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制約理論とスループット会計

[要旨]

制約理論は、製造業の工程全体の効率化を図ろうとする理論であり、財務会計では発見が困難なボトルネックとなっている工程を、スループットの測定によって見つけ出すことで、工程全体の効率化を図ることができます。


[本文]

今回は、スループット会計について説明します。スループット会計は、製造業などの工程の効率化を図ることで利益を最大化しようとする考え方である、制約理論(Theory of Constraints、TOC)と深いかかわりがあります。ちなみに、TOCは、ベストセラー小説の「ザ・ゴール-企業の究極の目的とは何か」によって多くの人に知られるようになりました。

このTOCでは、スループット(Throughtput)という概念を用いており、これを最大化しようとすることを目的にしています。スループットとは、「売上高-真の変動費(直接材料費など)」という式で表されます。この式の「真の変動費」とは、製品の生産に直接関連する費用のことで、製品を生産してもしなくても発生する費用は含みません。したがって、スループットは、製品が販売されることによって得られるお金ということになります。

では、なぜ、スループットの量を重要視するのかというと、それは、生産工程全体の最適性を測るための指標だからです。というのは、製品が完成(販売)されなければ、スループットは得られませんが、この「製品が完成(販売)されなければ」を言い換えると「未完成の在庫を多く抱えている状態では」ということです。工程ごとに生産能力を高め、各工程の生産量を増加させたとしても、必ずしもスループットが増加するとは限りません。全工程を通して生産量が増加して、初めてスループットも増加するのであり、これがTOCの基本的な考え方でもあります。

ところで、本旨からそれますが、従来の財務会計では、製品の製造をするために費用が発生しても、それは、いったん、棚卸資産として資産に計上されます。この会計処理が誤っているわけではないのですが、このような会計上の手順があるために、製品が売れなくても、見かけ上は、赤字が少なくなってしまうという短所があります。でも、スループット会計では、売上を基準にスループットがいくらかを算出しているので、費用が資産に隠れてしまうという、財務会計の短所を解消できることも、特徴のひとつになっています。

話をもどして、スループットを増大させる手法を、具体例で見てみましょう。ある工場には工程が3つあり、それぞれ、工程1の作業員数は10人、1日の生産量は600個、工程2は10人、540個、工程3は15人、480個であったとします。この3つの工程では、工程3がボトルネック(Bottleneck、瓶の首という意味で、スループットを増加させようとするときの制約となっている部分)となっています。

そこで、各工程の作業員数を見直し、工程全体の最適化を行い、工程1は8人、480個、工程2は9人、480個、工程3は15人、480個とすることで、ボトルネックは解消します。さらに、工程1・2は生産能力に余剰があるため、作業員数を増やすことで、スループットを増加させることができます。

すなわち、工程1は9人、540個、工程2は10人、540個、工程3は17人、540個とすることで、ボトルネックがなく、かつ、生産能力を最大限に活用することができます。このように、スループット会計では、財務会計からのアプローチでは難しい効率化を実現する方法として有効です。(この記事は、理解を容易にするために、一部、説明が不正確になっているところがありますことをご了承ください)

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