『7人の聖勇士の物語』第11章(1) 聖ジョージが地下牢から脱出し、聖ディビッドを救出するお話。
こんにちは。
いつもお読みくださりありがとうございます。
(※タイトルが第11章(2)となっていましたが、(1)の誤りでした。お詫びのうえ、修正させていただきます。申し訳ありませんでした。)
ここ数日、左目が疲れ気味で、なるべく無理しないように気をつけていたのですが、ついに昨晩、何かの拍子に左目に鋭い痛みがあり、目の血管が切れました。
時々、年に一度か二度ぐらい切れるので、もうそれほどびっくりしない筈ですし、前触れとして目の疲労感や鈍痛があるので「もしかしてそろそろ」と警戒もしているのですが、それでもいつも突然「ピシッ」と音を立てて切れたかのような気がして、うろたえてしまいます。実際には音はしていないと思うのですが。
目の血管が切れたからといって目から血が流れ出るわけではありません。出血量にもよりますが、白眼のところが真っ赤になり、ホラー映画でよく見る「怖い目」になる程度で、切れた瞬間は痛いですが、だんだんと収まっていきます。そして、早ければ2日ぐらいで目の赤さも薄らぎ、何事もなかったように直ります。
今回は、出血量がそれほどでもないみたいなので、明後日ぐらいには引くのではないかと願っています。以前は、誰かに気付かれて怖がられたらどうしよう、と心配でしたが、案外誰も気付かないようです。もしかしたら、気を遣って、気付かないふりをして下さっているのかもしれませんね。そうだとすれば、ありがたいことです。
『7人の聖勇士の物語』の続きです。
前回までで7人の勇士それぞれの冒険が一通り終りまして、今回からは地下牢に閉じ込められていた聖ジョージが脱出して新たな冒険に向かうお話です。まずは愛するサブラ王女をアルミドールの魔手から救い出さねば・・・。
※今日の絵はアーサー王伝説より、王になる前のアーサーが岩にささった剣を引き抜く場面です。パブリックドメインからお借りしました。
『7人の聖勇士の物語』
第11章 聖ジョージの解放(1)
勇士聖ジョージと忠実なド・フィスティカフが遠く離れたエジプトの地下牢で呻吟(しんぎん)している間に、霜のように白い髭をたくわえた冬が七度にわたって雪で地面を覆い、木々から水晶のような氷柱を垂れ下がらせました。二人は鰐や猿や蛇は尊崇に値する対象ではないと勇敢にも主張しために地下牢に閉じ込められたのでした。
ある日、自由の身になれないことに絶望して、たまたま騎士が両手をもみしぼっておりますと、妖精のサブライナがくれたあの魔法の指輪を偶然あるやり方でこすったのです。すると、指輪からまばゆい光が発しました。光はどんどん増し、ついには獄舎を満たすほどになりました。そして、その光の中から十羽の孔雀が引く車に乗って妖精本人が姿を現しました。
「勇敢な騎士様、なぜもっと早く私をお呼び下さらなかったのですか」と彼女は美しい声で尋ねました。そこで聖ジョージは、恥ずかしながら、魔法の指輪の力をすっかり忘れていたのだと白状せざるをえませんでした。
「魔法の力であなたをこの牢獄から解放することはできません。でも、道具を差し上げますから、それを使ってあなた自身を自由の身になさってください。そうするほうが、苦労せずに自由を手に入れるよりも、もっと自由を価値あるものとお思いになるでしょうから。自分で苦労なさろうとしない方をお助けすることはできませんわ。」
妖精はこのように言うと、騎士と従者に、ハンマー、のみ、シャベル、根掘り鍬、かなてこを与えました。
「馬と武器は門の外に準備ができていますよ」と妖精は言い足しました。「闘いの準備が整ったら、前進、そして征服です!」
この言葉に騎士とド・フィスティカフは力と気力が驚くほど増すのを感じ、もう千人もの逃げ惑う敵を追って平原を駆け回っているような気がしました。
妖精がしてくれた手助けに十分にお礼を言ってから、「ところで、私の感謝のしるしとして、何か勇敢な偉業や雄々しい行いをさせていただけませんか。」と聖ジョージは尋ねました。
「よく言ってくださいました」と妖精は答えました。「実は、お仲間の騎士様、ウェールズの聖ディビッドが、今このときも、タタールとの境にある魔術師オーマンダインの陰鬱な城の中で辛い目に会っておられます。あの方のお国には私は好意と尊敬を抱いているのです。行って彼を解放してください。あの方は、ご自身の力だけを恃み、適切に助けを求めることをしなかったため、成し遂げようとしたことに失敗なさったのです。とある魔法の剣でのみ、あの魔術師にはうち勝つことができるのです。その魔法の剣は城の近くの岩に突き刺さって固定されています。人間の力ではそれを引き抜くことができません。でも、この油の瓶をお持ちになり、岩の中に油を注ぎ込んで、辛抱強くお待ちになると、その剣は簡単に抜き取ることができるでしょう。」
