初めての上京
初めて上京した。
私の田舎では、飛行機で行くのはお金持ちと思われていた。
夜行列車で着いた。
京都あたりから寝られなかった。
所々で停車する。
動き出すとき、遊びのある連結部たちが、伝言ゲームのように力を伝える。
停車&発車の度に、微妙な揺れが生じる。
気持ちが良かったという人もいる。
田舎者の私には、不快であった。
田舎の夜は、ウシガエルや虫の鳴き声だけである。
何より目が覚める。
微妙な目眩も生じる。
おっちゃん達の酒席のザワメキが不快感を添えた。
夜が明けても、まだ静岡だった。
昨日夕方、乗車に持ち込んだ弁当とお菓子はすでに食べてしまった。
本を読むには目眩がする。
尻も痛くなってきた。
仕方なく寝た。
気がつくと周りが騒がしい!
「何かあったのですか?」
通路のおじさんに尋ねた。
「東京ですよ」
「?」
「東京ですよ」
優しいおじさんと思い尋ねた。
「東京タワーは見えますか?」
おじさんは少しだけ語気を強めて言った。
「終点です!」
「?」
「終点ですよ!」
「焼店は珍しいのですか?」
空腹の私には、焼売店を東京では「しゅうてん」というのかと思っていた。
おじさんは怒って何処かへ行った。
窓の外を見たら「東京」と書かれていた。
終点東京であることを初めて知った。
田舎者に見られたくない気持ちと、お上りさんしてしまっている自分を思い出すと今も恥ずかしい。