Big Bang Theory S1Ep15 双子の妹が持つ遺伝子的可能性と3人の男たちの挑戦
本投稿タイトルは独自につけたもの。ドラマの正式なタイトルはこちら。
The Pork Chop Indeterminacy:美人すぎる妹の法則
ビッグバンセオリーを見ていて面白いなと思ったオタクネタで自分が知っているネタ、調べたネタをまとめておいておくために作ったものです。ざっくりとした背景はこちらもご覧ください。目次もかねて作成しています。
エピソードタイトルについて
今回のタイトル、前回のように日英タイトルが非常に近いということはなく、それぞれ全く別の視点で付けられているようにみえます。
「The Pork Chop Indeterminacy」。「ポークチョップの不確実性」。ハワードがユダヤ人には禁止されている豚肉を使ってラビをやっつけてユダヤ人以外の女性と結婚する、と発言するところからきています。ですが、本当にここしかでてこないですし、いつもの冒頭とオチのつながりもなし。
しかし、どうやらオリジナルタイトルは「The Shiksa Indeterminacy」で、アメリカ以外の英語圏での放送タイトルもこれになっているようです。
Shiksaってなんだ?ということなんですが、なんとユダヤ語でユダヤ教徒から見た異教徒の女性を指すのだそうです。英辞郎さんのすごいのは、「ユダヤ人にとって魅力的な女性」についての使い方まできちんと書いてあること。
このオリジナルタイトルからすると、「魅力的な女性の不確実性」ということになりますので、日本語の「美人すぎる妹の法則」というのは割と近いタイトルを付けたと言えると思います。
アメリカでは「Shiksa」をやめたのは、ユダヤ人が多いアメリカにおいては、侮蔑的に使われるニュアンスを理解する人が多いからかもしれません。これは憶測でしかありませんが。
あらすじ
シェルドンの双子の妹、ミッシーが友達の結婚式がディズニーランドで行われるついでにシェルドンの父親の遺産相続手続きなど、文書のサインやら近況確認を含めて、LAにやってくる。背も高く、あまりに魅力的なミッシーに他の3人はべたぼれ。女性と話せないラージも薬理学部での新しい薬の治験に参加して女性と話せるようになったおかげで、3人ともなんとかミッシーと付き合おうとするが...
冒頭のシーン
大学の廊下でレナードとラージが歩いてくる。レナードが「大型衝突型加速器によりブラックホールが生まれ、地球が消えるという学者もいる」とラージに説明している。ラージは彼らが意気地なしと言い、有名な「No Guts, No Glory」と応じます。
Raj: Psh, what a bunch of crybabies. No guts, no glory man.
大型衝突型加速器
レナードがラージに説明していたのは、2008年9月から稼働がスタートしたCERNの大型ハドロン衝突型加速器のことと思われます。
本エピソードのアメリカでの放送は2008年5月5日ですから、ちょうど科学界でも話題になっていたことでしょうし。
薬理学部の治験者募集
その二人が廊下の掲示板に貼られた薬理学部の治験者募集のチラシを見つけます。
Raj: We are testing a new medication for social anxiety, panic attacks, agoraphobia and obsessive compulsive disorder. Why would they be looking for test subjects here?
(字幕)「社会不安やパニック発作、強迫神経症への新薬の治験者」。なぜうちで募集を?
レナードが、「コミックストアには掲示板がなかったからじゃ?」と返事してましたが、やるつもりならいくらでも告知をするでしょうが、こんな営業妨害になりかねないチラシは貼らないでしょうね(笑
シェルドンのオフィスにいる美女は誰だ?
そうしてシェルドンのオフィスに来てみると、ハワードはもちろん、いつも見たことのない人までシェルドンのオフィスをのぞき込んでいます。
こんな感じ(笑
しかもハワードはこの女性を駐車場からつけてきたとか言い出す。さすがハワード。
シェルドンとこの女性が部屋から出てきそうになるや、蜘蛛の子を散らすようにいなくなるほかのメンバー。しかしいつもの3人は白々しいポーズで動かない。
結局、次のような会話でミッシーがシェルドンの双子の妹であることが判明します。
Leonard: So, how do you two know each other.
Missy: Oh, he once spent nine months with my legs wrapped around his head.
(字幕)9か月間、私の脚を頭に巻いてた。
Leonard: Excuse me?
Sheldon: She’s my twin sister, she thinks she’s funny but frankly I’ve never been able to see it.
(字幕)双子の妹だ。ちっとも面白いと思わないけど。
Missy: It’s because you have no measurable sense of humor, Shelly.
(字幕)ユーモアのセンスがないのよ。
Sheldon: How exactly would one measure a sense of humor? A humormometer?
(字幕)それって客観的に測れるの?ユーモア計測器で?
Howard: Well, I think you’re delightfully droll. Or as the French say, Très Drôle.
