銀行の無店舗化
[要旨]
銀行は、営業店の機能を縮小し、将来的には無店舗化を進めていることから、融資を利用している中小企業は、これからは、銀行からの支持を強めるためのアピールを強めていく必要性が高まっています。
[本文]
先日、日本経済新聞に、茨城県水戸市に本店のある地方銀行の常陽銀行が、「機能別に店舗を再構築する」という記事がありました。銀行店舗に関するこのような傾向は、もう20年くらい前から行われています。そして、記事としては、「店舗の再構築」という内容になっていますが、最終的な目標は、銀行の店舗をなくすことです。
銀行の業務は、預金、融資、為替(決済業務)、付随業務(クレジットカード、投資信託など)ですが、いずれの業務も利益を得にくくなってきています。そして、物理的な店舗とセットで考えれば、法人向け融資、住宅ローン業務、富裕者層向け資産運用を除けば、採算はほとんど得られない状況です。したがって、現在は、すべての業務を行う「フルバンキング店舗」を減らしているということのようです。
このような状況を踏まえて、今後、中小企業がどのような影響を受けるかというと、恐らく、融資業務については、民間金融機関も、現在の日本政策金融公庫のように、融資受付専門部署でのみ融資を受け付けるというようになると考えられます。そうすると、現在は、預金を預け入れるために銀行に行ったついでに、融資担当者にも業況を伝えるというようなことができなくなり、融資を受けている側から意識して自社の状況などを伝えに行く必要性が、高まっていくと思います。
現在、上場会社は、自社に対する支持を得るために、投資家に向けてIR(Investor Relations、投資家向け広報活動)を積極的に行っています。中小企業にとっては、投資家ではありませんが、自社に対する重要な資金供給者である銀行に対して、自社のことを積極的にアピールすることが、銀行の店舗再構築が進むにしたがって重要になりつつあると、私は考えています。