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[要旨]

貸借対照表上の固定資産の時価が下がったときは、それは、直ちに反映されません。一般的には、時価が帳簿価額の50%程度以上下落し、かつ、一定の要件を満たした場合に、時価を帳簿価格とします。

[本文]

今回も、早稲田大学ビジネススクールの西山茂教授のご著書、「『専門家』以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書」から、私が気づいた点について述べたいと思います。前回は、取得した資産の時価が、取得価額を上回っても、取得価額を貸借対照表の価額とする資産の評価方法である低価法について説明しました。今回は、前回とは逆に、取得した資産の時価が、取得価額より下がったときは、会計上はどうするのかということについて説明します。

取得した資産の時価が、取得価額より下がったときの会計上の取扱は、減損会計基準にしたがいます。ただし、この会計基準は、やや難解であることから、中小企業向けの会計に関する指針を示している、「中小企業の会計に関する指針」での、減損会計に関する記載を見てみたいと思います。「固定資産について予測することができない減損が生じたとき又は減損損失を認識すべきときは、その時の取得原価から相当の減額をしなければならない。

減損損失の認識及びその額の算定に当たっては、減損会計基準の適用による技術的困難性等を勘案し、本指針では、資産の使用状況に大幅な変更があった場合に、減損の可能性について検討することとする。具体的には、固定資産としての機能を有していても次の(1)、(2)のいずれかに該当し、かつ、時価が著しく下落している場合には減損損失を認識する。(1)将来使用の見込みが客観的にないこと資産が相当期間遊休状態にあれば、通常、将来使用の見込みがないことと判断される。(2)固定資産の用途を転用したが採算が見込めないこと」

したがって、単に、時価をそのまま資産の価額に反映させるのではなく、一定の条件が必要になります。ちなみに、「時価の著しい下落」とは、「市場価格が帳簿価額から50%程度以上下落した場合」と言われています。これを、逆に考えれば、相当の価額の下落がなければ、時価は帳簿上の価額に反映されず、概ね、取得価額のまま計上されるということになります。なお、前述の(1)と(2)については、実務上の判定はやや難解なため、実際に適用しようとするときは、専門家の方とご相談されることをお薦めします。

2022/4/20 No.1953

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