(字幕)ひょうきんな人だ。フランス語で言うと
ミッシーの発言ですが、原文では「ユーモアのセンスがない」ではなく、「測定可能なユーモアのセンスがないのよ」で、それを受けてシェルドンが「どうやって具体的に測定するの?ユーモア計測器?」となっています。
ミッシーとシェルドンの発言は「測定可能かどうか、どうやって測るか」ということで「ユーモア計測器」につながっているわけですが、字幕では長さの関係で難しいところ。シェルドン、とても早口なので文字で表示できる時間がとても短いですし。
ハワードは相変わらず、多言語でウザイ(笑
フランス語の「Très Drôle」は、下記のリンクで見ると「Very Funny」となっています。なるほど。
ここでミッシーが3人の名前を確認。自己紹介をしたハワードにレナードはアメリカ人の名前なのですぐに覚えたけれども、ラージ(ラジェシ)はもう一回、ミッシーが聞き返したところで、ラージ、寂しく退場。一度画面から消えるも、戻ってきて薬理学部の治験者募集チラシを一枚、とって去っていきました。
その後、ホテルに行こうとするミッシーをレナードが、「シェルドンの妹なんだし、うちに泊まれば?」と言ってハワードも同調。無理やり、自宅に連れ帰ります。
レナード、スーパーマンのパンツを乾燥機に忘れる
場所は変わってレナード達の自宅。
シェルドンはパソコンでなにやら作業をしていますが、レナードとハワードはミッシーからシェルドンの小さい時の話を聞いて受けまくり。
そこにペニーがドアを開けて入ってきて、レナードに忘れ物を届けに来ます。
Penny (knocking and entering, holding up a pair of superman undershorts.): Hey, Leonard, you left your underwear in the dryer downstairs.
(字幕)レナード 乾燥機にパンツ忘れてたよ。
面白いのは、この説明のところ。「a pair of undershorts」。日本人にとってはパンツやズボン、パジャマはそれ自体で一つ、二つですが、英語では足が二つ入るのでundershorts、trousers、pajamasと必ず複数になるところ。
trouserは単数形では「ズボンの脚の一方」と説明されています。
そして複数なのでパンツが一つやズボン一本は、「a pair of」と数えられるところ。パジャマは「pajamas」ですが、省略形すら「jammies」と複数形になってて、そこだけは絶対にブレない。
という日本人との計数感覚のちがいはおいておいて、いたたまれないのがレナード。なんせスーパーマンのパンツを、よりによってミッシーの前でさらされちゃった訳ですし。
ここでの言い訳も傑作。必死に自分が男性っぽいところをアピールするも、ミッシーに失望された様子をみて、さらにダメを押しちゃうレナード。
Leonard: Those are not mine.
(字幕)僕のじゃない
Penny: Really, they have your little name label in them.
(字幕)タグに名前が書いてあるけど
Leonard: Yeah, no, I do, I use those… uh… just to polish up my… spear-fishing equipment. I spear fish. When I’m not crossbow hunting, I spear fish.
(字幕)それは下着じゃなくて魚を突くモリを磨くのに使ってるんだ。
多趣味でね。(ミッシー、視線をそらす)狩りをしたり 魚を突いたり。
話題をそらすためにペニーにミッシーを紹介すると、案の定、似てない発言が飛び出しました。
Leonard: Uh, Penny, this is Sheldon’s twin sister, Missy. Missy, this is our neighbor Penny.
(字幕)シェルドンの双子の妹のミッシーだ。
Missy: Hi.
(字幕)ハーイ
Penny: Wow, you don’t look that much alike.
(字幕)全然、似,てない。
ラージ、内気を克服する新薬の治験者に選ばれる
その後、ラージが駆け込んできて、例の新薬の治験者に選ばれ投薬済み。ペニーとも素面で話せる最初の場面となり、ミッシーにもようやく、挨拶をします。
ただ、なんと副作用があって末端の筋肉(手や口廻りなど)を動かすと、その動作を繰り返してしまうようです。
ラージとハワードのダブル攻撃
というわけで女性ともめでたく話せるようになったラージ。素面のはずですが、空気を読まない発言を繰り出すのは酔っぱらった時と同じなのはどういうわけだろう?
やたらとインド人上げな発言をぶつけます。
ラージのウザイ発言録
ーミッシーの通う教会に来ているパテル医師を、会ったことないはずなのにいい人だと言う。
ーカーマスートラを「壮大な愛の書」と描写した上で、著者は我々(インド人)と言う
ーパジャマを着るか聞いたうえで、それもインド人の発明だが、お礼は結構だとのたまう
ラージ、マジでうざいっすね(笑
この途中でレナードが舞い上がっている場面もさしはさまれていますが、この二人のインパクトが強すぎるのでここでは割愛。そもそもアメコミ系のネタでもないですし(笑
ハーレーは「Hog」と呼ぶのか
ラージの攻めの会話の合間に、ハワードが「バイクは好き?ホグに乗ってるんだけど。」と自慢げに語りますが、これはラージからただのスクーターだろと暴露されて詰み。
Howard: Do you like motorcycles, ‘cos I ride a hog.
