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初めての上京(京急)

もう20年前になるだろうか、初めて羽田空港から京急に乗った。

私の田舎では、飛行機で東京に出るのは、モノレールに必ず乗ることを意味していた。

御多分に洩れず、モノレール利用を考えていた。

飛行機の中で、隣のおじさんたちが言っていた。

「京急は便利になった」

モノレールに恐怖感を持っている私には明確に聞こえた。

モノレールは空中を移動している。

しかも、線路を巻き込むようにして。

地震でも起こったら、列車ごと落ちると思っていた。

電車が立ち往生したら、高所から飛び降りるしかない。

こんな思いを持っていたので、モノレールは避けたかった。

かと言って、バス移動は高額である。

おじさんたちの言葉は魅力的だった。

「その意見に乗った!」

羽田で京急を探した。

亡くなった祖母が言っていた言葉を思い出していた。

「東京の人は田舎ん者を騙す」

古いトランクを抱え、怯えながら京急を探した。

空港カウンターのお姉さんに尋ねた。

「京急はどこですか?」

「京急ですか?」

「はい」

「○◇&△$#%€≦>」

お姉さんの前でカッコつけてしまった。

分かったフリをし、その場を去った。

難しいことを言って騙していると思った。

売店のおばちゃんに尋ねた。

「京急はどこですか?」

「京急ですか?」

「はい」

「○◇&△$#%€≦>」

こんな悪戦苦闘の末、やっと京急に辿り着いた。

田舎の言い伝え通りにしておけば良かったと反省した。

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