれないというドキドキを感じながらも、半分「本当に必殺技を打てるのか」「そもそもバーチャルワールド自体が現実に存在せず、幻覚が広がってるだけではないか」という微妙な感じもしました。

そこで、一度技を打てないか試そうとしたのだが…。

ソフィア:「ダメ!技の衝撃で建物とか地面とかが壊れちゃう!打った技は当たったものにダメージを与えるの!」

技を打つ素振りをした瞬間にソフィアが止めたので、幸いにも何も起きなかった。

有道 :「一発勝負かぁ…。自由が丘駅に来てから起きたこと、あり得ないことばかりで…。上司と君の兄さんを止めたいけど、技なんて打てるのかなぁ…。」

ソフィア :「二人にさえ当たれば、何も壊さないよ。…ていうか、今は上司とお兄ちゃんを止めるのが先なんだから、こんなことでくよくよしてる暇はないでしょ?!私も手伝うからさっ、やってみましょう!」

そういってソフィアは、手から蛍光色の緑の色をした、羽状複葉状の葉っぱを取り出し、両手に載せます。

ソフィア :「いい?この細い道を出たら、私があの広場にミントリーフをいっぱいに撒き散らす!その直後に二人めがけて技を決めちゃって!大丈夫、きっと決まる!」

そういってしらかば通りを抜けた先の銀行から、二人に向かって葉っぱをつけた手のひらを広げました。

その頃、駅前ロータリーの方では、私の未来をかけて堀崎さんとカーターさんが戦っていたのでした…。カーターさんはパンチやキックで応戦していました。

堀崎 :「いっつも思うが、なぜ必殺技を使わず格闘技で戦う?」

カーター:「ふんっ。必殺技はここぞというときにだすものですよ。あなたのように頻繁に使う真似はしないね。」

堀崎 :「じゃあそれなら、手と足を抑えてやる。」

そういって堀崎さんはカーターさんに近づき、手首をつかもうとすると…。

堀崎 :「な、何だ…?ミントの匂いがする?」

カーター:「私ではない。もしかすると…。」

2人が戦いを中断した、ヤバい、気づかれる前に決めないと…。

私は手からありったけの電気を流してくれという気持ちいっぱいで、叫んだのです。

有道 :「…お願い!イナズマを二人に当てて!」

すると手のひらから白い光線が堀崎さんとカーターさんめがけて流れてきました。

堀崎&カーター:「ぎゃあぁあああぁ!」

決まった!これで二人を止められた!私は無我夢中で二人の元に駆け寄り、叫びました。

有道 :「二人とも止めてください!カーターさんと関わるかどうかは私が決めます!自分の人生は自分でコントロールしたいんです!」

ソフィア :「一寸待った!あなたお兄ちゃんを止めるために手伝ってたんじゃないの?」

カーター:「あらソフィア。まだ仮想空間状にいるのが長いから怒って来ちゃったのか。」

有道 :「ごめんなさい。実はあの二人、僕がカーターさんと関わるべきかどうか、それを決めるためだけにこんなバトルしちゃってたんです。偉い迷惑かけました~。」

ソフィア :「自分の進路を誰かに決められるの、嫌だったのね。でも良かった。あの緊迫した状況で、二人を止めてまで自分の意思をしっかり言えたね。」

堀崎 :「またこれかい。妹さんが出てきたんじゃあ勝負はお預けだ。有道。カーターとはほどほどにしとくんだぞ?」

堀崎さんは私を心配そうな目で見つめ、画面のついたコントローラーの液晶画面をピンチアウトし、現実世界へと帰っていきました。

私は、自分の手から必殺技が出せたことを不思議がりつつ、二人を止めることができてホットしました。

チャプター3に続く


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