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過剰な売掛金はリスクが高い

[要旨]

売掛金が多い会社は、回収もれや遅延が起きると、収益や資金繰に大きな影響を与えるため、事業の継続はとても難しくなります。したがって、売掛金が過剰にならないよう、管理することはとても大切です。


[本文]

神奈川県相模原市にあった、半導体製造装置メーカーのエフオーアイが、平成21年に東証マザーズに上場した直後に、100億円を超える粉飾決算が発覚したということがありました。すでに、同社の役員らは、金融商品取引法違反の判決が確定していますが、先日、株主らが上場の準備を進めた主幹事のみずほ証券に対して賠償を求めていた裁判について、最高裁判所がみずほ証券に賠償責任があるという判決を言い渡しました。

私は、この裁判については、報道から得られた情報しかわからないのですが、エフオーアイの決算書を見ると、とても正常な会社ではないということがわかります。同社の、平成21年4月から9月の6か月間の売上は、約49億円ですが、9月の売掛金の額は、約248億円です。もし、このような会社が、銀行に融資の申し込みをしてきたとすれば、承認をする銀行はないでしょう。なぜなら、半年間の売上の5倍の売掛金がある会社はリスクが大きいからです。このような状態では、少しでも回収もれや回収遅延があれば、会社の収益に大きく影響し、倒産する危険性が高いと言えるでしょう。

同社は、粉飾をしていたので、この決算書は、実際の状態を示すものではないのですが、このような多額の売掛金のある会社の事業は、成立すると考えることはできません。ちなみに、エフオーアイの実際の年間売上は、3億円だけだったそうです。私が、今回、エフオーアイに関して取り上げたのは、仮に、同社が粉飾をしていなかったとしても、決算書からは、早晩、事業が行き詰るであろうということが、十分に分かるものであったのに、証券会社は、なぜ、上場させようとしたのか、とても不思議だったからです。

これは私の想像ですが、証券会社の従業員は、もちろん、功名心もあったと思いますが、それだけでなく、会社の上場を、手続きとしか見ていなかったのだと思います。本当は、株式の上場による資金調達の支援を通して、事業の発展に資する役割を、証券会社は担うはずですが、そもそも、どのような会社が発展するのかということを見抜く能力を、証券会社は持っていなかったのでしょう。そして、最高裁判所の判断も、妥当と言えるものですので、この判決を機会に、日本の証券会社には、会社を見る目を持って、上場支援を行っていただくようになってもらいたいと思っています。

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