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ひとつの銀行による持株会社設立

[要旨]

これまで、4つの地方銀行が、単独で持株会社を設立しています。これは、銀行業務以外に収益源を求めることが目的のようです。しかし、銀行以外の子会社が、自立的に活動できなければ、持株会社制にした意味はなくなりますので、今後、それらの銀行の動向が注目されます。


[本文]

9月26日に、日本経済新聞が、ひとつの銀行による持株会社設立について報道していました。これまで、銀行が持株会社を設立するときは、経営統合する2つ以上の銀行が、ひとつの持株会社の子会社となるときでした。しかし、北国銀行、十六銀行、沖縄銀行は、10月1日に持株会社をつくり、自らがその子会社になると同時に、それまで銀行の子会社であった、証券会社やリース会社も持株会社の子会社にしています。また、1年前には、広島銀行も、同様に、単独で持株会社を設立しています。

私は、このような銀行単独の持株会社設立そのものには、あまり意味がないと考えています。特に、地方銀行が設立する持株会社は、実態としては、「名ばかり持株会社」だからです。例えば、広島銀行の持株会社である、ひろぎんホールディングスの、2021年3月期の総資産は、約11兆0,096億円ですが、そのうち、広島銀行の資産は、約10兆9,774億円を占めます。収入についても、ひろぎんHDの約1,154億円のうち、広島銀行の収入が約1,117億円を占めます。

このように、広島銀行と他の会社は、形式的には兄弟会社であっても、資産や収入の面から見れば、実質的にはひろぎんHD=広島銀行という状態になっています。銀行の兄弟会社は、単独の収入があるとはいえ、それは、銀行経由の顧客がほとんどであり、銀行に頼らず、独自に顧客を得るということは、ほとんどないでしょう。

しかし、それでも地方銀行が単独で持株会社を設立するからには、それなりの理由があるということは理解できます。日本経済新聞の記事にもあるように、「今年11月に施行する見通しの改正銀行法では、異業種への参入が大幅に緩和され、システムやアプリの販売、広告、人材派遣といった事業を銀行の兄弟会社が営む場合、届け出のみで済むようになる」ようです。

したがって、銀行が、これまでの銀行業務以外に収益源を求めるとすれば、持株会社を設立し、銀行の兄弟会社に新たな事業に進出させることが得策と言えます。しかし、課題となるのは、銀行の兄弟会社が、銀行に依存的にならず、独力で収益を得ることができるかどうかです。もちろん、銀行とその兄弟会社が、ばらばらに活動せず、お互いに協調して相乗効果を発揮できることが望ましいことです。

しかし、銀行の兄弟会社が、単に、銀行から顧客の紹介を受け、その顧客から依頼された業務だけを引き受けるということであっては、実質的に銀行の中のひとつの部署に過ぎず、持株会社を設立して兄弟会社となった意味はなくなります。したがって、銀行単独の持株会社設立は、それで目的が達成できるのではなく、銀行の兄弟会社が自立的な活動ができるかどうかにかかっていると、私は考えています。

2021/10/3 No.1754

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