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業績が悪化しても信金は融資を継続する

[要旨]

信用金庫は、営業エリアが限られていることから、融資している会社の業績が悪化しても、直ちに返済を求めることはしにくいという傾向があります。しかし、業績が悪化した会社の融資管理や、経営支援をできるスキルを持った人材が少ないこともあり、すべての会社に対して支援を続けることができないことも現実のようです。

[本文]

前回、鳥羽田継之さんが、ご著書、「なぜ信用金庫は生き残るのか」の中で、信用金庫は「地域密着」を実践して業績を伸ばしていると指摘しているものの、私は、地域密着による業績向上は限定的であると考えられるということを述べました。今回は、同書について、もうひとつ気づいた点について触れたいと思います。

鳥羽田さんは、景気後退期に中小企業の業績が悪化してくると、銀行は、返済を強く求めることがあるが、信用金庫は営業エリアが限定されている中で、強引な返済を求めるようなことをすると、営業エリア内の他の会社との取引に悪影響が出やすくなるので、融資している会社の業績が悪化したときは、立て直しに力を入れると述べておられます。私は、この鳥羽田さんの指摘は事実であると思いますし、そのような事例を見たこともあります。

ただ、必ずしも、すべての信用金庫でそのようなことをしているとは限らないとも考えています。信用金庫によっては、融資相手の会社のメインバンクである地方銀行が、その会社との融資取引を解消しようとすると、自金庫もメインバンクにならって融資を解消しようとすることがあります。これは、メインバンクが取引を解消すれば、その会社が倒産する確率も高くなるので、自金庫の融資も回収できなくなることを回避しようとするための対応と言えるでしょう。

ただ、これについては、別の理由として、融資相手を立て直すための能力を有する人材が、信用金庫には(地方銀行にも同じ傾向がありますが)それほど多くないという事情もあると思います。業績の悪化した会社に対する融資の管理や、業績回復のための支援は、融資取引業務のなかでも、高度なスキルが必要です。しかし、いまは、融資スキルの初歩の段階の、新規融資申込の可否を判断するスキルを持つ職員は、残念ながら、信用金庫では30%もいないと、信用金庫OBの方にきいたことがあります。

だからといって、私は、鳥羽田さんの指摘に誤りがある、または、信用金庫は頼りにならないとは考えていません。信用金庫は、鳥羽田さんのご指摘するような役割が求められており、それを多くの信用金庫が実践していただきたいと願っています。でも、合理化を進める中で、人材育成が思うように進んでいないという現実もあるようです。したがって、これからあるべき姿に少しでも近づくことができるよう、多くの信用金庫には、高いスキルを持った人材の育成を進めていただき、地域の経済活性化に力を発揮していただきたいと考えています。

2022/5/24 No.1987

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