在庫管理と死蔵品・滞留在庫
[要旨]
事業活動を行うと、どうしても売れ残る在庫が発生してしまいますが、それらは、死蔵品や滞留在庫と呼ばれ、在庫品を仕入れた後も、損失が大きくならないよう、適宜、管理することが必要です。
[本文]
前回は、在庫を持つことが収益機会を増やすことになる一方で、判断を誤ってしまうと、仕入れた商品が売れなくなるため、損失になってしまうということを説明しました。しかし、現実的には、売れ残りをなくすということは、ほぼ、不可能です。逆に、売れ残りを出さないようにすることは、かえって、在庫が少なくなり過ぎてしまい、会社の事業の収益機会を減らしてしまいかねません。
これは、乱暴な言い方ですが、ある程度の売れ残りが出るくらいの在庫を持つことの方が、結果として、多くの収益をもたらすことになると、私は考えています。だからといって、むやみに在庫を増やしてもよいということにはなりません。収益機会を減らさないように在庫を維持しながら、売れ残りも最小限にするように、バランスの取れた在庫量を目指すことが、経営者の能力の問われるところであり、在庫管理の目的でもあります。
そして、今回は、売れ残りの在庫について、簡単に説明します。ひとつめは、死蔵品(デッドストック)です。これは、販売実績が、販売見込みよりも少なかったときに売れ残る在庫です。したがって、死蔵品は、販売見込みの精度を高めることで減らすことができますが、それだけでなく、在庫状況を、適宜、把握しておくことで、値下げによる販売など、早期の対応をすることによって、損失を減らすことも可能になります。
もうひとつは、滞留在庫です。これは、決して売れないわけではないのですが、販売の頻度が少なく、長期間、倉庫などに留まっている在庫です。なお、「長期間」というのは、どのような商品を販売しているのかということによって異なるのですが、直近の販売が6か月前や1年前であれば、滞留在庫と考えてよいでしょう。滞留在庫は、必ずしも、すべてが問題となる在庫とは限らないのですが、他の商品と比較して販売頻度が低いため、効率性も悪い在庫です。
したがって、そのような在庫が増えることは、事業全体の効率性を下げることになりますので、これを増やさないよう、在庫品ごとの販売頻度を、適宜、管理することも大切です。もし、滞留在庫が増えてきた場合は、その在庫は、新たに発注しないようにするなどの判断が必要になるでしょう。今回は、死蔵品と滞留在庫について説明しましたが、在庫は、仕入れた後も、問題となる在庫になっていないか、適宜、管理することが大切ということです。