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洗練した組織は構成員が主体化している

[要旨]

コーチエイ社長の鈴木さんは、ご自身の会社の存在意義を、時間をかけて役員たちと話し合いを続けています。このような対話のプロセスによって、役員たちは、会社の目的と自分の目的を結びつけることができるようになり、事業活動をより洗練されたものとすることに成功しています。

[本文]

今回も、前回に引き続き、エグゼクティブコーチの鈴木義幸さんのご著書、「未来を共創する経営チームをつくる」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。鈴木さんは、会社組織が組織的活動をできるようになるためのポイントとして、「主体化」という考え方について、同書でご説明しておられます。前回は、「会社は独自の考え方を持っている一方で、それに関して、従業員自身が、自分なりの意味づけをすることに成功した人を、“主体化した人”という」ということを説明しました。

鈴木さんは、この主体化について、少なくとも役員は主体化しているべきだと考え、鈴木さんの経営する会社の役員で、話し合いを繰り返したそうです。「まずは、少なくとも、経営チームのメンバーで、パーパスについて改めて話す場、対話する時間を設けるのが良いのではないかと思います。より洗練されたチームは、そのメンバーの大半が間違いなく主体化しているはずで、そのためにも、パーパスについて、経営メンバーで話す時間を取るべきなのです。

問いは、『この会社は、何のために存在しているのか、この会社がなくなったら、社会にどんな影響があるのか、この会社は、どんな価値を、誰のために生み出そうとしているのか』などのシンプルなものでよいでしょう。(中略)(23年前に)起業した最初は10人くらいで、パーパスに向かって、毎日、わいわいと話しながらやっていたのが、50人、100人、150人と規模を増すについれて、パーパスよりも目標を強く意識するようになりました。(中略)そこで、まず、8人の役員で、パーパスについて、毎週、1時間ずつ話すことを始めました。(中略)そして、パーパスを改めて言葉にするのに、10回、10時間かかりました。

一旦、言葉にはなったものの、今でも、3週間に1回くらい、役員で集まり、パーパスについて話し続けていますが、先日、ひとりの役員が、ミーティングが終わった時に言いました。『パーパスについて話している限り、そう会社は変なことにはならないですね』この対話のプロセスの中で、役員の一人ひとりが、“自分の生きる意味”を、会社のパーパスの中に見出すことができたようです。ただ、パーパスを聞かされるだけでは、役員が主体化することはできません」(153ページ)

組織論研究の大家であるバーナードは、組織の3要素として、共通目的、貢献意欲、コミュニケーションをあげています。このうち、共通目的を明確にすることは、組織活動の成果を高めるためにも大切だということは言うまでもありません。しかし、鈴木さんが、「パーパスを聞かされるだけでは主体化しない」とご指摘しておられるように、共通目的が高く機能するためには、組織の構成員が、それを深く得心している必要があります。

その共通目的を得心(主体化)してもらうための活動が、鈴木さんのいう「対話」というプロセスだと思います。この対話には、鈴木さんの会社の事例からもわかる通り、かなりの時間を要します。だからといて、このプロセスを省くと、組織的な活動は期待できなくなるでしょう。でも、このプロセスを踏むことで、「会社が変なことにならない」、すなわち、より強い会社になることができるのではないでしょうか?

2022/9/4 No.2090

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