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待つことの重要性

身体のレジリアンス(回復力)が低く、適応性が十分でないクライアントに対しては、組織を急に弛ませたり、リラクゼーションを強く促しすぎないことが重要です。なぜなら、過去に急激に組織を弛ませた際に、安全ではなかった体験が結びついている場合、身体システムがその変化を危険だと認識してしまう可能性があるからです。このような場合には、身体システムが許可する範囲内で、ゆっくりと、慎重に変化を進める必要があります。身体のレジリアンス(回復力)が低く、適応性が十分でないクライアントに対しては、組織を急に弛ませたり、リラクゼーションを強く促しすぎないことが重要です。なぜなら、過去に急激に組織を弛ませた際に、安全ではなかった体験が結びついている場合、身体システムがその変化を危険だと認識してしまう可能性があるからです。このような場合には、身体システムが許可する範囲内で、ゆっくりと、慎重に変化を進める必要があります。これは、ソマティック・エクスペリエンシング(SE)における「タイトトレーション(ゆっくりちょっとずつ反応させないと化学反応が失敗する例え)」の原則にも通じる考え方です。

一方で、もともとレジリアンスが高く、適応性に優れているクライアントの場合、身体の反応を促進する際にそれほど慎重である必要はありません。こうしたクライアントは、身体の容量が大きいため、比較的スムーズに変化が進む傾向があります。しかし、多くのトラウマを抱えていたり、刺激に対して過敏に反応するか、あるいは麻痺しているクライアントの場合、身体システムが内側から変化を起こすまで、十分な時間をかけて待つことが必要です。


イールドの反応は、支持面に身体が落ち着いていく安全性の高い反応として知られていますが、場合によってはその反応が速く進み過ぎることも観察されます。特に、速く起ち上がりすぎる反応はエネルギーの収束が難しく、静寂の中でゆっくりと起ち上がる理想的な反応とは異なります。このような場合、施術者が慎重に立ち位置を選ぶことで、反応の速度を調整し、適切なタイミングでの変化を引き出すことが可能です。

反応が速く進みすぎると、クライアントの身体全体のトーンが保たれず、「潰れてしまう」ような不安定な状態になることがあります。これに対して、適切な速度で反応が進む場合、筋膜ネットワークの張力が適度に保たれた状態でイールドが進み、クライアントにとって安全かつ安定した変化が起こります。このプロセスでは、施術者の立ち位置や介入の質が、クライアントの身体に働きかける力学的影響を整える鍵となります。

適度な張力が保たれている時、体表の適度な張りは、機能的なバウンダリーの存在を意味します。これは、身体が外部からの影響を適切に処理できる能力を持っていることを示しています。このバウンダリーは、必要なものは受け容れ、不要なものは受け付けないという「選択透過性」を備えています。たとえば、必要な力学的刺激や感覚情報を身体に取り込む一方で、不必要な負荷や侵襲的な刺激から身体を守る役割を果たします。

この選択透過性が機能している状態では、身体は外部との関係性を適切に調整し、内部環境の安定性(ホメオスタシス)を維持します。適度な張力は、単なる物理的な状態を超えて、身体が自律的に外部環境と内部環境を区別し、バランスを取るための基盤を提供します。逆に、体表の張力が不足していたり過剰であったりすると、このバウンダリーが機能不全を起こし、外部からの刺激を過剰に受け入れたり、逆に必要な情報を遮断することで、身体の調和が崩れる可能性があります。その結果、身体は防衛反応として過敏になったり、逆に鈍感になることで、エネルギーの消耗や慢性的な緊張を引き起こすことがあります。

さらに、施術者とクライアントの位置関係は、セッションの質を決定づける重要な要素です。施術者が適切な位置関係を保っているとき、施術者自身の重心は真骨盤内の一点に集中し、体表にも適切な張力が行き渡ります。このバランスの取れた張力は、クライアントにとっての「アンカー」となり、身体的共鳴を通してクライアントの身体に適度な張力をもたらすきっかけとなります。この共鳴が生じることで、身体システム全体が徐々に安全を感じ取り、自発的な調整反応が促進されます。

呼吸がしやすいかどうかというシンプルな指標も、安全性を確認する上で役立ちます。呼吸が吸いやすく、吐きやすい状態は、緊張と弛緩のバランスが取れ、筋膜ネットワークが最適な状態にあることを示しています。適切な張力が保たれた状態で反応が進むと、身体の自然な回復プロセスがスムーズに働きます。

このように、適切なタイミングと間合い、さらに施術者とクライアントの関係性における重心の安定と共鳴を意識することで、より安全で効果的なセッションを実現することができます。

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