Amazon オリジナルアニメ:インビンシブル 無敵のヒーロー
Amazonではあまりアニメをみないのですが、たまたま見つけたアニメが、最近のアメコミが描こうとしている問題意識の、現時点での集大成と見えたので、思ったことをまとめてみました。
インビンシブル 無敵のヒーロー
ウォーキングデッドの原作者であるロバート・カークマン原作、コリー・ウォーカーとライアン・オットレイ画によるいわゆるアメコミ作品。
日本語の情報はあまりないのですが、アメリカのウィキペディアの情報によれば2003年1月から2018年2月まで、まる15年にわたって描かれていました。
Amazonオリジナルでアニメ化されていて、Amazonプライムビデオでは、現在のところシーズン1の全8作が公開されています。
こちらのAmazonオリジナル・アニメについては、2021年5月から公開された後で、いくつかの記事が見つかります。
記事タイトルだけで半分ネタバレ感がありますが、「ザ・ボーイズ」の完全アンチ・ヒーローに寄せ切ったドラマよりは、まだヒーローものに近いポジションでストーリーを展開してます。
ヒーローの社会的意義を問う作品
Amazonオリジナルの『ザ・ボーイズ』はスーパーヒーローこそ、正義の仮面をかぶった極悪な存在と位置付けて、彼らと戦う一般の人間を描いていますが、このような流れは少なくとも私が見てきたドラマの中では2000年台以後、急速に増えてきています。
『ザ・ボーイズ』では、DCもマーベルもどちらも取り込んで、それぞれに象徴的なキャラクターを『ザ・ボーイズ』の世界に取り込んでいます。
この記事では、「スターライト」のDCのモデルは不明としていますが、個人的には「スターガール」と思います。星がアイコニックに使われており、彼女も槍のようなコズミック・スタッフから電気のようなものを放射して武器として使います。
このような流れがいつから始まったのか、社会学的な考察ができるほどのデータがないのですが、個人的に見続けてきたアメリカドラマや映画の中で、あくまで私見としてお話しするなら、2001年あたりからアメリカ全体の問題意識として象徴的に取り上げられるようになり、ハービー・ワインスティーンの逮捕で、一気に加速した感があります。
9.11でスタートしたSmallville
先日、ちょうど20周年記念でブルーレイも含めたコンプリートボックスが発売になって、うちでも記事を取り上げたSmallvilleは、2001年10月16日に放送が始まりました。
このSmallvilleでは、クラーク・ケントと親友でもあったレックス・ルーサーがいかにしてスーパーマンの敵になっていくのかを描いたドラマでした。
その象徴的なエピソードが、2002年に放映されたシーズン2第10話で、登場するカワチ洞窟に描かれていたナマンとサギースの伝説です。
この伝説とは次のようなものです。
スーパーマンの世界では彼が善、レックス・ルーサーは悪
レックスは「そんな力を持った存在が地球の外からやってくるのなら、そいつは侵略者だ。その侵略者と戦うのがサギースなら、俺はサギースになる」と宣言し、ここから「まだ見ぬ侵略者」と戦うために「死の商人」へと化していって敵役レックス・ルーサーとなっていく、という描き方をしていました。こちらは、その「地球の守護者サギースに、俺はなる!」と宣言したレックス・ルーサー。
スーパーマンの世界を描いたドラマなので、レックス・ルーサーは敵役であり、クラークの良き親友でもあったレックスがなぜ「レックス・ルーサー」になったのかを突き詰めた結果、このような設定に落ち着きました。
ジャスティス・リーグに対する「ヴィジランティ登録法」
スーパーマンが善であるべきSmallvilleが、しかし「正義とは何か?」という大きなアメリカでのうねりに対応して作られたのが、夜中にヒーロースーツを着て悪人を懲らしめたり、反社会的な事業を営むルーサー・コープの設備を破壊してあるくことに対する立法側の動きとして、「ヴィジランティ登録法」を施行してとりしまる、というかなり大きなテーマとして取り上げられました。6,7,9,11,12,13話と6エピソードもかけて描かれています。
Smallvilleの世界では、このヴィジランティ登録法は国民の反対=国民のヒーローへの支持という形で廃棄されて終わり、そしてこの後、スーパーマン以前のクラーク・ケントが「スーパーマン」になっていくエピソードシリーズが描かれて、大団円を迎えました。
2004年 Mr. インクレディブル
家族で楽しめるヒーロー映画、Mr.インクレディブルが2004年でした。
こちらは、のちのアヴェンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロンを先取りするような形で、「スーパーヒーロー保護プログラム」が発動し、ヒーローたちが肩身の狭い思いをして過ごす世界が舞台となっていました。
Mr.インクレディブルの続編、『インクレディブル・ファミリー』が公開されたのは、14年後の2018年でした。
2008年 ダークナイトおよびアイアンマン
ダークナイトが公開された2008年。9.11からの中東への西側によるアンチ・テロ対策に対する反発などを招き、その結果として2004年にはイギリス他でも政権交代が起きるなど、多方面へのインパクトを残しましたが、そこからさらに数年後となります。
9.11に対する吹き荒れるような反発から何年もたち、果たして我々の正義とは何か?を問いかける『ダークナイト』は、全編を通じて文字通り「ダーク」な作品でしたが、アメリカではとてつもない大ヒット街道を驀進しました。
また、ケヴィン・ファイギ率いるマーベル・スタジオが『アイアンマン』も同じ2008年に公開されています。
2015年 アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン
2008年のアイアンマンの公開から、MCUの驀進が世界中の映画館を席巻する中、2015年に「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」でソコヴィアが破壊され、ソコヴィア協定が制定されることになりました。
これもスーパーな能力を持ったものは制限をかけなければいけない、という視点に支えられている作品です。
2017年 ワインスタイン逮捕
唐突ですが、2017年に衝撃のニュースがアメリカから飛び込んできました。超大物ワインスタインの逮捕でした。
この件については、あまり深く触れないことにしますが、
2019年 ザ・ボーイズ
ここでようやく、冒頭のテーマに戻ってくるわけですが、2017年の衝撃の出来事を踏まえて制作されたとしか思われないのが、Amazonプライムオリジナルの『ザ・ボーイズ』
『ザ・ボーイズ』とワインスタインの件を結びつけるものは多く、日本語で探してもいくつもヒットする。
『インビンシブル』は2003年から
さて、あらためて『インビンシブル 無敵のヒーロー』は、原作が2003年公開ということは、Smallvilleでカワチ洞窟やナマンとサギースの対立が放映されていた後で発表されています。
Smallvilleとインビンシブルの因果関係は不明ですが、そういう時代の空気が、アニメやアメコミドラマの制作者の創作意欲の引き金になった時代だったのだろうと思います。
そして、当時はコミックだったから画けていた内容が、『ザ・ボーイズ』のヒットにより、企画・制作がゴーになったんだろうと考えています。
そういう意味からも、『インビンシブル 無敵のヒーロー』は、ここ20年ぐらいのアメコミやドラマの流れを踏まえた上で、現時点での集大成的な作品と言えるでしょう。
『インビンシブル 無敵のヒーロー』。お勧めするかと言われると、結構グロなシーンもあるので、そういうので良い人なら、という条件付きでしょうか。
個人的には、『ザ・ボーイズ』も『インビンシブル』も、その裏にある出来事や設定が生々しすぎて、どちらも半分ぐらいしか見れていません。
しかし、『インビンシブル』に関しては、『Smallville」でも実験的に取り入れられたストーリー展開を踏まえて作られた部分もあると考え、私見としてまとめてみました。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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