騎士は妖精の指示に従うことを約束しました。そして、妖精が姿を消しますと、騎士とド・フィスティカフは雄々しく仕事に取りかかりました。道具は扱い慣れないものばかりでしたが、数日のうちに彼らは町の城壁の下に地下道を掘り抜きました。鉄板や厚い壁、花崗岩、泥、そして砂を貫いて彼らは掘りました。最後に掘った砂は、信用できない人々と同じく、扱うのが最も難しかったのでした。とうとう、空が見えました。穴の出口から出ると、そこには彼らの馬が2人の醜い顔をした侏儒に轡をとられて立っておりました。侏儒は彼らに槍、剣、その他の武器を差し出しました。
馬に跨がった聖ジョージが侏儒らに褒美を与えようとする間もなく、彼らは姿を消してしまいました。
そこで、主従は出発し、ベアード(※聖ジョージの馬の名前)と従者の馬が彼らを運んで走れる限り速く進んでいきました。アフリカをアジアにつないでいる首にあたる土地に沿って進み、それから北に向かって疾駆していきました。馬たちの調子はすこぶる良く、乗り手たちは長い幽閉の後に清らかで新鮮な空気を吸ったので、手足には新たな力が、胸には新たな勇気が加わりました。
ここには記すことができない数多くの冒険に遭遇した後、ついに彼らはあの残酷な魔術師の城を取り囲んでいる魔法の森へとやってきました。彼らは聖ディビッドと忠実なオゥエンのときと同じ恐ろしい光景や音を見たり聞いたりしました。しかし、先の二人と同じく、彼らも怯むことなく藪や茨を切り開き、蛇のシューシューいう音や梟の鳴き声、唸り声や金切り声、その他の音にも今やすっかり慣れっこになってしまいました。そして、ついに魔術師の城にたどり着いたのです。
そこではあの岩から魔法の剣の柄が出ているのを見ることができました。ド・フィスティカフがさっそく柄をつかもうとしましたが、聖ジョージは、妖精の指示に賢明に従って油を岩の上に注ぐまで手出しをやめておくようにと警告しました。
ゆっくりと油は岩の多くの割れ目を滴り落ちていきました。騎士は油が効果を現すのを忍耐強く待ちながら、左手でその剣をつかみ、その間、右手には自分の剣をいつでも使えるように握っておりました。
「剣を取り出す前に魔術師が襲いかかってくるかもしれないではないか。」
彼は従者にそう言いました。
ゆっくりとですが、確実に、剣は聖ジョージが倦まずに続ける努力に応えて緩みはじめました。まだ剣を引っ張っている最中に、城の中から恐ろしいどよめきが聞こえてきました。地面は振動し、激しく震え、揺れ動きました。岩からは炎が飛び散りました。しかし、騎士は剣をしっかりと握っていました。
突然、城の真鍮の門が勢いよく開かれ、そこから魔術師オーマンダインが出てきました。魔術師はまとえる限りの恐ろしいものを身に纏っていました。兜には炎と燃える羽根飾りがついており、カスク(兜)と肩にはシューシューいう蛇がまきついていました。鎧は赤熱の金属でできているかのようでした。また、おぞましい顔つきのホーホーいう梟が肩に止まっておりました。そして、鎧と同じく真っ赤に焼けた鉄の棍棒は一面とげにおおわれておりました。魔術師はそれを振り回しながら、真っ直ぐに立ち向かってきました。しかし、名剣アスカロンは騎士の手に握られていました。それを慣れた手つきで振り回しながら、騎士は魔術師を食い止め、そうしながらこれまでよりも一層激しく魔法の剣をぐいぐい引っ張りました。
いかなる雷鳴をもしのぐ大音響をたてて剣はついに岩から抜けました。その剣を右手にもつと、騎士は猛然と魔術師に襲いかかりました。魔術師がその鋭い切っ先を感じる間もなく、棍棒を握っている手の感覚が失われ、棍棒は手から落ちました。梟はホーホー鳴きながら飛び去り、蛇はシューシューいいながら這っていきました。そしてかつては強力だった魔術師はへりくだって跪き、慈悲を乞いました。
聖ジョージはド・フィスティカフに魔術師を見張っておくよう命じると、城に入りました。そこでは、友であり仲間である聖ディビッドと忠実な従者オゥエンが鉄のベッドの上で鎖で縛られ、呻いたりため息をついたり、酷い運命を悲しんだりしていました。聖ジョージが魔法の剣で鎖を断ち切ると、まるで絹の紐であるかのようにたやすく切れました。そして、彼らを両足で立たせてやると、彼らはとても喜び、おびただしい感謝の言葉を聖ジョージに注ぎかけました。
今日はここまでです。
魔術師オーマンダインは見かけ倒しでしたね。アニメや映画ならどんな姿で描いただろうと考えると、笑ってしまいました。
次回をどうぞお楽しみに!
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