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錆戦日誌11・とある整備工場

焼け焦げた装甲、歪んだ銃身。おびただしい戦いの傷跡を見て、整備士は大きく息をついた。

「どうしてこんなになるまで放っておいたんだか」

命を預ける商売道具なのだから、もう少し気を使ってもよさそうなものだが。どこから手をつけるべきか少し思案して、ひとまず装甲版を取り外すところから始めることにした。

「うわ、フレームもボロボロ。最近多いなあ、変な錆びたフレーム」

試作段階だったアサルト・フレームの換装希望が殺到した頃だったか。あれ以降よく見かけるようになった気がする。

「そういえばこの機体も申請が出ていたな。いやあ、こんな状態でよくここまで来たもんだ」

換装先はメディテート・フレーム。フレームそれ自体が思念制御識《祝福》と共鳴する、という技術的に実現可能なのか怪しい代物だ。こんなものを本当に作り上げてしまったうちの研究部門はどうかしているし、それをどこからか聞きつけてやってくるテイマーもどうかしている。

「そうなるとお前もお役御免か」

海の藻屑にならなかったことを喜ぶべきなのか、兵器として役割を全うできなくなることを悲しむべきなのか。

「戦争中でなければ、お前みたいな旧型でも活躍できるのかもしれないなあ」

たとえば遠い未来、未識別の脅威も去り、自身に与えられた世界を救うという役割からも解き放たれ、何らかの競技に用いられるとか。模擬戦でもレースでもいい。

「できれば俺が生きているうちに実現してほしいもんだ」

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