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[西洋の古い物語]「猫の王」

こんにちは。
いつもお読み下さり、ありがとうございます。
今日は、不思議な黒猫のお話です。
ご一緒にお読みくださいましたら幸いです。
※画像はフォト・ギャラリーからお借りしました。黒猫さん、白猫さんがほっこりくつろいでいる素敵な一枚ですね!

 
「猫の王」
 
昔々、あるところに二人の兄弟がおりました。二人はスコットランドのとても寂しい地域にぽつんと立つ一軒家に暮らしておりました。年老いた料理女のほかには、彼女の猫と兄弟が飼っていた犬たちを数に入れないとすれば、周囲何マイルにもわたって誰も住んでおりませんでした。
 
ある秋の午後のこと、兄のほうが――彼のことをエルシェンダーと呼びましょう――外出したくないと言いました。そこで弟のフェルガスは一人で出かけ、その前日に彼らが射撃をしていたところへと、山々を越えてはるばる道をたどっていきました。
 
彼は秋の早い日没の前に戻るつもりでした。しかし、彼は戻ってきませんでした。エルシェンダーはとても心配になり、いつもの夕食の時刻が過ぎても長い間外をじっと見ながら待っておりましたが、無駄でした。遂にフェルガスが戻ってきました。びしょ濡れで疲れ果てておりました。しかし、どうしてこんなに遅くなったのか彼は説明しませんでした。
 
夕食の後、兄弟は暖炉の前に腰掛けました。石炭は元気よくパチパチと音を立て、犬たちは彼らの足元にねそべり、老婆の黒猫は、炉端の二人の間に、半分目を閉じて厳かな様子で座っておりました。やっと人心地がついたフェルガスは、彼の冒険を話し始めました。
 
「どうして僕がこんなに遅くなったのか、きっと不思議に思っていたでしょうね」と彼は言いました。「今日は実に奇妙な冒険をしたんですよ。どう言ったらいいのかわからないくらいです。兄さんにそうすると言ったとおり、僕は昨日の道をたどって行きました。ちょうど家路につこうとすると山霧が立ちこめて、完全に道に迷ってしまったのです。どこにいるのかもわからず長い間さまよっていると、漸く明かりが見えたので、そこを目指しました。助けてもらえるかと思ってね。」
 
「近くまで行くと明かりは見えなくなりました。気付くとそこは、樫の老木のそばでした。僕は枝をかき分けてその木に登り、明かりをもっとよく探そうとしました。すると、おや!明かりは僕のすぐ下に、樫の木の幹のうつろな穴の中にあったのです。まるで、葬儀が行われている教会を上から見下ろしているようでした。歌声が聞こえ、松明に囲まれた棺が見えました。それを運んでいたのは――でも、エルシェンダー兄さん、お話ししてもきっと信じないでしょうね!」
 
兄は続けてくれるよう熱心に頼み、弟を元気づけようと乾いた石炭を一つ、火に投げ込みました。犬たちは静かに眠っていましたが、猫はきちんと座って、エルシェンダー同様、注意深く、じっと耳を傾けているように見えました。フェルガスは話を続けましたが、二人とも猫に目をやらずにはいられませんでした。
 
「ええ」と彼は続けました。「これは今ここに僕が座っているのと同じぐらい本当のことなんです。棺と松明は猫たちによって運ばれていたのです。そして棺の上には王冠と王錫の印がついていました!」
 
彼はそれ以上話しませんでした。なぜなら、そのとき、黒猫が跳び上がって、叫んだからです。
「何と!ピーター老が崩御なされたと!ならば余が猫の王なのだ!」
そして煙突を駆け上がると、それっきり姿が見えなくなりました。
 
 
「猫の王」はこれでお終いです。

フェルガスが目撃した不思議な光景は、猫の王様の葬儀だったのですね。
猫が前脚を揃えてきちんと座り、何かにじっと聴き入っている様子はいかにも品格があり、賢そうですね。猫ちゃんを飼っていらっしゃる方も多いと思いますが、今、皆様のそばでじっと座っている猫ちゃんは、もしかしたら次代の猫の王様かもしれません。猫ちゃんが急に姿を消して戻ってこなかったら、それはもしかしたら、先代の王様が亡くなったので後を継ぐためなのかもしれませんね。

最後までお読み下さり、ありがとうございました。

このお話の原文は以下の物語集に収録されています。

次回をどうぞお楽しみに。

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