リース会計基準とリース資産
[要旨]
リース会計基準によれば、リースを利用した場合、リース料総額の現在価値を「リース資産」という勘定科目で資産に計上します。しかし、中小企業等では、リース会計基準を義務付けられていないので、リースを利用しても、リース資産を計上していない場合があります。このように、会計基準を適用するかどうかで、資産の額が異なることになることに注意が必要です。
[本文]
今回も、早稲田大学ビジネススクールの西山茂教授のご著書、「『専門家』以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書」から、私が気づいた点について述べたいと思います。前回は、貸借対照表上の有形固定資産の価額は、会計的な手続きである減価償却によって計算されているものであって、必ずしも、資産の時価などを反映しているものではないということを説明しました。今回は、西山教授は、直接的に言及はしていませんが、貸借対照表に関する注意点として、リース資産について説明します。
リースは、融資と同様に、会社が機械・設備などを調達するための手段として定着してきていますが、リース会計基準にしたがえば、リースを利用したときは、リース料総額の現在価値を、「リース資産」という勘定科目で資産に計上します。(このとき、リース資産と同じ金額を、「リース債務」という勘定科目で、負債に計上します)
リース契約は、法律的には賃貸借契約であり、リース物件はリース会社に所有権があるのですが、会計上は、融資を受けて機械・設備を購入したときと同様に取り扱います。なぜなら、リース(会計上の分類である、所有権移転ファイナンスリースの場合)は、次のような特徴があるからです。ひとつめは、リース物件は、前もって、リース会社が所有しているのではなく、ユーザーの指定に基づいて、リース契約を行う直前に、リース会社がリース物件を購入するからです。
2つめは、リース契約は解約できない(契約上、解約できる場合であっても、違約金などによって、ユーザーが、残りのリース期間のリース料の合計額の相当額以上を負担することになっている場合も含む)ことになっており、レンタルなどとは異なり、最終的に、リース会社がリース物件を賃貸するために必要な費用の全額の相当額を、ユーザーが単独で負担することになっているからです。
3つめは、賃貸借物件は、一般的には、賃貸借物件の所有者が管理したり修理したりしますが、リース物件については、リース契約によって、ユーザーが管理や修理を行うことになっているからです。これらの理由から、リースによって調達した機械や設備は、会計上はユーザーの資産として計上することが妥当であるということをご理解できるでしょう。
ところで、このリース会計基準は、会社法上の大会社と、上場会社(連結子会社等を含む)には義務付けられていますが、それ以外のいわゆる中小企業は、リース会計基準を義務付けられていません。そのため、ほとんどの中小企業では、リースを利用しても、リース資産を計上せず、リース料を費用計上しているだけです。(ただし、リース会計基準に従っていない会社であっても、リースを利用している場合は、残りのリース料を、「未経過リース料」として、貸借対照表の欄外に記載することになっています)
私は、中小企業であっても、リース会計基準に従うべきと考えていますが、それはともかく、リース会計に従っている会社では、リース資産が貸借対照表に計上され、そうでない会社は、リース資産は計上されないことから、単に、リース会計基準に従っているかどうかで、資産の額が変わってしまうことに注意が必要です。そこで、仮に、私が銀行の融資審査をする立場にあれば、リースを利用している会社で、リース会計基準に従っていない会社に対しては、その会社の未経過リース料を資産に加えて財務分析を行うでしょう。
2022/4/22 No.1955