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[要旨]

製品の製造費用は、製品と原価の関係が直接的である直接費と、製品と原価の関係が直接的でない間接費に分けられます。財務会計では、間接費を、時間や面積などによって製品に賦課しますが、この方法では経営判断を正確に行うことができないため、それを補うために、活動基準原価計算が使われます。

[本文]

今回も、早稲田大学ビジネススクールの西山茂教授のご著書、「『専門家』以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書」から、私が気づいた点について述べたいと思います。前回は、製造業の工場で働いている工員の賃金は、雇用契約によって、売上高とは直接的に関係なく、固定的に支払われていますが、管理会計の考え方からは、工員の賃金は、変動費としてとらえているということを説明しました。今回は、活動基準原価計算(Activity Based Costing、ABC)について説明します。

ABCとは、西山教授によれば、「どの製品のコストであるのかがわかりにくいコストである間接費を、できるだけ適切に割り振り計算をすることによって、正しい原価計算をするための考え方」です。この間接費は、直接費との比で考えると理解しやすいと思います。直接費は、「コストと製品との関係が直接的で、どの製品のコストであるのかが明確にわかるコスト」であるのに対し、間接費は、「コストと製品との関係が間接的で、どの製品のコストであるのかがわかりにくいコスト」のことです。

具体的には、自動車メーカーを例に説明すると、自動車の部品の仕入代金は、コストと製品の関係が明確で直接的ですが、工場の照明や冷暖房費などの光熱費や、工場の維持費などは、製品の製造に必要なコストではあるものの、個々の製品との直接的な関係はない、間接的なコストです。この間接費は、財務会計の原価計算では、面積、時間、従業員数など、なんらかの合理的な数値で、個々の製品に配賦します。

この方法は決して間違いではなく、会計取引の記録を、迅速、かつ、効率的に行うための合理的な方法です。しかし、その一方で、経営上の判断を、正確に行うためには、正確性に欠ける面があるということも否めません。そこで、それを補う方法として、管理会計のABCが使われるようになりました。では、ABCでは、どのように間接費をとらえるのかということについては、次回、説明します。

2022/5/11 No.1974

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