2023年から経営者保証に説明義務
[要旨]
金郵庁は、監督指針を変更し、2023年から、中小企業に融資をする条件として、経営者を連帯保証人にする場合、その理由を説明する義務を課す方針のようです。しかし、中小企業の多くは、経営者ガイドラインの経営者保証が不要となる要件を満たしていないので、銀行が経営者保証を条件としようとする場合、その理由を説明することは容易であり、金融庁の思惑はうまくいかないと考えられます。
[本文]
11月1日に、金郵庁は、「『中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針』等の一部改正(案)」を公表しました。この改正案の最大のポイントは、銀行が融資を行う際に、経営者を連帯保証人とする場合、「どの部分が十分ではないために保証が必要になるのか」、「どのような改善を図れば保証の変更・解除の可能性が高まるか」を説明する義務を課すことです。
金融庁が、このような指針の改正を行おうとする背景は、日本経済新聞の記事によると、金融庁が、経営者保証に依存しない融資を増やそうとしている一方で、「2021年度の中小企業向け新規融資に占める経営者保証を付けない件数は、民間金融機関全体で29.9%にとどまっている」ことにあるようです。
しかし、私は、金融庁の狙いは失敗すると考えています。経営者保証ガイドラインでは、経営者保証を取らない要件として、(1)会社と経営者の資産が区別されている、(2)会社の業績が良好である、(3)会社の財務状況について、適宜、情報開示が行われいる、という3つの要件が示されています。
そして、この要件を満たしている会社は、割合としては少ないので、多くの会社に対して、銀行が、「経営者保証ガイドラインが求める要件を満たしていない」と説明することはそれほど難しくないからです。仮に、前述の3つの要件を満たしているにもかかわらず、銀行が経営者保証を解除していない場合があったとしても、そのような会社は業績がよいわけですから、他の銀行から見れば融資をしたい相手なので、経営者保証をつけない条件で融資して欲しいと他の銀行に打診すれば、容易に融資取引を移すことが可能です。
このことを、言い換えれば、現在、経営者保証を条件として融資を受けている会社の多くは、本来なら経営者保証が不要な会社なのに、銀行に目利き能力がないために経営者保証を条件にされているのではなく、単に、前述の3つの要件を満たしていないために、経営者保証を条件にされているのだと思います。もし、金融庁がこのような状況を理解していれば、今回の監督指針の変更を行うことで、経営者保証に依存しない融資が減少するという判断は行わなかったでしょう。
2022/11/14 No.2161