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[要旨]

限界利益は、商品の販売数を増やすことで増加していき、その額が固定費を上回れば、それ以降は、会社全体が黒字となります。そこで、経営者の方は、毎月、自社の限界利益額を算出し、固定費を上回っているかどうかを確認することで、会社が赤字にならないよう、事前の対策を講じることが望まれます。

[本文]

今回も、早稲田大学ビジネススクールの西山茂教授のご著書、「『専門家』以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書」から、私が気づいた点について述べたいと思います。前回は、貢献利益とは、売上高から、変動費と、その部門だけで発生する固定費である部門固定費を差し引いた残りを指しており、これは、その部門によって得られる利益を示しているので、その大きさによって、その部門を拡大するか、または、縮小・撤退するかを判断することが可能になるということを説明しました。今回は、限界利益の意義について説明します。

前々回も説明した通り、限界利益は、商品をひとつ販売したときに得られる利益を意味しています。したがたって、まず、経営者の方は、限界利益は大きくする(または、商品の販売価格に占める限界利益の割合である限界利益率を高くする)よう、工夫をすることが求められます。また、複数の商品や部門がある場合は、限界利益率の高い商品の販売を注力することが望ましいということになります。

つぎに、限界利益に関して留意すべきことは、商品の販売数を増やし、限界利益の総額が、早期に固定費を上回るようにすることです。商品は、1つでも売れれば、限界利益を得ることができますが、限界利益の総額が、固定費よりも少なければ、会社全体としては赤字の状態です。しかし、商品販売数を増やして、限界利益が固定費を上回れば、それ以降は、限界利益がそのまま、会社の利益増加額になります。

ちなみに、限界利益と固定費が同額となるときの売上高は、赤字から黒字に転換する売上高であり、これが損益分岐点売上高です。ところで、限界利益が固定費を上回るようにすることは、当たり前のように感じられがちですが、赤字の会社の赤字の要因は、経営者の方が、販売額を増やすことだけに気をとられ、粗利益(≒限界利益)が販売費及び一般管理費(≒固定費)を上回ることができなかったということは少なくありません。

このようになってしまう要因は、販売をすれば、粗利益が得られるので、それでよしと考えてしまうからのようです。でも、実際は、値引きなどによって十分な粗利益が得られていなかったために、決算を迎えて、実は、粗利益が販売費及び一般管理費を上回っていなかったということになってしまうようです。したがって、まず、粗利益(≒限界利益)を、毎月、算出し、販売費及び一般管理費(≒固定費)を上回ることができそうかを確認していくことが大切です。

2022/5/8 No.1971

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