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五音音階(ペンタトニック)と昭和歌謡曲

「ド・レ・ミ・ソ・ラ」
この音階を聴くと「日本っぽい旋律」とか「演歌」を思い浮かべる方も多いでしょう。
実はこの音階は欧米にもある音階です。これによって作られた曲をいくつか挙げましょう。
卒業式の定番曲【蛍の光】。この原曲はスコットランド民謡の【Auld Lang Syne(久しき昔)】

蛍の光

【アメージング・グレイス】もスコットランドやアイルランド地方の民謡から来ている旋律だといわれています。

アメイジンググレイス

アメリカにも。【テネシー・ワルツ】はアメリカ発祥のカントリー・ミュージックを基にP.W.キングが作曲したもの。このカントリーというジャンルも〈ド・レ・ミ・ソ・ラ〉の曲が多いです。(例【カントリー・ロード】【500マイル】など)

テネシーワルツ

【テネシー・ワルツ】は、日本でも1952年に江利チエミが歌ってヒットしましたね。
それとは反対の「逆輸入」という形で、日本の曲がアメリアに渡り全米ヒットチャート1位となったのが【SUKIYAKI】。ご存じ、坂本九が歌った【上を向いて歩こう】です。これも五音音階。ヨーロッパにも紹介され広く知られました。

 ところで、以前に合唱団で【木綿のハンカチーフ】に取り組んだことがあったのですが、団員に浪曲を嗜んでいる方がおり、その方が出だしを歌うとどうしても「恋人よォォ~」の部分に”こぶし”が入ってしまうのです。「僕はァァ帰らない」のァァの部分も同様に。
 最初は、浪曲を歌う時のクセが出てしまうのかなと思っていたのですが、どうやらこの音階のせいではないか、と今では考えています。浪曲も「五音音階」の曲ですから。【木綿のハンカチーフ】も出だしのAメロは〈ド・レ・ミ・ソ・ラ〉でできていますよね。

他にも〈ド・レ・ミ・ソ・ラ〉の音階による昭和歌謡曲はたくさんあります。
・ピンクレディー【渚のシンドバッド】出だし
・キャンディーズ【春一番】
・ペドロ&カプリシャス【五番街のマリーへ】
・吉田拓郎【結婚しようよ】
・美輪明宏【ヨイトマケの唄】
……などなど。

平成のポップスにもあります。
AKB48の【恋するフォーチュンクッキー】のサビの部分。
そして令和にも!NiziU【Make you happy】、瑛人【香水】です。

上記の曲でも、全てが〈ド・レ・ミ・ソ・ラ〉だけではなく、ファとシも使っていますが、出だしだけ、もしくはサビだけ、或いは全体を通して五音音階が基盤になっている、というように巧く使われています。
 そして、この誰にも馴染みやすい五音音階を用いる事がヒットに繋がっていると言えます。何せこの昭和ポップスの時代はミリオン・ヒットが目標で、そうならなかったものは「失敗作」と見なされていましたから、曲を作る方も「売れる」ために様々な要素を取り入れたりして大変だったと思います。

 ここからはちょっとした「裏ワザ」をご紹介します。
〈ド・レ・ミ・ソ・ラ〉による曲は、ピアノでは黒鍵のみで奏でることが出来ます。「ソ♭」の位置を「ド」にすれば、簡単!ピアノが苦手な方も一本指で弾けます。
まずは北島三郎の「函館の女」を弾いてみましょう。↓左から順に黒鍵を押していけば、ほら弾けましたね!

函館

補足ですが、日本の五音音階には実際には〈ラ・シ・ド・ミ・ファ〉等もう少し種類があります。詳しく知りたい方は、小泉文夫著【日本伝統音楽の研究】音楽之友社出版 をご参考に。
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