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事業再構築補助金の根抵当権問題(1)

[要旨]

現在、申請を受け付けている事業再構築補助金で、建物を建てるときで、その敷地に根抵当権が設定されているときは、建物を追加担保としない旨が確認できることが求められます。具体的には、根抵当権の変更契約書を差し出すことになると考えられますが、そのような契約は、担保の実効性が失われるので、ほとんどの場合、銀行は応じないでしょう。


[本文]

10月28日に、事業再構築補助金の第4回公募が開始され、それにともない、新たな公募要領が公表されました。その公募要領には、第3回公募までの公募要領には書かれていなかった、根抵当権に関する説明が加えられていました。「根抵当権が設定されている土地に建物を新築する場合は、根抵当権設定契約において、建設した施設等の財産に対する追加担保差入条項が定められていないことについての確認書を交付申請時に提出する必要があります」

この、「建設した施設等の財産に対する追加担保差入条項が定められていないことについての確認書」(以下、単に、「確認書」と記します)とは、具体的に、どのような書類を想定しているのかは、はっきりとは分かりません。まず、事業者の土地に設定されている根抵当権は、多くの場合、銀行が権利者として契約されているものと思いますので、それを前提に説明すると、銀行と結ぶ根抵当権契約書では、契約後に、担保の土地に建物を建てたときは、土地の所有者に対し、その建物も担保に加えることが求められています。

一方、確認書とは、建物を担保に追加することが定められていないことを確認できる書類という意味と思われますので、それから考えられることは、いったん、契約した根抵当権設定契約書について、建物を追加することを求める条項は無効にする旨の変更契約を行った書類を示せば、補助金事務局の求めるものになると、私は考えます。しかしながら、銀行からみて、建物が建っている土地を担保にするとき、土地だけしか担保にできない場合、担保を処分するときに制約を受けることから、担保としての価値が極めて低くなります。

すなわち、前述のような変更契約を行うことは、銀行にとっては根抵当権契約を、ほぼ、意味のないものにすることになり、根抵当権を解除するに等しいことになると言えます。したがって、補助金の申請者が、銀行に対して、前述のような変更契約を打診したときは、まず、それに応じないか、もし、応じるとすれば、変更契約に応じるのではなく、根抵当権の解除に応じるということになると考えられます。ただし、補助金事務局が、「確認書」を求めることについては、もっと、根本的なところで誤謬があると考えられますので、それについては、次回、説明します。

2021/10/30 No.1781

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