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OSK日本歌劇団・翼和希様主演『三銃士』感想


注意事項

 こちらは令和7年2月6日から9日まで上演された翼和希君主演の『三銃士』を観劇した感想になります。ただひたすら「ここが好きだ」「ここが最高だ」を書き連ねたオタクの嗚咽と叫びの列挙であり、知的なことは一切書かれてませんのでご了承ください。また、作品の時代背景や歴史など何もわからず好き勝手言っておりますので、もし頓珍漢なことを書いておりましたら鼻で笑った後にコソッと指摘していただけると嬉しいです。
 毎度のことながら出演者様の敬称については書きやすさを重視して普段心の中で呼ばせていただいている敬称を使用しておりますので、その点もご了承いただければ幸いです。
 

第一幕

第一景

 翼和希君演じるダルタニャンの表情の変遷が全編を通して素晴らしいと言う話をこれからずっとしていくんですけど、まず開幕出てきた翼君が能面なのが良いです。このダルタニャンは過去の記憶の靄を彷徨っている「思い出の中のダルタニャン」で、いわば霊体のようなものだと私は妄想しています。なので終始能面でどこか遠い視線なのがいいです。
 それがコロスたちがはけて行くと、教会で跪き懺悔する過去のダルタニャンに変わったことがはっきりと分かる。ここの演じ分けが本当に自然で、お芝居の導入として百点満点でした。さすが翼和希君。

 この場面で驚かされたのは天輝レオ様のお声。老人の声が出せる・・・だと・・・?2024年のたけふ公演『DREAM SCAPE』でもレオ様は多彩な歌い方をされており声の出し方も曲によって変えるというとんでもないテクニックを見せておられましたが、年老いた声も出せるなんて聞いてないよ。天輝レオ様の声の出し方って200種類あんねん。
 しかもダルタニャンの告白に思わず吹き出してしまったところからアラミス本来の声に変わっていく声色の移り変わりが実にお見事なんです。いきなりコロッと変わるんじゃなくて一つの台詞の中で変わっていく(「運命の恋か」の「うんめ」くらいまでが老人声で「のこいか」がアラミス声)ので、もう舌を巻いてしまう。翼君や壱弥君に対して私はいつも「どんな声帯してたらそんな声が出せるんだ」と思っていますが、レオ様もいよいよその域に突入してしまったのだろうか・・・アーメン。

 いやでもこの三銃士(四銃士)がね、めちゃくちゃバランス良いチームなのです。めちゃくちゃバランス良いチームだということがこの第一景にして分かってしまうというところが素晴らしいのです。純粋で真っすぐなダルタニャンに、ちょっとがさつだけど仲間思いで裏表の無いポルトスに、頭が良くて大人なんだけど年下とふざけるお茶目さも持ち合わせているアラミスと、その全員を俯瞰的に静かに包み込んでいるアトスでしょ。
・・・・オゥ(オタクの嗚咽)
 この関係性が開始数分で分かるの脚本の業でもあり、演者全員の演技のなせる業だと思うのです。

 そしてヒロイン・コンスタンスちゃんの登場。これはダルタニャンも惚れますわ。っていう説得力が凄い千咲えみちゃん演じるコンスタンス。彼女が舞台に登場した瞬間に私は確かに春風が吹いたのを感じました。この日の大阪は大寒波でしたが。
 アラミスとポルトスが男子高校生みたいなやり取りしてるの大好きです。ずっとやっててほしい。それを「やれやれ」って遠くから見てるけどそんな二人のやり取りが別に嫌いじゃないアトス君・・・三銃士、あまりにも完成されたチーム。

第二景

 あれほど立派に遊女役ができた柊湖春ちゃんなら王妃役もできるってワイは信じてました(何様目線か)。矜持のある女性を演じられる娘役様はプライスレスだなぁ。そして南星杜有君演じるバッキンガム公爵の好青年っぷりと言ったら。この公爵様は本国ではさぞやおモテになるでしょう。
 この同期二人によるラブシーンが・・・本当に若いながらよく頑張っていると思います(だから何様目線か)。だって二人ともまだ五年目ですよ(合ってますか?私はよく劇団員様の年数を間違える阿呆です)。男役十年と言われる世界でまだその半分ってことですよ。それは演技にも若さが出ますしラブシーンにも青さが出るのが当然だと思うのですが、私はこの青さが逆にバッキンガム公爵の無謀とも言える情熱に説得力を持たせてくれていると思いながら観ていました。
『The Tale of Genji』の光源氏と葵上を若手同士で組むと、たとえ技術面では拙くとも若夫婦の雰囲気が出て大変良いなと思うのと同じ気持ちでこの場面を見ております。

