![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/118605764/rectangle_large_type_2_e8bb5e7ab216bb2f22b9cad359ef3386.jpeg?width=1200)
紅芋オトコの話
オタク君との出会い
私が短大生だった頃の話。
当時沖縄で活動しているバンドマンの友達たちとよくつるんでおり、飲みに行ったり友達のライブを見に行ったり、リア充女子大生を満喫していた。
友達の所属しているバンドのリハーサルを見れる機会があり、どんなジャンルの音楽をしているのか知らなかったのでライブハウスに見学へ向かった。
中に入ると物凄い爆音とともに友達が魂の叫びをシャウトしている。
シャウトしているその言葉が英語なのか日本語なのか全く分からない、ぬーがや状態。
(ぬーがやとは何だろう的な意味)
リハのお邪魔にならないよう、大人しく演奏を聴いているフリをしてバンドメンバー観察をしていた。
エモくて流行に敏感な男の子たちばかりだったがその中に一匹のオタク君が混ざっていることを前田は見逃さなかった。
メタル系の激しい音楽でみんなノリノリの中、控えめにベースを弾いてる彼が妙に目立っていた。
![](https://assets.st-note.com/img/1697008724953-ibenxuIGVg.png?width=1200)
本番のライブは見れなかったが、リハーサルを見て数日たったある日、SNS通じてあのオタク君から『TVで観てからファンです』とメッセージがきた。
メンバー内に私と繋がっている人がいるとは思わなかったこと、実物を見ることができるなんて…等
長々と書かれたそのメッセージを要約すると、僕も友達になりたいというものだった。
バンドメンバーの友達に連絡きたことを話すと驚いていたが、私の連絡先を教えて欲しいと友達自身もお願いされてどうしようかと悩んでいたらしい。
オタク君は同級生じゃなく実は先輩で、同じバンドの仲間ということもあり、頼まれごとを断るのは気まずいのであろう。
そんな話を聞いた私の方も勝手に気まずくなってしまい、結局オタク君に連絡先を教えることになった。
連絡先を教えたその後
連絡先を教えた途端、早速メール攻撃が始まった。
大学の話、音楽の話、将来の夢…
一方的な自分語りばかりなところが気になったが、拒絶するほどの内容でもなかったので当たり障りない程度に対応していた。
そんなある日、初デートに誘われたのであった。
メールでのやり取りで、恋愛関係なることは低いと分かってはいたが、2人きりで会ってみたらメールと印象が変わるかもしれないと勝手に期待してしまったのだ。
デート当日
約束した当日、自宅まで迎えに来てくれることになったが、なぜか前田の防衛レーダーが作動し、自宅から離れたところに迎えに来てもらった。
真夏真っ只中の季節だったのに車内に乗り込むとクーラーすら付けておらず、『ごめん、自分で窓開けてもらえる?』と言われ助手席横を見るとボタンがない。
なんとハンドルを手動で回して開けるタイプの窓だった………。
ハンドルを見てなんてこったパンナコッタとなっていたが、オトコの価値は車で決めることではない。
ちなみにデートコースは全くのノープランであることが発覚し、とりあえず飲み物でも買ってドライブしようということになった。
コンビニについて車から先に降りたオタク君を見て私はギョッとし、目をこすって二度見した。
なぜなら彼は濃いめの紫のTシャツに紫色のスキニーパンツ、全身紅芋のような姿であったからだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1697009222670-EtbEydhYsl.jpg)
飲み物を買いに行くその背中を見つめながら、ドライブだけでこの日を乗り越えようと私は決めた。
なんでなん…
あてもなく車を走らせ北谷へ差し掛かった頃、
突然オタク君が『ブルーシール行きたい』と言い出した。
こちらとしては、おいおいマジかよ…と思いながらも買ってすぐ車に乗れば何とか人の目を乗り越えられるかと思い向かうことに。
ブルーシールに到着し、ショーケースの中に色とりどりのアイス達が見える。
私は買って車内にすぐ戻ることしか考えていなかったが、オタク君は店内で食べたいらしい。
奢ってもらう身だから仕方まい。
私は席をとる担当、オタク君はアイスを買う担当で役割を分担し、ミントチョコを手に入れてくるようお願いをした。
携帯いじりながらしばらく待っていたら、
ミントチョコと紫色のアイスがテーブルの上に。
これって…と言葉失っていると
『ウベ味だよ!俺ウベ好きなんだよね〜』とペロペロしてた。
![](https://assets.st-note.com/img/1697010625592-gUjXBrbNkg.jpg?width=1200)
話を盛ってるとかではなく、あまりにも衝撃的なすぎて私はその後の記憶があまりない。
ウベ味に罪はないし、食べたことあるから美味しいことも知っている。
ただ、全身紅芋のようなオトコが数あるアイスの中からなんでウベ味を選ぶんだよ。
しかまち、かんぱち、なかのまちだろ。
(驚いた時これを言えたら君も立派なウチナーンチュ)
些細すぎることだけどその日で幻滅してしまい、二度とデートに行くことはなかった。
おわり