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棚卸資産には費用が含まれている

[要旨]

棚卸資産の価額は、例えば、仕入れた商品そのものの価額だけでなく、それを仕入れるために要した付随費用(運賃など)も、いったん、取得原価として棚卸資産に計上されます。そして、その商品が販売されたときに、付随費用を含めた売上原価が費用として計上されます。このように、商品の仕入に要した費用は、実際に支払った時点では費用とされず、販売されるまで棚卸資産に計上される点に注意が必要です。

[本文]

今回も、早稲田大学ビジネススクールの西山茂教授のご著書、「『専門家』以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書」から、私が気づいた点について述べたいと思います。前回は、商業手形割引をしている会社を、銀行が融資審査するときは、その会社の割引手形の金額分を、受取手形の残高に加え、また、負債のぶに「商業手形」という科目で同額を加え、財務分析を行うということについて説明しました。今回は、棚卸資産の価額について説明します。

棚卸資産は、その会社の、商品や製品、仕掛品、材料などが計上されています。では、その金額は、どのように計上されているのかというと、有形の商品そのものの金額だけでなく、無形の費用についても計上されています。例えば、3月31日が会計期間の末日のA社が、3月に10万円の商品を仕入れ、それに際して、5千円の運賃がかかったとします。そして、その商品は、3月中は販売されない場合は、3月31日付の貸借対照表に棚卸資産として計上されることになります。このときのその商品の棚卸資産の価額は、105,000円(=商品購入代金100.000円+付随費用(運送費)です。このように、棚卸資産には、有形の商品と無形の費用も計上されます。

これは、無形の運賃は、商品を仕入れた時に費用計上するのではなく、その運賃が必要になった原因である商品が販売されたときに費用計上するという、「費用収益対応の原則」に基づき、いったん、棚卸資産として計上するからです。これと同様に、製造業の会社が、製品を製造したとき、有形の製品そのものの価額だけでなく、その製品の製造に要した、工場の作業員の賃金、燃料費、光熱費など、それを製造するために要した費用も、その製品の価額に加えられて棚卸資産として計上されます。繰り返しになりますが、棚卸資産には、有形の商品、製品の価額だけが計上されていないということにも注意が必要です。

2022/4/24 No.1957

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