#アドベントリレー小説 23日目

「アドベントリレー小説」とは、25人の筆者がリレー形式で
1つの小説を紡いでいく企画です。
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23日目 作:ロマ

『緋色のヒーロー』#23


その時、俺は一つの単語を思い出した。――『疫病』。

そうだ、カナコちゃんは『疫病』のことを知らなかった。それは俺とちひろが世界を救って「無かったこと」にしたからで…… いや違う! 2019年12月25日を境に、「疫病の蔓延している世界」が「青い雪が降り積もる世界」に改変させられているんだ! そもそも「疫病の蔓延している世界」の1999年の7月に、隕石なんてやってこなかった! でもどうして俺は隕石の欠片を取り込んだ記憶も持っているんだ? 「疫病の世界」と「青い雪の世界」、どうして俺は2種類の記憶を持っているんだ……?

――「この世界」は現実ではない……?

「疫病の世界」で、ガスマスクではない普通のマスクを着けた、疲れた姿の俺が電子広告板の液晶パネルに反射していた。記憶の中の俺と一緒に、その言葉を呟いた。

「「緋色のヒーロープロジェクト……」」


そうだ、ようやく気づいたようだね。
さて、時間も惜しいし本題に入ろう。「この世界」で最後に君がやらなければならないことは、
「カナコを救い、恐怖の大王<テリブル- ロック クロック>を燃やしつくすこと」。
そのための方法は分かっているね? ちひろ、例のものをひろしに。

「ひろしくん、これがカナコの意識を固定するための"真紅のドレス"。あの子ね、とってもいい子なの。いつもひたむきで一生懸命。ただちょっと前のめり過ぎるところがあるかしら。でもね、そんな"いい子"にはプレゼントが必要でしょう?」

「だってキミは、おひげの似合う、『緋色のヒーロー』なんだから!」


その言葉を聞いた俺は、心が熱く燃え上がるのを感じた。

今ここがどこだって構わない。
何万回目かのループ後の世界だろうが、フルダイブ型VRアドベンチャーの世界だろうが。

あいつを、カナコを救えるのは、”主人公”である俺だけだ!

その信念は、理解を超えた情報の氾濫に溺れそうになっていた俺自身に力を与えてくれた。このドレスを渡すこと、今はそれだけを考えればいい!


さあ、もう時間はないぞ。隕石衝突まで残り60分。

その言葉を背に、俺は走り出した。本物のヒーローになるために!


#23 終


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