初めての東京(東海道と別荘)
初めて上京した。
田舎に帰るのに特急券を買えない。
往復きっぷの復路分で帰ることにした。
普通列車を乗り継ぐのである。
海岸線が見えるように、左側に座った。
時々見える砂浜は、黒かった。
「京浜工業地帯だから黒い!」と思った。
沼津あたりも黒かった。
東京の人たちは、公害だらけの海水浴を楽しんでいる!
上京して働いても辛い景色しか楽しみがない!
お金持ちになり、鎌倉や熱海に別荘を構えても不幸だと可哀想だと勝手に同情した。
私の田舎には、綺麗な山河と海がある!
私の田舎は、水も澄み、空気も美味しい!
早くお家に帰りたい!
そう思いながら景色を眺めていた。
帰宅後、友人たちに、東京の人たちの海水浴はススまみれだと話した。
成績の良い友人に言われた。
「可哀想なのはお前だ!」
海岸の砂は、岩が砕け、流され、集まったものだと知った。
無知であることだけでなく、無知であることを友人の前に披露したことを恥ずかしく思った。
今は、友人が覚えていないことを願うばかりである。