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【奈良県合唱連盟】合唱指揮クリニック 2025年2月16日

 桃栗3年柿8年というが、合唱指揮者の上西一郎先生はJ.S.バッハ「ミサ曲ロ短調」の演奏会のために合唱団クール・シェンヌと5年の歳月を費やした。無論5年間そればっかり歌っている訳ではない。正直クール・シェンヌならば、リハ・リハ・ゲネ・本番の3日間で演奏会に持っていける。しかし、まずはモテット、カンタータ等の作品に取り組み、バッハの音楽の神髄に迫るべく合唱団と共に学びを積み重ねて来られた。その集大成となる演奏会「ミサ曲ロ短調」を昨年拝聴した。管弦楽はa=415の古楽器アンサンブルであった。

そんな上西先生の講習会があるというので奈良まで出掛けた。
 一日のうち基礎編・応用編と分けられており、合唱指揮歴が全くない私は当初基礎編のみの受講を希望していたが、数日前に先生より「(空きがあるので)応用編も受講してみては」ということで、えっ!と声をあげる間もなくその時点で4曲をパナムジカに注文しギリギリに楽譜が届き、慌てて譜読みをした。

曲は
①パレストリーナ「Dies sanctificatus」
②ブルックナー「Das edle Herz」
③ラインベルガー「Prope est Dominus」
④信長貴富「こころようたえ」
の4曲。

 逐語訳、宗教曲はどの場面で歌われるテキストか、それぞれの声部を歌う、形式、和声・対位法、転調、終止の種類、言葉のアクセント、ディナーミク、フレージング、ブレス、作曲家・詩人について…などとても時間がなく、結局行き掛けに幼児用のミニキーボードを購入し、宿でも準備に追われた。

 ドイツロマン派の曲にはバロックでお馴染みの7676進行やフリギア終止も発見できてなかなかに楽しい。指揮法とは関係ないですが、パレストリーナはヘクサコルドで読むと、全パートが固いミで終止する箇所が出てきてまた驚き。

 モデル合唱団はやはりクール・シェンヌ、私には「豚に真珠」であまりにも勿体ないが、振る番でない時は一緒に歌える喜びも。関西屈指の合唱は半端なかった。
 指揮歴が長い受講者には最初の子音、または最後の子音を指揮でコントロールするほどに細かいレッスンがされた。もちろん音楽的内容にも迫った。指導は「言語化」され感覚的な指導は一切ない。
 同時に合唱側やピアニストから指揮者の見方も変わる(シビアになる)訳で、上西先生やいつか聴講した安積道也先生のように手を構えると合唱団が水を打ったように指揮者に集中し「私の指揮を見て!」と叫ばなくとも合唱団が最後まで指揮の手の情報に惹きつけられる、些細な動きもすべて理にかなって必要な情報を伝えてくれて、指揮法の熟知が深くてため息が出るばかり。「ぜひこれを機に指揮の勉強を始めてみてください」と先生。私は合唱指揮者の扉を開いて爪先をちょんとつけた程度です。指揮を「ちゃんと振れる」ようになるにはどれだけの長い道のりか、と思う。

指揮講座の様子
ヘクサコルドで読むと全パートが、固い「mi」で終止した。

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