製造業の工員の賃金は変動費
[要旨]
製造業の工場で働いている工員の賃金は、雇用契約によって、売上高とは直接的に関係なく、固定的に支払われていますが、管理会計の考え方からは、工員の賃金は、変動費としてとらえています。それは、工員の賃金は、製品ひとつひとつに配賦(賦課)され、販売された時点で原価に計上されており、売上高に比例して費用となっているからです。
[本文]
今回も、早稲田大学ビジネススクールの西山茂教授のご著書、「『専門家』以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書」から、私が気づいた点について述べたいと思います。前回は、CVP分析の観点から、会社が利益を得るには、売上高を増やす方法だけでなく、固定費を減らすという方法があり、そのためには、実際に固定費を減らすだけでなく、現状の設備で売上高を増やすといった、実質的な固定費減少などの工夫も大切であるということを説明しました。今回は、製造原価について説明します。
製造原価については、改めて説明するまでもありませんが、製造業で製品を製造するための費用のことです。では、この製造原価に含まれている、工員の賃金は、固定費と変動費のどちらでしょうか?パートタイマーは、勤務時間に合わせて時給が支払われるので、変動費と考えることができますが、正社員の場合、残業代以外は、雇用契約によって、勤務時間とは直接的な関係なく、決められた給料が支払われるので、固定費と考えることができます。
ただ、管理会計の観点からは、正社員の給料も含め、製造に要した費用は変動費として考えています。これは、標準原価計算によって原価を計算すると、その考え方を理解することができます。繰り返しになりますが、正社員の給料は、雇用契約によって固定的になっているものの、製品に賦課(または、配賦)することによって、変動費にしています。別の言い方をすれば、製品が1つ販売されたときに売上原価(≒製造原価)として費用計上される、その製品ひとつあたりの原価の中には、製造に携わった工員の賃金が含まれています。したがって、その売上原価は製品の販売数に比例するので、変動費ということになります。
ちなみに、製造原価には、工員の賃金だけでなく、工場の減価償却費、機械のリース料など、直接的に売上とは比例せずに発生する費用も、賃金と同様に、管理会計では変動費として考えます。今回の説明は、理解を容易にするために、正確な説明とはなっていないことをご了承ください。また、今回の説明だけでは、内容がよく理解できないという方もいるかもしれませんが、そのような方は、拙著、「図解でわかる棚卸資産の実務いちばん最初に読む本」などをお読みいただき、標準原価計算について学んでいただければと思います。
2022/5/10 No.1973