双子座
木の実星図。双子座です。
きらびやかな冬の星々の最後に昇って、β星ポルックスは大六角形の一角を務めます。
12月14日頃極大の流星群は、年間三大流星群の一つです。
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双子座。赤い実は万両。青い竜の玉のカストール・ポルックス兄弟は、六角文庫では寒山・拾得に変身。但し、1月下旬だけはジャンゴ・ラインハルト(23日生)・ステファン・グラッペリ(26日生)のジプシー・スイングのボヘミアン座となる。(Twitter 2016.1.23)
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星にまだそれほどのめり込んでいない頃、アトリエに初めて訪ねてきた客を送り出した時刻が、双子座流星群の極大に当っていました。寒い夜ではありましたが、話の名残に犀川の河原に下り立って、ふと見上げた空に流星が一つ走りました。歓声を上げる間もなく二つ目、三つ目と、頭上を立て続けに星が流れて、そのどれもが大粒で明るい。五、六個も見たでしょうか。あれ以上の流星ラッシュには、その後の双子群でも出会いません。2001年の獅子座流星雨を別にすれば、ペルセウス群で一度有ったか無かったかというくらいです。
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寒山と拾得は、古代中国の伝説の人物。隠棲の詩人と山寺の作男で、仲はすこぶる良くても双子ではありません。筆を持つ寒山と、箒を持つ拾得。二人に血の繋がりはなく、もっと濃い遥かなもので繋がっています。
古来文人に愛され、蕪村も大雅も若冲も二人を描きました。漱石は絵に、鴎外は小説に、芥川龍之介は俳句に短編に。近年では、榊莫山が軽妙洒脱に描いてみせました。
そんな寒山拾得が大好きで、小生も絵に描いたり、粘土で陶像に焼いたりしてきました。1990年の私家版詩集『星梵論』のあとがきには、
三月五日 月・木星、寒山・拾得二星(双子座)と共にある夜
と記してあります。どうやら星に打ち込んだ初期から、双子座α、β星にはそんなイメージを抱いていたらしい。α星…寒山、β星…拾得です。
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そのα星寒山の筆が、ステファン・グラッペリのヴァイオリンに代わり、β星拾得の箒が、ジャンゴ・ラインハルトのギターに代わって、厳冬期の双子座はジプシー・スイングの星座となります。共に一月生まれのボヘミアンがパリで出会って、世界に類のない素晴らしい音楽を生み出しました。この二人は訣別もしたけれども、再会もして、やはり音で結ばれた魂の双子であるでしょう。
一年で最も厳しい大寒の頃、身も心も硬く凍りそうな時に、かれらの弾むようなリズム、とろけるようなメロディで、春への峠を越えていきます。双子座は頭上高くに来て、夜々の旅を歌ってくれるのです。