地方銀行の貸倒費用の増加
[要旨]
2021年3月期の地方銀行の決算では、コロナ禍のために、貸倒費用が2割増えましたが、金融機能強化法が改正され、経営責任などが問われずに、公的資金の申請が可能となったことが反映されていると思われます。
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昨日、日本放送協会が、地方銀行の2021年3月期決算について、報道していました。それによれば、「新型コロナウイルスの影響の長期化で、貸し倒れに備えた費用などが前の年度に比べて2割増えたことが収益を圧迫」したということです。地方銀行の貸倒費用の増加については、予想されていたことなので、驚くべき内容ではありません。
ただ、どれくらい貸倒を見積もるのかということは、すべて自動的に決まるものではなく、ある程度、銀行の方針にも左右される面があります。一般的には、貸倒の見積額が多いと、経営者の責任が問われることになるので、あまり多くを見積もることは避けたがる傾向にあります。
しかし、「金融機能の強化のための特別措置に関する法律」が、昨年6月に改正(施行は8月)され、銀行が公的資金の支援の申請時に提出する経営強化計画の内容として、従来は必要とされていた、収益性や効率性の目標や、経営体制の見直し(経営者の退任)を、盛り込む必要がなくなりました。
したがって、前期の地方銀行の決算では、貸倒見積額は、それなりに実態が反映されているのではないかと、私は想像しています。そこで、地方銀行に関して、本当に注目するべきことは、引き続き、積極的に中小企業に融資を行うか、また、そのために、経営統合や、公的資金の支援を受けるのかという、実際の行動だと思います。この1年間はコロナ禍の中にあったことから、昨年までとは、同じ分析はできないことに注意が必要です。