柊ちゃんアンヌ「言わないでっ!」
ワイ「(おかわわわわ)」

柊ちゃんアンヌ様のこの王妃時代の、『一生懸命に王妃の仮面を被ってるのに時々少女が顔を出しちゃう感じ』がワイのハートにドストライクでした。

第三景

 あ~・・・愛が歪んだ男を演じさせたら日本一の呼び声が高い華月奏お兄さま演じるリシュリュー枢機卿の登場です。椅子に腰かけてるだけなのに歪んだ男なのが一目で分かるさすがの佇まい。いよっ!嫌いになれない悪役!!
 この奏叶はる君演じるルイ十三世の、恵まれてて世間知らずで枢機卿の良いように扱われてしまう裏切者の王妃の今後を気にかけるお人好し感が出てるのほんま最高でしたね。
 ミ・・・ミレディ様~~~~!!あ~~~!!お麗しい!!流し目が美しい!!男を惑わす天才!!リシュリュー枢機卿と二人で一生悪だくみしててほしい!!この二人が悪い話しで盛り上がってるの見てるだけでワイの口元はニヤニヤしてしまう。
 それにしても羽那舞ちゃん様の演技力の素晴らしさ。胆力の素晴らしさ。「私、失敗しないので」この使い古された台詞で客席の笑いを取れるのは大女優ですよ。こら~アトスも騙されますわ。アトスは何も悪くない(それは本当にそう)。

第四景

 銃士隊の訓練シーンなんて嫌いなオタクはおらん。サイリウムとかウチワ振りたい。ワイは「アラミス様」「斬って」ってウチワに書こう。
 この銃士隊の前半部分のおちゃらけ具合と、コンスタンスが駆けこんできて「これは緊急事態だ」って察してからのテンションの落差が格好良すぎて風邪ひきそう。

 アトス「枢機卿にばれたか」
 ワイ「(アッスキ)」
 ポルトス「ああ、たぶん」
 ワイ「(オッフ)」
 アラミス「内通者がいるねぇ」
 ワイ「(絶命)」

三銃士がいかにできる男たちかっていうのをこの短い台詞で分からせてくるの最高。

第五景

 ここまでずっと書かずにきたんですけど、桜乃ひとみちゃん演じるロザンヌちゃんマジ悪女で好きです。ミレディも悪女なんですが、ミレディってまさにドラマやお芝居の中に登場するタイプのいわば現実感が無いような大悪女なのに対して、ロザンヌちゃんってなんなら会社に居そうな(どんな会社や)派閥抗争を裏で糸引いてそうな(どんな会社や)そんな妙に親近感の湧くタイプの悪女なんですよね。OL経験が無いのにこの演技ができる桜乃ひとみちゃん・・・恐ろしい子・・・!

 ロザンヌちゃん「私もそう思います。枢機卿に言いつけるなんでひどい」
 ワイ「(オマエー!オマエオマエオマエー!!)」

 ここのロザンヌちゃんが最後ライトが絞られていくのに合わせて悪い微笑みを浮かべるのが芸術点高すぎて痺れました。

 いや~つばえみ・・・じゃなかったダルコン(?)
 ここまでものすごく純朴で正義感のある少年っぽい面を見せてきたダルタニャンが、急に大人の男を見せて攻めて来るからワイは危うく椅子から転がり落ちるところだった。

 ダルタニャン「だめ・・・・?」
 コンスタンス+会場中の人間「だめ・・・じゃ・・・ない」

 ダルタニャンってコンスタンスに出会って真実の恋を知らなかったらアラミスになってたと思うんですよ(謎持論)。フランス中の女からキャーキャー言われて、でも本人は「俺はまだ真実の恋を知らない」とか寂し気に笑う危ない男(アラミス)に育ってた未来もあったと思うんです。そんな未来を回避できてよかった。
 そしてこの後のコンスタンスちゃん可愛すぎか~~~!!

