銀行の再編は経費率が低くなるだけ
[要旨]
銀行の再編には、経費削減効果は期待できますが、収益性向上には、直接的にはつながりません。しかし、低金利政策が行われている中で、銀行が収益性を高めることは、現実的にはかなり困難であり、今後、地方銀行が、中小企業に安定的な資金供給ができるようにするためには、政府の補助が必要と考えられます。
[本文]
先日、日本経済研究センター副主任研究員の宮﨑孝史さんが、ラジオ日経の番組で、地方銀行の再編についてお話しておられました。番組の中で、「銀行の合併・統合には、経費削減効果は期待できるが、収益性向上の課題解決のための、根本的な解決策にはならない」とお話されておられました。私も、この宮崎さんの分析は正しいと思います。
ところが、問題なのは、昨年9月に、内閣総理大臣が、地方銀行が多すぎると発言しているにもかかわらず、地域金融機関の経営環境の改善に関する政策については、地方銀行の再編以外には、ほとんど打ち出していないことです。すなわち、(1)同一地域内の地方銀行同士の合併を、独占禁止法の適用除外とする合併特例法の施行、(2)地域金融機関が経営統合するときに、システム統合などの費用を、政府が30億円まで負担する補助金制度、(3)経営統合などに取り組む地方銀行の日本銀行への当座預金に、年0.1%の金利を上乗せする特別当座預金制度などは、いずれも、経営統合することが、主な支援の対象になっています。
これは、裏を返せば、地方銀行にできることは、合併・統合しかないと、政府も認めているということです。そして、現実として、それ以外に、いま、地方銀行ができることはないと、私も考えています。そこで、今後、政府の金融行政は、どのような施策を行えばよいかというと、地方銀行が、融資業務で、適正な収益を得ることができるようにするしかないでしょう。
現在は、低金利政策が行われていることから、地方銀行の資金調達コストは、ほぼ0であるとはいえ、融資の信用コスト(融資が返済されなかったとき、または、将来のそれに備えるための費用)は1%程度が妥当であるし、事務コスト(銀行業務を遂行するための人件費や、システム運用にかかる費用)も、1%程度が妥当でしょう。
そうであれば、融資利率が2%を確保できなければ、銀行は適正な利益を得ることができません。現在、中小企業が低金利で融資を受けることができるようになっていることは、中小企業にとってはありがたいことですが、それが長く続くと、融資をする銀行の体力が維持できず、かえって、中小企業の安定的な資金調達の妨げになってしまうことにつながります。
したがって、私は、例えば、政府が銀行の行う融資の支払い利息の一部を補助するなどの制度を、現在よりも幅広く行うようにすることが必要だと思っています。このような施策は、銀行だけに対する救済策のように受け止められがちですが、銀行が安定して中小企業へ資金供給を行うためには、必要なことだと思います。もちろん、地方銀行自身も、引き続き、努力を行わなければならないことは、言うまでもありません。