この部分、字幕ではハーレーに乗っていると書かれていますが、「Hog」は豚のはず。
ところが調べてみると、Hog=豚はハーレー・ダビッドソンの俗語でもあるらしく、「Hog for Sale」という販売サイトにずらっと並ぶハーレー・ダビッドソン。
あのずんぐりした形状と爆音が「Hog」を思わせるからなんでしょうか。
バイクに乗らないまでも、プチ知識としては面白い内容でした。
そして、ハワードが乗っているのはホグ=ハーレーなんかではなく、ただのスクーターと暴露されたうえに、ふだんは女性と話せないラージにまくられた勢いでてんぱったラージ、何を思ったか、「割礼はユダヤ人が始めた」とか、それ言っちゃうのかここで?な発言が飛び出します。
見るに見かねたペニーがネイルケアに行くけどどう?と誘いだし、ようやくまともな会話ができそうな相手を見つけて逃げ出すミッシー。
ここのやり取りが見事な韻を踏んでて、きっと脚本家の個性かと思います。ラージのパジャマのところから畳みかけるように続くのは見事。
Raj: We Indians invented them. You’re welcome.
(字幕)インド人が考案したんだ。礼は要らない。
Howard: Yeah, well my people invented circumcision. You’re welcome!
(字幕)割礼は僕らユダヤ人が。礼は要らない。
Penny: Missy, I’m going to go get my nails done. Do you want to come?
(字幕)ネイルケアを一緒にどう?
Missy: God yes. Thanks.
(字幕)助かった。ありがと。
Penny: You’re welcome.
(字幕)礼は要らない。
こういうのはやっぱり、エピソードを見ていただかないと伝わりにくいですよね。ペニーの「You're welcome.」のトーンが持つニュアンスとかは、しびれます。
この記事を書くために何度か見直しているのですが、このように同じセリフを畳みかける様に繰り返すことで笑いを生み出すタイプの脚本家のようですね。その代わり、ネタ要素は薄め。
脚本家を調べてみると、Lee Aronson & Bill Pradyとなっていますが、たぶんLee Aronsonの方かな。シーズン1のこれまでのエピソードでは、第4話、第7~9話にかかわっています。その中で筆頭に名前が挙がっているのが、第7話ですが、この時も膨大なネタを沢山盛り込むよりは、一つのネタが繰り返し使われていたように思います。
今回のケースでは、上で書いたような「You're welcome.」の繰り返し。
その後も、次のようなパターンが繰り返されています。
シェルドンと二人だけでの会話
・ラージとハワードがミッシーをめぐって争っている時に、レナードがシェルドンを部屋に呼んで個別に(in private)話をしようという
・シェルドンがレナードにチーズを食べられたら妹と寝ても良い、という場面でちょうど入ってきたミッシーとペニーが入ってきて聞かれてしまい、ミッシーがシェルドンと個別に(alone)話をしようという
これはシェルドンにわざわざこんなセリフを言わせています。
Sheldon: Why does everyone suddenly want to talk to me alone? Usually nobody wants to be alone with me.
(字幕)今日は2人きりが多い。いつもイヤがられるのに。
レナード、あちこちで「誰にでも過ちはある」
ラージやハワードがミッシーにふさわしくないとシェルドンに悟らせたのがレナードだったとばらされて、「シェルドンに吹き込んだのはお前か?」とハワードに詰め寄られた時。
シェルドンがチーズを食べたらミッシーと寝ても良い、という場面をミッシーとペニーに見られて、ミッシーとシェルドンが寝室に話に行ったあと、ペニーに無言の笑顔で窘められた時。
どちらも全く同じセリフで取り繕いました。
Leonard: We all make mistakes, let’s move on.
(字幕)誰にでも間違いはある。
この後も繰り返しは続くのですが、英語のタイトルのネタ回収のシーンがあるので、そこだけ先にやっちゃいます。
ネタの回収パート
エピソードの中間ぐらいなのですが、ネタの取り上げ方の順番からここでの説明となりますが、タイトル回収について。
繰り返しになってしまいますが、ラージやハワードがミッシーにふさわしくないとシェルドンに悟らせたのがレナードだったとばらされた時の話の展開が、このようになっています。
・シェルドン:君ら3人とも妹にふさわしくないと宣言。
・レナード:過ちは誰にでもあると言って話をはぐらかす。
・ラージ:遺伝子的多様性は強い子孫を生む。
ラテ(シェルドンの家系)にモカ(ラージ)を入れたら?と
説得しようとする。
※指先を振る動作をしているが、ここでは薬の副作用が出ていない。
シェルドンから薬がないと異性とも話せないことを忘れたか?と指摘され、「薬に注目しすぎだ」では再び、手の動作が止まらなくなっているのは、演出上のミスか、わざとそうしたのか
・ハワード:ユダヤ人がダメならラビを殺し改宗する
ここでラージのセリフはこんな風になっています。
Howard: Is it ‘cause I’m Jewish, ‘cause I’d kill my Rabbi with a porkchop to be with your sister.
