Web3.0とは何か。
まず、これはWeb3を肯定する話でもなければかと言って完全否定派でもない。
そうあえて前置きをした上で言わせてもらおう。
Web3.0とは、ほとんどSFだ。
「Web1.0がナントカでWeb2.0がナントカで〜」という説明はYouTubeやブログで胡散臭い人たちから聞いただろう。
その理屈では「Web3はユーザーが作るインターネットだ」と言うのが大まかな解釈だ。Web3のインターネットではアプリやサービスなどの管理者がいらなくなり、全員が対等になる仕組みだと言う。
具体的には「ブロックチェーン」と「P2Pネットワーク」とその応用である「仮想通貨」や「NFT」、派生サービスの「Meta mask」などを想像して語られる。これらの技術やサービスは確かに画期的な新技術が使われている。
その仕組みを調べると、「ユーザー同士でネットワークを作る」「誰も不正できない」「インターネット上でユーザー同士が監視し合う」というような説明が書かれている。
この説明を見て「新しいインターネットになるぞ」と、勘違いしてしまった人達がWeb3の夢を語っている。それがWeb3というSFが生まれた理由だ。
この先の章では、彼らがなぜ勘違いしてしまったのか、Web3で実際何が作れるのかを話していこう。
それらとは。
ブロックチェーン技術とは、データを書き足す時に「前のデータが答えになる計算式」を添えて書き足していく、という仕組みだ。この方法で作られたデータのことをブロックチェーンと呼ぶ。そして定期的にみんなで監視して「正しいデータか書き換えられたデータか多数決で決める」というものだ。
今までのデータというのは書き換えや書き足しが簡単で、暗号化も解いて仕舞えば終わり。絶対的に信用できるデータはなかった。
だがブロックチェーンは「書き足すのが難しい」ので改ざんも難しく、さらにサーバー同士で監視し続けているので信用できる。そこが今回の革新だ。
P2P通信とはPCやスマホ同士が1対1で通信すること。
これを色々な機器と同時に行うことでネットワークのように見える通信をP2Pネットワークと呼ぶ。
ブロックチェーンの多数決はこのP2Pネットワークのやり方で行われ、お互いに相手の持ってるデータが同じかどうか確認している。
解釈はこれで十分だ。
仮想通貨はこのブロックチェーンの「改ざんが難しい」という利点を活かして「金の取引データをブロックチェーンにしてしまえ」
「不正ができないならネットで金のやり取りしても大丈夫じゃね?」
という発想で作られたものだ。
NFTは「仮想通貨と同じように、デジタル作品のデータも取引できるんじゃね」ということで作られた、
デジタルデータ全般の「所有権」や「発言」や「記録」なども含めてブロックチェーンで証明する仕組みだ。
ブロックチェーンは暗号化されてるのでプライバシーが守られるという勘違い
ブロックチェーンは基本的に暗号化されていない。データ自体は誰でも見れるし、コピーも出来るという形になっている。
暗号化されているのは「データとデータを繋げた部分」だ。データを書き足す時に決まったルールで暗号を作らなきゃいけない。そしてその暗号の答えが必ず「前のデータ」になる。
もしデータを改ざんするなら、後から繋げた部分全部の暗号化をやり直さなきゃいけない。その暗号化が非常に時間のかかるもので、しかもデータが書き足された回数だけ暗号の数も多くなっていく。だから改ざんが難しいと呼ばれている。
しかしこれはあくまで改ざんされないための暗号化なので、「データを見えなくする暗号化」とは全く違う。
ただ「ブロックチェーンには暗号化技術が使われている」という文字を見て勘違いした人が多すぎる。
ブロックチェーンは暗号化されているのではなく、暗号を解きながら作られている、というのに近い。
P2PネットワークでGAFA中央集権から脱却できる、なんて妄想
P2P通信なんてものは昔からあった。むしろすごく普通の通信方法だ。
それを今更「ブロックチェーン」として活用される時にP2Pネットワークが使われて話題になってるだけだ。
ブロックチェーンの多数決をP2Pで行うのだが、これは普通のPCと言うよりでかいサーバー達が参加する。そして同じ内容の確認を複数のサーバーで行う。だからネットワークとして成り立つのであって、一般のスマホやPCがこれでネットワークを組むという話ではない。
一般のPCやスマホでも出来ないことはないけれど、サーバーと違っていつでも電源が入っている物ではないから、一般の人が使うのにP2Pネットワークでは通信失敗が起きやすい。
