合同会社の薦め
[要旨]
合同会社は、株主総会を開く義務はない、役員の任期がない、決算公告の義務がないなど、中小企業に向いた会社になっています。
[本文]
私は、これまで何度か合同会社をお薦めしてきましたが、今回、改めて合同会社の利点について説明したいと思います。私が合同会社を薦める最大の理由は、多くのオーナー会社は、株式会社であっても、実態としては、合同会社のような運営をしているからです。
そのひとつめの例は、株式会社の株主総会に相当する機関が合同会社にありません。強いて言えば、出資者を構成員とする「社員総会」を開くことはできますが、それは会社法で義務付けられているわけではありません。(ただし、定款で、「社員総会」を開いたり、社員総会で決定する事項を定めることは可能です)
株式会社のオーナー会社の多くも、実態としては、会社法で義務付けられている株主総会は開いていない(特に、株主が社長ひとりだけという場合は、株主総会を開く意味はほとんどない)わけですから、そうであれば、そのような株式会社は、事実上、合同会社と同じといえるでしょう。
ふたつめは、合同会社は役員の任期がないということです。厳密には、合同会社では、経営者(役員)=出資者(社員)でなければならず、出資者でいる間は、その人は、必然的に経営者でもあるので、役員の任期という概念がありません。株式会社では、取締役(必ずしも株主である必要はありません)には任期があり、取締役に就任したときと、任期が到来し、再度、取締役になったときは、その旨を登記しなければなりません。
一般の株式会社の取締役の任期は、最長で2か年ですが、多くのオーナー会社では、株式譲渡制限会社(定款で、すべての株式に関し、譲渡するときは会社の承認を必要とすると定めている会社)とすることで、株式譲渡制限会社に認められている、取締役の任期を10か年にしています。すなわち、実態としては、オーナー会社では。役員の交代の必要性がほとんどなく、任期はできるだけ長くしているようです。これについても、合同会社に近い状態と言えます。
みっつめは、合同会社は決算公告が不要ということです。株式会社は、株主総会で決算が承認された後、官報か日刊新聞紙に貸借対照表の要旨を載せるか、インターネットに貸借対照表と損益計算書を掲載することが、会社法第440条の規定で義務付けられています。
これを怠ったときは、会社法第976条の規定で、100万円以下の過料に処されることになっていますが、実態としては、多くの株式会社は決算公告をしておらず、また、罰せられることもないようです。一方、前述の通り、合同会社は、もともと決算公告の義務がないので、決算公告をする必要もないし、罰せられることもありません。このような観点から、私は、これから会社を設立しようとする方には、合同会社をお薦めしています。
ただし、合同会社にはデメリットがあります。そのひとつめは、合同会社の認知度が低いということです。事業を始めようとする方が、会社を設立する目的は、会社で事業を営むことで、社会的な信用を得ようとすることであり、それは、目的の大きな部分を占めていると思います。
しかし、株式会社と比較して、合同会社の認知度はまだ日本では低く、合同会社を設立しても、対外的な印象があまりよくならないと、その目的が果たせなくなります。もうひとつは、合同会社の代表者の役職名が。「代表社員」となることです。これも、株式会社の代表者の役職名である代表取締役と比べると、認知度が低いことから、合同会社の設立を避けたいと考える方が多いようです。
しかしながら、合同会社の特徴を前向きにとらえている会社はたくさんあります。特に、米国では、日本の合同会社に相当するLLC(Limited Liability Company)は多数あり、Apple、Amazon、Google、USJ、西友(親会社はウォルマート)などの日本法人は、いずれも合同会社です。これらの日本法人は、合同会社とすることで、前述のような合同会社のメリットを享受しているようです。
これからは、有名で大きな会社でも、合同会社を選択する例が増えてくると思いますので、それにしたがって合同会社の認知度が高くなっていけば、前述の合同会社のデメリットも解消していくものと、私は考えています。(この記事は、理解の容易さを優先して書いたため、内容に不正確な部分がありますことをご了承ください)
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