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人生の選択
結婚することになった。家族に報告して、新居を決めて、両家顔合わせの予定を立てて、それはもう慌ただしかった。
両家顔合わせが終わった後、夫とカフェでゆっくりコーヒーを飲みながら、今後の生活について話した。私は「今の仕事を辞めて、別の業種に転職したい」と言った。初めて口にした言葉だったので、言ってしまった後自分でもびっくりした。美味しいコーヒーと、顔合わせが無事終わったことへの安心感からだったのだろうか。ただ、今までずっと考えていたように出た言葉だった。
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高校生のとき、進路を決める際に重要視したのは、『1人で生きていけるかどうか』だった。その結果、医療職の資格を取ることにした。
この資格があったからこそ今の自分がいる、これは間違いない。でも、同時に大切なものを見て見ぬふりして、無くしてきたような気もする。慢性的な人材不足、他業種との軋轢、年々増していくプレッシャー。でもだんだん麻痺して平気になっていく、むしろ開き直るような感覚になっていることに気づき、恐ろしくなった。
そして仕事が忙しいからと実家に帰らず、友達とも連絡を取らなくなり、やがて会わなくなってしまった。大人になるということはこういうことなのかもしれないが、休職を経験してさらに、自分の置いてきたものの大切さを感じた。仕事で対峙する大きなものよりも、自分のそばにあるものをもっと大切にしたくなった。
私は今の仕事を辞めることにした。