ライバルと自分の成功を祈る
[要旨]
ライバルの存在は、一般的には煙たいものですが、お互いが張り合うことで、事業の質を高めることができる存在でもあり、それは、やがて業界に対する顧客からの評価を得ることにもつながるので、ライバルにも成功してもらうことを歓迎するという姿勢を持つことが望ましいでしょう。
[本文]
先日、弁護士の谷原誠さんのメールマガジンを読みました。谷原さんによれば、2005年に行われたゴルフのアメリカンエクスプレス選手権の最終日のプレーオフで、相手がパットを外せば自分の優勝が決まるという場面で、その相手がパターを打った瞬間、それを見ていたタイガーウッズ選手は、対戦相手のプレーであるにもかかわらず、「入れ!」と念じたそうです。
なぜ、ウッズ選手が、相手のパットの成功を祈ったのかというと、もし、ウッズ選手が念じたこととは逆に、相手のパットが外れて、ウッズ選手の優勝が決まるので問題はないし、ウッズ選手が念じた通りにパットが入ったときは、望んだとおりの結果であり、落胆することなく、次のプレーもポジティブに臨むことができるからということのようです。
そして、谷原さんは、このような考え方はビジネスにも通じ、ライバルの失敗を祈ってばかりいると、自分のビジネスにもネガティブな影響を受けるので、「他人が成功し、かつ、自分も成功するのが最高だ」という考え方を持つべきだとご指摘されておられます。これは、以前、私が言及したこともある、コーペティション経営にも通じる考え方だと思います。すなわち、ライバルは、自分にとって強力者にもなり得る可能性があるという考え方です。
そして、タイガーウッズ選手の逸話を読んで、私がもうひとつ気になったことは、仮に、ライバルが失敗し、その結果、自社が競争に勝ったとしても、それは、自社の能力が高まることにはならないということです。例えば、かつてのソニーは、技術の独自性で業績を高めて来ましたが、業界のトップグループに入ってからは、業績があまり振るわなくなりました。とはいえ、ソニーの業績不振が、ライバルが減ったことだけが理由ではないと思いますが、かつての業界のパイオニア的な存在のときの勢いがなくなったという面では、ソニーにとってのライバルの存在は、ソニーの成長の原動力にもなっていたのではないかと、私は、考えています。
私も、Podcast番組で露出を高めようとしていますが、最近は、新たな番組の配信者が増えてきて、私の番組は、ますます埋没しそうになっています。でも、そのような状況にあって、埋没しないように努力することで、お互いの番組の質なども高まり、結果として、耳を傾けようとするリスナーが、増えてくるのだと思います。ですから、正直なところ、Podcast番組のライバルは増えて欲しくないところなのですが、タイガーウッズ選手のように、Podcast番組のライバルも、番組の質を高め、たくさんのリスナーが増えて欲しいと願うようにしたいと思います。
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