 コンスタンスちゃん「これが恋なのね!」
 ワイ「(ニチャア)」

 くるくる回って浮いちゃったスカートを押さえる仕草が可愛すぎたのでDVD届いたらここだけ延々リピートします。

第六景

 戦う男って・・・いいよね。最年少ダルタニャンを行かせるために身を挺して戦う年長者三銃士って・・・いいよね。
 ここの台詞でダルタニャンが「あとすー」って呼ぶところが完全に大型犬(子犬時代)という感じがして最高でした。前場面でコンスタンスにあれだけ男を見せつけておきながら三銃士の中に入るとまだまだ最年少の立ち位置で甘えた感じになるのが(しかし腕はピカイチ)最高過ぎる翼和希君ダルタニャン。
 この場面でお気に入りなのは「敵は四十か・・・じゃあ一人十人ずつな」って言う脳筋アラミス様です。誰よりも優美な容姿でフランスきっての伊達男なのに戦いになると柄が悪くなるし力で正面突破しようとするの最高のギャップすぎました。

第七景

 この場面すごい好きでぇ・・・(全場面に言う)。
何が好きってやっぱりダルタニャンとバッキンガム公爵の友情ですよね。二人とも人妻に道ならぬ恋をしている男同士。そんなこと敢えて話したりはしないけれど、お互いに通じるものがあるのが雰囲気で伝わってくる素晴らし演技力。
 『三銃士』ってダルタニャンと三銃士の友情物語なわけですけど、公爵とダルタニャンの友情もまたこの話の大事な軸の一つだと思うのです。
この場面でね・・・公爵から友情を示された時からダルタニャンの顔がまた一つ大人になるんですよ。ここの翼和希君の表情の移り変わりが絶品だと思うのです。何度でも言いますがこの『三銃士』は翼君ダルタニャンの表情(顔つき)の変遷が本当に素晴らしい。骨格は同じ人間なのにちゃんと少年から大人へと顔つきが変わっていく。この場面はまさにそのうちの一つ。

第八景

 えーん、悪役コンビ好き。ずっと悪い話ししててほしい。

 枢機卿「君たちを呼んだ覚えはないよん」
 ワイ「(ヨン…?)」

王妃様が首飾りして出てきた後のしょぼくれてる枢機卿可愛すぎる。これは愛され系悪役ですわ。

第九景

 すごいんですよこのトップコンビは。ラブロマンス→コメディ→ラブロマンスを一場面でコロコロ変えるんだから。安定の息ぴったりなラブシーンはもはや見てて安心感すらある。はよ結婚しろ。

第十景

 このコンスタンスちゃん誘拐シーンめちゃくちゃ固唾を飲んで見守ってしまう。陽向だいち君も千咲えみちゃんも渾身の緊迫感ある演技が素晴らしい。いけ!えみお!そこだ蹴れ!噛みつけ!って応援しながら観てる。
 コンスタンスちゃん誘拐された後のダルタニャンの慟哭ほんま胸に刺さります。「へぼ侍」の時もそうでしたが翼和希君は人の心を震わせる演技ができるお方です。

第一幕の終わりに主題歌を皆で歌うやつ好き~。たぶん全人類好きなはず。三銃士は主題歌がまた良いんですよね。カラオケに入れてほしい。

第二幕

第一景

 第二幕は開幕悪役コンビだ~!嬉しい!ミレディちゃんって台詞の後ろに全部「♡」が付いてる喋り方するところが好き。ミレディちゃんに「死んで♡」って言われたいだけのモブ人生だった。

第二景

 この場面は今回の再演に際してアラミスの出番が追加されてます。見どころはなんといってもダルコンカップルとアラマリカップルの対比。ダルタニャンとコンスタンスのラブシーンを見た後だとここのアラミスがいかに「運命の恋」をしていないかが分かる。それがまた良いのだ・・・!
 それにしてもマリーちゃん良い女だ。アラミスが自分に本気じゃないことも許しつつ彼の真意をきちんと汲むことができる頭のいい優しい女の子だ。それをこの数分の芝居で分からせてくる桜乃ひとみちゃん・・・ロザンヌちゃんとの演じ分けも含めて恐ろしい子・・・!

