ポストコロナに向けての資金繰
[要旨]
事業活動に新型コロナウイルス感染症の影響を受けた会社の多くは、コロナ関連融資の利用によって、当面の資金繰は安定が見込まれるものの、これからは計画的な活動によって業況の回復に注力して行かなければ、コロナ関連融資の返済が始まるときに、予定通りの返済ができなくなる懸念が生じることになります。
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先日、ある税理士の方とお話をしたのですが、顧問先の方の多くは、セーフティネット保証などの利用によって、金融機関から円滑に融資を受けることがでているそうです。その結果、新型コロナウイルス感染症の影響で、売上や利益が減っていても、当面は事業は継続できるようになっているそうです。しかし、そのことによって、経営者の方が安心してしまい、事業活動を元のように回復させるための活動が、遅れ気味になっているようにも思われるということです。
コロナ関連融資は、コロナの影響を受けた会社の事業活動が停止しないよう、金融機関側が、融資を申し込んだ会社側によりそった対応が行われているようです。そのため、ここ3か月間余りの状況を見ていると、コロナ関連融資を受けるために苦心している会社は、あまり多くないようです。そして、このような非常時においては、金融機関側のそのような対応は妥当であると思います。
ところが、これは、コロナ関連融資制度の整備が始まった時点から指摘されていたことですが、コロナ関連融資は、会社の手元資金を潤沢にはするものの、将来は、返済しなければならないものです。したがって、融資をすることは、簡単に言えば、会社の「延命」をしているに過ぎないので、本当の意味で会社を助けていることにはならないということが指摘されていました。そこで、返済をしないでよい融資、すなわち、永久劣後ローンを、政府は中小企業に供給すべきだということを主張をする有識者もいるようです。
私は、このような考え方は、100%間違っているとは思いませんが、その是非はともかく、現時点では、コロナ関連融資は、将来は返済するという前提での契約になっています。そこで、コロナ関連融資によって資金繰が安定した会社は、次は、融資返済のスケジュールに合わせて、自社の事業回復に全力を注がなければなりません。このことも、極めて当然なのですが、やはり、普段から会社の「数字」を見ている会社と、そうでない会社では、コロナ融資の返済が始まるときになって、対応が分かれることになると思います。
もちろん、経営環境は、引き続き厳しい状態が続くと思われますが、そうであっても、事業計画、返済計画をこまめにチェックしている会社は、予定通りか、または、それに近い状態で融資を返済できるようになると思います。一方、大雑把にしか数字を見ていなかったり、成り行きでしか事業を管理していない会社は、コロナ関連融資の返済が始まるときになって、再び、新たな融資を申し込むことになったり、リスケジュールを依頼することになるでしょう。
すなわち、コロナ関連融資で、当面の資金繰の目処がついた会社は、そこで気を抜かずに、業況の改善、融資の返済に向けて、引き続き計画的な活動に取り組んでいくことが必要です。経営環境が厳しい状況が続く中にあっては、その計画が達成できるかどうかという問題もありますが、まず、計画の達成のために活動しようという姿勢が大切だと思っています。なお、前述の、永久劣後ローンの是非については、また、別の機会に述べたいと思います。