自由詩「犬」
こんにちは。ローランです。
よくペットショップの前を通ります。子犬や子猫がいて遊んでいる姿も寝ている姿も「かわいいなぁ」と思います。ある日小さな子どもさんに抱っこされたワンちゃんを見ました。横では店員さんと親御さんが一生懸命お話をされていました。ああ、あのワンちゃんはあのお宅の子になるんだな、幸せになってねと心の中で思いました。
そして、彼らはどんな気持ちなんだろうかとふと思いました。
では、今日もお楽しみいただければ、幸いです。
「犬」
気が付くと僕はここにいた
どうして僕はここにいるんだろう
見えない壁に覆われた場所
ママのそばで眠っていたら
突然起こされて連れて来られた
ここはどこ?
ママがいない
寂しいよ
僕はママを呼ぶ
でもいくら呼んでもママは来ない
訳もわからず僕は一人ぼっちでここにいる
兄弟たちもいない
見えない壁の中にある白く仕切られた部屋の両隣には
僕以外の犬たちがいて
昼間はこの子たちと遊ぶことができる
だから寂しくはないけど
夜はママがいないからやっぱり寂しい
それに僕らが遊んでいると
大勢のニンゲンが見えない壁の向こうからこちらを覗き込んでいる
大きいニンゲンも小さいニンゲンもいる
ちょっと怖い
でも優しそうなニンゲンがきた時は
遊んでもらおうと近寄っていく
前足を出してかまってもらおうとしても
見えない壁に邪魔されて
ニンゲンは見ているだけ
そんな日を過ごすうち
遊んでいた子たちが順番にいなくなっていった
みんなどこへいったのかな
せっかく友達になったのに
僕はもっと寂しくなった
そうしたらまた別の子たちがやって来た
僕はまたこの子たちと遊べると喜んだ
次の日のこと
僕は見えない壁のなかから出されて
小さなニンゲンに抱っこされていた
そのあと小さなハコに入れられて
またどこかに連れて行かれた
今度はどこに連れていかれるの?
独りぼっちになるの?
お友達はどこ?
ガタガタ揺れる真っ暗なハコの中で
僕は怖くてブルブル震えていた
揺れがとまった
そうしたらハコが開いて明るくなった
眩しいなって思った瞬間
ニンゲンたちが上から覗きこんでいた
僕はとても驚いたけど
ニンゲンはすぐに僕をハコから出して自由に歩かせてくれた
そこは明るくて広い部屋だった
それから大きなニンゲンも小さなニンゲンもたくさんたくさん遊んでくれた
ゴハンもくれたし
落ち着いて眠れる場所もあった
夜はやっぱり寂しくて
ママを呼んで鳴いちゃったけど
朝になるといつも同じニンゲンたちがいて
外へも連れていってくれる
頭も体もいっぱいいっぱい撫でてくれる
ここはちょっと楽しいかも
僕はだんだんそう思えるようになってきた
それにここには見えない壁がなかった
何日か経った
やっと僕はわかった
ここが僕の家になったんだな
ニンゲンたちとはすっかり仲良くなったし
僕の世話もちゃんとしてくれる
ほんとのママはいないけど
ニンゲンのパパとママ、お兄ちゃんとお姉ちゃんができた
だから僕は寂しくない
ママ、僕はここでニンゲンの家族と生きていくよ
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