初めての上京(東京大学へ行った!?)
初めて上京した。
東京大学へ行ってみることにした。
お金がもったいないので、歩いた。
私の田舎では、「天才」しか行けないと思われていた。
東大へ行く人がいないのである。
本郷三丁目の交差点にやっと着いた。
ホテルの人の話では、本郷三丁目に行けばすぐ分かるということだった。
大学らしい建物は確認できない。
田舎者の内気さのため、とりあえず歩いた。
今にして思えば、人の流れについて行けばよかった。
救急車が通り過ぎた。
私の田舎では、救急車はほとんど通らない。
追って行きたい衝動に駆られた。
勇気を奮い起こして衝動を抑えた。
救急車について行けば東大病院であるが、想像だにしなかった。
そのまま歩き続けたら、下り坂になった。
学校は平地にあると思い込んでいた。
さらに歩くと繁華街に来た。
道行く人に尋ねた。
「東大はどこですか?」
「来た道を戻ってください!」
また坂を登るのかと嫌になった。
近道があるはずと思い右へ曲がった。
根津へ出た。
左手はまた坂のようだ。
さらに歩いた。
千駄ヶ谷に出た。
また道行く人に尋ねた。
歩いてきた道の特徴を答えたら呆れられた。
今度は地図をもらった。
行きたいのは安田講堂である。
歩いていると「東大前」があった。
あと少しと思い頑張った。
そしてキャンパスに入った。
そこは静かだった。
銀杏もある。
ココだと確信した。
満足感に浸った。
写真を撮った。
田舎に戻ったら「威張れる」と思った。
意気揚々とホテルに戻った。
遠回りしたことなど、いい思い出にしようと思っていた。
田舎に戻り、現像した。
友達に写真を見せた。
友達の一人が「何か違う」と言い出した。
しかし、誰も真実はわからなかった。
真実は、農学部の校舎を安田講堂と思い込んでいたのである。
恥ずかしい!
友人たちは、この真実を未だに知らない。