P2Pは都合が悪かったから、サーバーといういつでも接続できる便利なモノがあるのだ。
P2Pネットワークは確かに面白い。複数のPCやサーバーで通信して直接データのやり取りをするのは何か使い道がありそうな気がする。
基本的にはそれが不便なので一つのサーバーを仲介してやり取りしているのだが(SNSやメールなど)、データの証明目的やサーバーダウン対策であればP2Pネットワークで管理するのは悪くない。
だが欠点が大きい。
「通信をするPC・スマホ・サーバーがお互いに起動していること」
「P2Pネットワークの中では同じデータを全員で共有すること」
「保存するデータの量が多くなること」
ブロックチェーンがP2Pネットワークを開発したのではなく、P2Pネットワークの活用法としてブロックチェーンが見つかっただけなので、そう簡単にポンポンとP2Pの使い道は見つからないはずだ。
今までそんな欠点を受け入れてまでデータの正しさを証明する必要がなかったのだ。
ただこの注目されているタイミングで、何か証明すると良いモノやサーバーを使わなくてもいい用途が見つかるかもしれない、それくらいは期待している。
だからP2Pネットワークの可能性自体を僕は否定しない。
...補足だがP2Pネットワークでプライバシーなどない。ブロックチェーン同様お互いに同じデータを持っているので、今まで「私はエロ動画を見ました」というデータが企業サーバーログにあったとするならば、それが今度は企業ではなくユーザー同士のネットワークの中でやりとりされるのだ。
中央集権を否定したい気持ちもわかるが、それでプライバシーが守られるようになるわけではない。
サーバー中央集権から、わざわざP2P分散するメリット
サーバーというのは会社が管理しているパソコンのことだ。僕らの持っているパソコンと同じモノだ。
そこにWebサイトやらアプリケーションやらのデータを載せて、インターネットに公開する。だから僕らはいつでもWebサイトを見れる。
同じことをP2Pネットワーク(一般人用)でやろうとすると、P2Pネットワーク上のログイン率の高いユーザーのうち数名が同じWebサイトのデータを持っていなければいけない。なので基本的には普通にサーバーを使ったほうがいい。
P2Pネットワークをあえて活用するなら、「データの証明ができる」「他人のデータをチェックする」「サーバー以外からデータを受け取れる」という特性を活かすアイデアが必要だろう。
例えばWindowsなどのセキュリティソフトで、ダウンロードしたデータが一般に普及してみんなが持っているモノなのかどうかP2Pネットワークでチェックする。とか
これならいちいちセキュリティ情報をアップグレードしなくても、何が普及していて何が怪しいデータなのかが分かる。
あるいは文字限定のSNSを作り、P2Pネットワークでデータを共有する。人の発言は見えてしまうがそのかわり企業の管理は一切できないSNSが作れる。
共有するのは数千人分の文字データで、削除期間を1日などにすれば、ユーザーデータを企業管理されていなくても維持できるアプリケーションが作れる。
あまりにもアイデアが良すぎて自分で驚いてしまった。
ただこんなモノは今までの技術でも作れただろう。ユーザーしかいないアプリケーションを作り何も管理できない状況で儲けるのは難しい、だから誰も作らない。それにプライバシーがないという皮肉も言える。
まとめ
という具合にP2Pネットワークやブロックチェーン自体は新しいモノが生み出せる考え方だ。
きっとさっきのアイデアには他にも何かしら欠点があるのだろうけれど、それでもアイデアを思いつくきっかけにはなったのでP2Pやブロックチェーンへ注目が集まるのは良いことだろう。
僕自身も若いし、未来に期待したい気持ちはすごくよく分かる。だが今までできなかったことがある日急に画期的にできるようになるわけじゃない。
科学や技術の世界はいつも新しいモノが見つかっては騒ぎ立てる者がいるが、実際に世界が変わり始めるのは20年後くらいからだ。
AIの話についてもそうだが、今までの技術から一歩進んだだけで世間は「未来だ革新だ」と騒ぎ立てる。しかし、現実はそう簡単には変わらない。
仮想通貨もNFTもAIも、そんな夢見人のおかげで過剰に世界は前に進んでる程度で、その進歩は進めすぎた分だけ脆くもある。
まあ何というか、それはいいとして。
妄想をするのは勝手だが、それを確実な未来であるかのように語るのはちょっと鬱陶しい。
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