第三景

 ここの羽那舞ちゃんが、客席を歩いている姿だけでミレディの暗躍する様を表現しているの素晴らしすぎる。悪役の貫禄がありすぎる。一生その背中に付いて行きたい。アッオニモツオモチシマスネ。

第四景

 羽那舞ちゃんミレディの、主演女優さながら演技がピカイチ光る場面。ワイの胸中はコンスタンスちゃんの心配をしながらもミレディちゃんを応援してしまう。ミレディちゃんを見ていると、完全な悪女と分かっているのに憎み切れない不思議な魅力がある。つまり私もアトスだったということか(?)
 そしてコンスタンスちゃんが毒殺されてしまうシーン。コンスタンスの倒れる直前の台詞が「おともだち・・・」なの、ミレディちゃん罪深すぎて吐くかもしれん。ここのコンスタンスの苦しみ方が迫真過ぎて見てたワイの肩がビクって跳ねちゃった。
それにしてもアラミスもポルトスも「誰にやられた・・・?!」ってなって辺りを闇雲に探してる中で、ただ一人ミレディちゃんが去って行った方向を凝視して「ミレディ!!」って叫ぶアトスはさすがとしか。今日もミレディセンサーが働いてる。
 コンスタンスちゃんが絶命した時のダルタニャンの慟哭が、第一幕でコンスタンスちゃんが誘拐された時の慟哭とはまったく別ものなのが翼君の演じ分けの凄いところ。母を亡くして縋る子どものような泣き方が胸にくる。

第五景

 この場面は何を置いても羽那舞ちゃんだなぁ。悪役の散り際としてお見事すぎて拍手喝采です。ミレディって人としては汚いんですが悪女としては完ぺきすぎる。最後の最後まで己の武器を使って生き延びることを諦めないミレディの泥臭さが私は好きだ。色仕掛けとお金、それだけが彼女の生きる手段で、それを拒絶されたら手も足も出ないただの女になって、悪女のメッキが剝がれてから死ぬのが最高に良かった。

 このミレディ処刑で三銃士が銃士隊を抜ける流れが辛すぎる。ミレディちゃんって悪女だし処刑されても仕方がないことをやり過ぎているんですが、そんな彼女を処刑したことが三銃士の解散の理由になるのが凄いし、そこにちゃんと説得力があるのがまた凄い。
 最初に銃士隊を抜けるって言い出すのがアラミスなんですが、彼は聖職者に憧れていて、普段はふざけたりもするんですが十字を切る時は真面目だったりコンスタンスちゃんが絶命する時には十字架を痛いほど握りしめていたり、神に対する思いは真剣であるのが見て取れます。そんな彼が正規の手続きを取らず神の名を使いミレディを処刑したことが遅効性の毒のように徐々に心を蝕んでいったのではないかと想像します。
 次に隊を抜けるのがポルトスなんですが、ポルトスの「女に結婚を迫られてる」はあくまで建前というか、彼は本当に銃士隊に残る気持ちがあるなら結婚話も断ると思うのです。でも彼が好きだった銃士隊ってアトスやダルタニャンをからかってアラミスとふざけ合って皆で笑い合うようなそんなかつての銃士隊で、でもコンスタンスが死んでミレディを殺した後の銃士隊はとてもじゃないけど前の空気には戻れなかったのでしょう(戦争で仲間も大勢失ったかもしれない)。
 そして最後がアトスなんですよね。アトスは辛いですよね。自分がミレディをもっと早く始末していれば、ダルタニャンが最愛の人を失うこともなく、戦争も起きなかったかもしれず、アラミスとポルトスが隊を抜けることも無かったんじゃないかと思うと。アトスはマジで一ミリも何も悪くないんですが、それを全部自分の責任と背負い込んでしまうところがアトスという男ではないでしょうか。だから彼もまた隊を抜けた。
 この一連の三銃士解散の流れが哀しくて辛いのにストーリーとして芸術点高くて、解散してほしくはないんですがこの流れ大好きです。

