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財務会計、管理会計、ファイナンスの一体化

[要旨]

財務会計、管理会計、ファイナンスは、現在は、お互いにそれぞれの考え方を採り入れるようになってきています。それは、現在の経営環境が複雑化してきていることにともない、より、精緻な情報が必要とされてきているためです。したがって、経営者の方は、会計をより活用できる能力が求められてきています。

[本文]

今回も、早稲田大学ビジネススクールの西山茂教授のご著書、「『専門家』以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書」から、私が気づいた点について述べたいと思います。前回は、経営に関する数字の分野には、大きくアカウンティングとファイナンスの2つがあり、アカウンティングは業績を外部に報告するための財務会計と、経営者が意思決定するための管理会計に分かれ、そしてファイナンスは、投資家の視点から会社の業績を分析することであるということを説明しました。今回は、財務会計、管理会計とファイナンスが一体化してきているということについて西山先生が説明していることをご紹介します。

「ファイナンスの代表的な考え方の1つに、企業価値や株主価値の評価に使われるDCF法がある。この方法では、企業価値や株主価値を、企業が事業を中心に、将来、生み出すと予測されるキャッシュフローを、現時点の価値に割り引くことで計算して行く。このDCF方が、財務諸表を作成する財務会計の中で、最近、よく話題になる減損会計などで使われている。減損会計とは、土地や建物、機械といった有形固定資産や、M&Aの際に発生する無形資産の評価額である「のれん」が、過去の財務諸表に記載されている金額(簿価)よりも大幅に下がってしまった場合に、その価値の下落を認識するものである。

その『価値の下落』を評価する方法としてDCFが使われているが、これは、ファイナンスと財務会計の一体化の例である。また、外部へ報告する財務諸表に含まれている事業分野別、地域別の業績を表すセグメント情報は、社内の経営管理で活用している区分で集計されている。これは、社内の経営経営管理の区分をベースに、外部への報告を行なっていこうという、管理会計と財務会計の一体化の一例である。

さらに、社内の経営管理の中でも、M&Aや事業投資、設備投資の案件の評価の中で、ファイナンスの手法が使われている。具体的には、そのプロジェクトでいくら儲かるかによって評価するNPV法や、年平均で何%儲かるのかで評価するIRR法といった、ファイナンスの考え方が使われている。これは、管理会計とファイナンスの一体化の例である」この、西山教授の説明する、「財務会計、管理会計、ファイナンスの一体化」は、経営環境が複雑化している時代においては、経営者、投資家、その他の利害関係者は、伝統的な財務会計の情報だけでは、意思決定を行うには不十分であるということの現れだと思います。

ちょっと厳しい言い方をすると、かつては、事業が儲かりさえしていれば、経営者の方が会計のことにあまり詳しくなくてもよかったということはありましたが、いまは、経営環境が複雑であるため、経営者自身が会計的な知識を駆使しなければ、適切な判断をしたり、投資家や銀行などの協力者を説得できなくなっているということです。会計は、単なる取引の記録ではなく、事業を適切に行うための有益な情報を得るものであり、また、協力者を説得するための材料であるという認識を持たなければなりません。

2022/4/15 No.1948

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