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サービサーへの債権譲渡と債務免除益

[要旨]

銀行が自社に対する融資をサービサーに買い取らせれば、全額を返さなくてすむようになることがあります。それによって得られた利益は債務免除益となりますが、自社は大きな信用を失い、事業の継続が困難となります。したがって、自社の信用を失わないよう、融資は全額を返済することが、ビジネスの基本です。


[本文]

先日、会社経営者の方から、「銀行がサービサー(債権回収会社)に融資を買い取らせれば、全額を返さなくてすむようになるのか?」という質問を受けました。それへの回答は「その通り」というものです。銀行は、融資相手の業績が悪化すると、その会社への融資の回収の見込みが低くなったと判断し、「帳簿上」の金額を減額します。例えば、1億円の融資の回収の見込みが少なくなったので、その融資の帳簿上の金額を、1,000万円に下げたとします。この場合、銀行は、帳簿上は9,000万円の損失(貸倒)を計上したことになります。

次に、銀行が、サービサーに、1億円の融資を、帳簿上の金額の1,000万円で買い取ってもらったとします。これにより、銀行はサービサーから1,000万円を受け取り、サービサーは銀行から、額面1億円の融資を受け取ります。しかし、もともと、銀行が回収の見込みが低いと判断した融資ですから、サービサーも融資相手から1億円を返してもらおうとは考えません。そこで、「1,500万円を返してくれれば、1億円の融資については、もうそれ以上、返さなくてもいいですよ」と融資相手の会社に提案し、1,500万円だけを受け取ります。

こうすることによって、サービサーは、銀行に支払った1,000万円よりも500万円多くの回収金を受け取ることになり、その500万円がサービサーの利益になります。また、融資を受けていた会社も、1億円全額を返済せずに、1,500万円だけを返済すれば済みます。ここまでの説明を見れば、融資を受けている会社にとってはありがたいことのように感じられるかもしれません。

でも、実際には、そんな甘い話はないということは、それほど多くの説明は要らないでしょう。「借りたものは返すべきだ」という道徳的な観点からの批判は除いたとしても、「銀行融資の85%を返さなかった会社」は、銀行以外の会社や人々からの信用も失い、正常な事業活動は継続できなくなるでしょう。場合によっては、オーナーでもある経営者は、経営者や株主の地位を失うこともあります。

もうひとつ注意が必要なことは、1,500万円を支払っただけで1億円の融資の支払いを免除されたときは、差額の8,500万円は、会計上はその会社の利益(特別利益の債務免除益)になります。たとえ、銀行が1億円の融資の帳簿上の価値を1,000万円に減額していたとしても、契約上は融資相手に1億円を請求できる(融資を受けている会社から見れば、1億円を支払う義務がある)ことに変わりはないため、このような会計処理が行われます。

そして、この8,500万円の利益に対して課税されることがあります。実際の課税額はケースバイケースで異なりますが、仮に実効税率が約30%で、債務免除益8,500万円全額が課税されるとすると、その額は2,550万円となり、サービサーへ支払った金額よりも多くなります。

さらに、債務免除益を得たといっても、現金を受け取っているわけではないので、納税資金を捻出するために、さらに自社の資金繰を苦しくしてしまいます。したがって、銀行の融資をサービサーに買い取ってもらうと、融資の返済額は少なくなることがありますが、それ以上の損失が発生することになると考えるべきといことになります。

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