第六景

 この場面すごい好きでぇ・・・(二回目)。
南星杜有君凄いですよね。第一幕であんな情熱的好青年を演じておきながら、マザラン役やるんですから。後にダルタニャンも言ってますが、リシュリュー枢機卿と同じ枢機卿という役どころなのにマザランはリシュリューより小物感があるキャラで、それをしっかり出せている南星君の演技力に唸ります。
 それにしてもこの場面でマザランを虐める(?)運命のコロスたちが皆揃いも揃って楽しそうなのが私は大好きです。華様生き生きしてるな~。
 『三銃士』は全編通して皆実に楽しそうに演じているのが印象的でした。ダルタニャンとコンスタンスのラブシーンもそうだし、銃士隊の男子高校生みたいなふざけるシーンもそうだし、そしてこの場面もまた楽しそうで。お稽古場の雰囲気もそうとう良いのだろうな~と、勝手な妄想をしてみたり。

 そして十年後ダルタニャンの登場。あ~見てくださいよこのすっかりすれた大人の男になった顔を。この翼和希君の顔の変遷が、第一幕の幕開けから徐々にこの顔になっていく移り変わりが本当に素晴らしいのです。同じ顔なのに・・・!同じ顔なのに顔つきの違いだけで年数を見せる・・・!
 そして十年の歳月を感じさせる方がもうお一人いますね。こ、皇太后さま・・・!
え~・・・柊湖春ちゃん演技うますぎん・・・?これはもう完全に未亡人の佇まい。若さが取れてスッキリとした顔つきに疲労感が滲んで見えるの素晴らしいな。
 そんでもってマザランにはすごい適当な態度なのに皇太后さまにはしっかり礼を尽くすダルタニャンはマジ騎士道。
「みんなで浴びるほどワインを飲んでその後は・・・ポーカーだな」の言い方が本当に好きですね。ダルタニャンの頭の中には三銃士の姿が今も鮮明に思い浮かんでいて、再会したらきっとこんな風に振る舞うだろうという想像が簡単にできてしまうの涙・・・。

第七景

 あぁああぁっ・・・・!!
 ・・・・・・・・アトスとアラミスが・・・・同じ髪型してる・・・・?
 長髪ハーフアップとでも言えばいいのか・・・?(髪型の知識皆無過ぎて呼び方がわからん)
 でもそう考えると十年前からすでに同じ髪型してるからこの二人ってこの十年以上ずっと同じ髪型してたってこと・・・?(そうか・・・?)
この二人が十年後も一緒に動いてるって意外かもしれないけど全然意外じゃないんですよ。っていう話はあとで天輝レオ様の項目で語りますね。

 私はこのシーンで大事なのはダルタニャン以外の三銃士が十年前とさして変わってないところだと思っています(見た目の変化はあれども)。
この『三銃士』ってタイトルこそ三銃士ですけど主役はもちろんダルタニャンで、ダルタニャンという男の成長物語なんですよ。三銃士が十年前と変わらないことで、逆にダルタニャンがこの十年でいかに変化したかが際立ちます。だって十年前に銃士隊として戦っていた時のダルタニャンとこの場面のダルタニャンはまったく別人みたいだもの。十年前のダルタニャンは、彼も自分で言っていたように正義もあったけれどコンスタンスへの愛で行動していた。そして今の彼が背負っているものは国家なんですよね。十年前にアトスが背負っていたものだ。
 でもそんなダルタニャンが剣を自ら捨てた瞬間に、十年前と変わらないダルタニャンに戻る演技が本当に素晴らしい。この時彼は銃士隊隊長の仮面も脱ぎ捨てたのだということが分かります。
 ここでアトスが「神に誓おう」って言ってくれたの、たぶんアラミスへの凄い救いになったんじゃないかな。アラミスは神に背く行為をしたことに誰よりも傷ついていたから(という私の妄想)。
 最後の最後にコンスタンスちゃん出てきてダルタニャンの永遠の青春としてそこに佇んでる姿が神々しすぎてここ一番涙腺を持って行かれました。

第八景

 は、華様~!!フィナーレの開幕華月奏お兄さまなの嬉しすぎる・・・!
そして柊湖春ちゃんが出てきて・・・お芝居では決して報われなかったリシュリュー枢機卿だけどここでようやくアンヌとデュエットダンスできるのかい?!と思ったらぜんぜんそんなことはなくて笑った。一生片思いの男、それがリシュリュー枢機卿(解釈一致助かる)。
 今回のフィナーレが役のまま黒燕尾っていうのがもう・・・長髪男役様大好き侍の異名を持つ私の心臓にクリティカルヒットでしたありがとうございます。これだけのために9千円を払ったっていい。