ラビを単に殺すとは書いていませんね。「シェルドンの妹と一緒になるためならユダヤ教で禁止されているポークチョップで殺す」と言ってて、ここでポークチョップが出てきて英語のタイトル回収。
ただし、Porkchopがタイトルに入るのはアメリカだけで、他の英語圏の国では「The Shiksa Indeterminacy」となっているのは上述の通り。
アメリカのウィキペディアの記述でも併記されています。
さて、閑話休題。
あらためて同じような場面、セリフの繰り返しの話題に戻ります。
シェルドンが、ミッシーと付き合うのはミッシーの選んだ人と訂正した後
自然淘汰の法則(後述します)で勝ったレナードが最初にミッシーに口説きに行って轟沈。ハワードが次に行ってやはり轟沈。そして最後にラージが行きますが、ここも三連荘で繰り返されています。
ラージの投薬の副作用
この件については列挙しませんが、ラージが何か話す度にその時の動作を繰り返してしまう、という描写は何度も挿入されています。
間には手の動作だけでなく、笑い顔が直せないというものまである。
ラージがミッシーと話せない時の行動
さらにダメ押しで、一番最初にシェルドンの研究室でミッシーがラージに話しかけたときのラージの行動と、薬の力で女性と話せるようになったラージがペニーの部屋にミッシーを口説きに行ったあとの行動がまったく同じになっています。
薬のおかげで女性と話せていたラージの薬効が切れてしまったためですが、こんなに劇的に効いたり切れたりする薬があったらすごいですね。
順番が前後しましたが、シェルドンが最初は妹には手を出すなといって、手を出すならチーズを食べてみろとレナードに迫り、ミッシーにたしなめられてミッシーが選んだ人ならだれでもいいと訂正された後の男性たちの行動も見もの。
Wii Sports Boxingによる自然淘汰の法則
ミッシーがシェルドンと個別に話をして、自分が誰と付き合おうが口出すなということでタマまで蹴られて約束させられた結果、勘違いスイッチが入ってしまった3人は、実力で勝負!
ということで選んだのが、なんとWii Sportのボクシング。
レナードの役のボクサーがちゃんと眼鏡をかけて出てくるのは、もう笑いしかありません。
それにしてもさすがオタク。ありとあらゆるゲーム機を持ってますね。Nerdvanaは伊達じゃない!っていう感じでしょうか。
このボクシングで見事、ハワードをK.O.で片付け、意気揚々とミッシーを誘いに行きますが轟沈したのは上述した通り。
ひも理論とロケット・サイエンティスト
いよいよエピソードも終盤。ミッシーはどこに泊まったのかは分かりませんが、ともかくLAでの用事を済ませてテキサスに戻ろうとアパートの出口にての会話。
シェルドンが母親に何か伝えることはない?とミッシーに聞かれた時の答えがこちら。
Sheldon: Well, she might be interested to know that I have refocused my research from bosonic string theory to heteronic string theory.
(字幕)最近、ボゾンひも理論から混成ひも理論に転換した。
こんなの、シェルドンの母親が関心を持っているはずもなく、ミッシーも伝えるつもりはないので、「よろしく」とだけ言ってたと伝えることに。
別れの挨拶を握手で済ませようとするシェルドンに、「ハグぐらいしてよ」といってハグし、「(タマは蹴ったけど)兄のことは尊敬している」と語ったミッシーのセリフが、またシェルドンの怒りを招くことになります。
Missy: Yup, I’m always bragging to my friends about my brother the rocket scientist.
(字幕)兄はロケット・サイエンティスト(優秀な人)だって自慢してる。
ミッシーはロケット・サイエンティストが「すごい科学者」と思って発言しているのですが、シェルドンにとってはロケットを作るのはエンジニアで科学者ではなく、理論物理学こそ崇高と思っているわけです。
当然のように次のセリフは、自分は理論物理学者だ!そんな風に言われるならゴールデン・ゲート・ブリッジの料金徴収やってると言われた方がましだ!なんたる侮辱!と言って終わるのですが、この辺の超絶タカビーな意識もすごいものですね。
今日も長いネタ記事、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本エピソードで他に見落としているネタがありましたら、コメントいただけると嬉しいです。