出演者様ごとの感想

ここからは出演者様それぞれに対する感想になります。「出演者全員分感想書くの大変だぞ~」と思ったけど出演者様全員で十二人しかいない・・・だと・・・?どう考えても途中で誰か分裂してたよな。

翼和希君

 翼和希君についてはここまで順を追って書いてきたとおりなんですが、ダルタニャンの大人への変遷が本当に見事でした。場面の切り替わりとかじゃないんですよ。お芝居の中でちゃんと何かのきっかけがあって(三銃士が身を挺して戦ってくれたり、バッキンガム公爵からの友情だったり、コンスタンスちゃんの誘拐だったり)大人への階段を少しずつ踏んでいく。その過程がきちんと演技に現れていて素晴らしかった。そして抜群のセンター力。出て来るだけで説得力のある存在感。文句なしの主演でした。

千咲えみちゃん

 はまり役ってこういうこと・・・?って思うほどコンスタンスそのものみたいなえみちゃん。出てきた瞬間に春風を感じたこと、一生忘れません。最後の最後までダルタニャンの青春であり続けたコンスタンスを見事に演じきってくれました。翼和希君とのラブシーンで会場中のお客さんのハートを射止めたことでしょう、可愛すぎた。最高のヒロインでした。

華月奏様

 いや~華月奏お兄さま無双。誰が一番無双してたかって聞かれたら三銃士よりもダルタニャンよりも華月奏お兄さまだった。出ずっぱり動きっぱなし休んでる暇なし(たぶん皆そうだと思うけれど)。しかもそれがまったく息切れなく実に堂々と楽しそうなのがさすがでした。
 ミレディちゃんもそうなんですけど悪役なのに嫌いになれないというキャラクターの作り上げが素晴らしい。「枢機卿はクソだが殺したりはしない」って台詞を聞いて「確かに枢機卿はクソだけどそこまでのクソじゃないよな」って観客(ワイ)が思えるのは華月奏お兄さまの説得力ある演技あってこそです。
 そして枢機卿として引退(?)されてからはもう踊る踊る踊る。無双しすぎ。そんなお兄さまが大好きです。

 

登堂結斗君

 登堂君・・・!立派になって・・・!(入団当時からずっと立派だが)
なんだかこれまで良い子というか良い人のイメージが私の中で強かった登堂君。アトスももちろんめちゃくちゃ良い人なんですが、良い人だけで終わらないのがアトスの深いところですよね。その深みを出せる大人の男アトスをだったと思います。天輝レオ様との同期コンビのアトアラ最高でしたね。三銃士の長男役が見事にはまっていたと思います。羽那舞ちゃんミレディのヒリヒリする男女の駆け引き最高。

天輝レオ様

 すみませんね、推しなんですよ(ご存知のとおり)。ちょっと長めに語りますよ(そのための目次機能だ、読み飛ばしてくれ)。
 ポスター見てビジュアル発表された時から好きでした。そう・・・!そうなの・・・!アラミスってこうなんだよね・・・・!っていう説得力。恋の男・アラミスそのままみたいなビジュアルにレオ様の役作りへの本気をポスター時点で感じました。
 そして実際に演技を見て・・・いや深い。役の解釈が深い深い深い。アラミスって三銃士の中でめちゃくちゃ大事な役どころで。冷静で俯瞰的なアトスと、猪突猛進タイプのポルトスの間を取り持つ存在なんですよね。だから実際にアラミスは劇中でも時にアトスの意図を察して動きながら、時にポルトスと一緒にダルタニャンをからかってふざけたりもする。三銃士の潤滑油みたいな役割を自然にこなしてるんです。それがレオ様の演技にちゃんと乗ってるところが素晴らしい。それゆえ十年後に現れた時も彼はポルトス側ではなくアトス側にいるんです。普段はポルトスとふざけ合っていた彼だけど、アトスの想いに寄り添う姿勢も(台詞はなくとも)随所で見せていたからこそ、ここで二人一緒に居るのがめちゃくちゃ説得力あるんです。
 そして、普段は色男で優美な振舞なのにいざ戦闘となるとめちゃくちゃ男らしいんですが、これはまさに原作のアラミスの忠実な再現ですよね。アラミスってそういうキャラなんですよ。ポルトスの方が猪突猛進で突っ込んでいきそうなタイプに見えて彼は「いざとなったら手を挙げて降参する」って言うんですよ。かたやアラミスは「四十人いるなら一人十人な」って言っちゃうのほんまアラミスなんですよ。戦闘狂伊達男エロ神父って属性盛りすぎなんですが、それが原作のアラミスで、天輝レオ様はそんな属性モリモリの難しいキャラクターであるアラミスを見事に演じておられて私は感涙しました。
 そしてレオ様アラミスの素晴らしいところが、小さな所作にも手を抜かないところです。アラミスの髪って動きによってよく顔にかかっちゃったりするんですけど、それを払いのける時の動作とか、マントが腕に絡んだときの外す動作とか、舞台袖にはけていく時の身の翻し方マントの扱い方歩き方背中のそらし方・・・もうずっと全部アラミスなんですよ。優雅で美しいんです。でもポルトスとふざけ合ってる時には素が出ちゃって高校生みたいになっちゃうアラミス。もうどの場面のどのアラミスを切り取っても作りこまれていて芸術品です。レオ様の役作りにかける職人魂が光るんです。プロ根性・・・そんなあなたが好きなんです。今回も無事に心臓撃ち抜かれて死亡しました。ありがとうございます。
 そしてレオ様と言ったら身体能力の高さなんですけど、三銃士の戦闘シーンとか訓練シーンとかフィナーレのダンスシーンを見てください。止まるべきところでピタッと止まり、回る時には高速回転しながらも軸はブレずまたピタッと止まる。一つ一つの動作がビシバシ決まる。これが天輝レオだ・・・!芸事未経験からここまで来たの本当に血の道のりすぎて私は(以下略)

羽那舞ちゃん

 羽那舞ちゃん・・・!好きだ・・・!見る前から彼女のミレディは最高だって分かってましたけどやっぱり最高だった。だってもう良い女すぎる。ファムファタルですよ。こらアトスも騙されますわ(n回目)。心底悪い女なのに最後の最後まで憎めないというミレディを本当に素晴らしく演じてくださって、彼女を見つめる私の胸中はアトスと同じだったと思います。嫌いなのに・・・嫌いになれない・・・!!
 彼女が憎いのに憎めない悪女をどれだけ演り切ってくれるかで、アトスの深みもまた変わってきますので、本当に本当に大事な役どころだったと思います。お見事でした。

京我りく君

 京我くーん!!え・・・すご・・・すごいポルトス・・・。
 大阪ラプソディ観た時から彼の演技力の高さはわかってたんですけどね。改めて唸らされたと言いますか。あんなポルトスは京我君にしかできないでしょう。思い切りの良さというか、演じるとなればとことんまで役を突き詰めるところが京我君の男前さで、それがポルトスというキャラと見事に合致して最高の化学反応が起きていたと思います。
 私個人の感想として、この京我君ポルトスは第一幕では女性経験ないだろうな・・・と思っております。これって凄いことで、京我君ってどちらかと言わなくても色気の男役様で女性経験有りそうか無さそうかで言ったら断然「有る」に分類される男役様なんですけど、そんな京我君が女性経験無さそうなポルトスを見事に演じてるんですよ。コンスタンスちゃんに手を握られた後の反応とか、中学生男子くらいのおちゃらけ具合が実に演技力の高さを感じさせてくれました。笑わせるべきところで客席を笑わせる腕の持ち主でもありましたね。翼和希君ダルタニャンとの相性も抜群でした。

柊湖春ちゃん

 若手劇団員様は今回もれなく二役以上任されているのですが、そんな中で柊湖春ちゃんだけ(コロスを抜きにして)一役なのは、彼女の演技力が素晴らしすぎるゆえ任された大役でしょうか。そう思えてしまうほどに素晴らしいアンヌ役でした。アンヌの難しいところは、まさに主役のダルタニャンと同じなんですが、十年の歳月を演じないといけないところです。もう完全に別人で二役演るほうがたぶんまだ演技のハードルは低いような気がします。そこを、王妃役という若手なのに貫禄が必要な役を任されて、さらに最初は新婚で想う相手は別にいて、その相手が暗殺されてその後には夫とも死別して皇太后になるという変化を出さないといけないの、相当難しかったと思います。彼女が見事にそれをやってのけてくれたのはここまで書いてきたとおりです。

南星杜有君

 凄い男だよ、南星君は。バッキンガム公爵とマザランの演じ分けの素晴らしさはすでに述べたところですが、やはり南星君といえばなんと言ってもその歌唱力の高さ。今回も変わらず健在でした。
 翼和希君の隣に立って主題歌をあの歌唱力で歌える若手なんてそうそうおらん。「へぼ侍」の時からそうですが南星君は大舞台とか大役に物おじせず冷静にその役どころに向き合える性格が本当に素晴らしいです。

奏叶はる君

 歌が上手いのは知ってたけど演技も素晴らしいっておばちゃん知らなかったよ。ルイ十三世ってめちゃくちゃ難しい役じゃないですか。出番としては少ないのに、お人好しで騙されやすいけどちゃんと考えるところは考えてるというキャラクターをその少ない出番の中で示さないといけないので。ですが奏叶はる君は台詞回しの一つ一つを本当に丁寧に表現されていて、あの少ない登場シーンだけでもルイ十三世を強く印象付けてくれたと思います。お見事すぎた。
 しかもその後の斬首役人ですよ。南星君の二役も驚くけど、奏叶はる君の二役もギャップで風邪が引ける。OSKは若手を信頼しすぎているけど若手もまた劇団からの信頼に応え過ぎだと思う。素晴らしい。

桜乃ひとみちゃん

 パーフェクトっ!!本当にパーフェクト娘役様です。ロザンヌとマリーって同じ「侍女役」で、顔が同じなのに(当たり前体操)まったく別人にならないといけないのはさぞや大変だったのではないでしょうか。しかしそんなことは微塵も感じさせずに堂々たる演技に私の心の中の月影先生が何度もスタンディングオベーションしていました。

陽向だいち君

 君、あれだね・・・踊れる男役様だね。最年少ゆえにコロス役が多かった陽向君ですが、その分踊る姿を堪能させていただきました。そして彼は踊れる男役様です。しかし演技の方でも、あのえみお・・・じゃなかったコンスタンスちゃんを相手に迫真の誘拐劇を繰り広げてくれたので、彼は演技もできる男役様に違いない(期待の眼差し)。今後ますます目が離せない劇団員様の一人になりました。

まとめ

 感想まとめになります。
 よ・・・・
 良かった・・・・。
 もうこれに尽きるかと。再演ってやっぱり身構えてしまうというか、どうしても初演のイメージが強すぎてそれを一度頭から消して見るなんて器用な芸当は私にはできないし、脚本なども当然初演メンバーに当てて書かれたものだと思うので、いくら加筆修正が入ると言っても観るまでは不安の方が大きかったです。
 ですがこの『三銃士 La second 』の出演者様たちは皆さま全員役を自分のものにされていて、それは決して初演をなぞるようなものではなくて、もう一度最初から作り直すぐらいの役作りを若手劇団員様に至るまでされていて、それゆえ再演だということを忘れさせてくれるほどの「同じなのに別物」という仕上がりになっていました。
 大阪ではたった4日の公演期間だったことが実に惜しまれると思います。なんならレゼルの次はこの『三銃士』を引っさげて全国行脚の旅に出ていただきたいと願うほどでした。
 トップスターとして座長としてこの『三銃士』をここまでの完成度に導いた翼和希君の手腕に改めて惚れ直しました。きっと翼君を傍で支え続けた千咲えみちゃんの力も大きいのでしょう。OSKの未来は明るい・・・そんな希望を抱かせてくれる素晴らしき作品でした。
 劇団員様及び演出・脚本・振付のはやみ甲先生(もしかして先生こそ誰よりも無双してたのでは)、並びに劇団スタッフ及び関係者の皆さまに感謝を述べて、このnoteを閉じたいと思います。本当に心から素晴らしき作品をありがとうございました。博品館でのより一層のご活躍を願っております。

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