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能率と有効性、および、誘因と貢献

[要旨]

バーナードは、組織が成立するためには、組織の目的を達成する能力や度合いである「有効性」と、組織の維持に必要な貢献を得るための誘因を提供する能力である「能率」を、高めていく必要があると述べています。


[本文]

前回は、バーナードのいう、組織の3要素について説明しましたが、今回は、それを踏まえ、組織の均衡について説明します。バーナードは、組織の3つの要素が、組織の成立に必要なものであることから、組織の3つの要素が維持できるよう、組織と組織の外部の状況との関係を調整し均衡させなければならないと述べています。これに関し、バーナードは、「有効性」と「能率」という考え方を使って説明しています。

まず、有効性とは、組織の目的を達成する能力や度合いを指します。有効性は、一般的には、「効果のある性質」などという意味で使われていますが、バーナードの場合、「組織」と同様に、一般的に使われる有効性とは別の意味で使っているようです。話を戻すと、組織は、共通目的があることで成立しているわけですから、目的が達成できない状態のときや、目的が達成してしまったときは、組織が存続する意味もなくなります。

そして、それは有効性がない状態ということにもなります。ですから、会社の目的が達成できない状態のときは、経営者の方は、目的を達成するための条件を整えなければなりません。例えば、強力なライバルが現れて、自社の売上の多くを奪われそうなときは、経営者の方は、販売する商品を変えたり、販売する場所を変えたりして、売上を維持するという対応が求められます。

また、目的が達成してしまったときは、新たな目標を作り、組織を維持するということもあります。例えば、ある会社で新製品の開発のプロジェクトチームが、新製品の開発を終えて目標を達成したときは、そのチームにその新製品の販売を担当させたり、あるいは、また別の新製品の開発を担当させたりするということがあります。

つぎに、能率とは、組織の維持に必要な貢献を得るための誘因を提供する能力のことです。この能率は、一般的には、「一定時間にできる仕事の割合」などという意味で使われていますが、バーナードは、これについても、一般的に使われる能率とは別の意味で使っているようです。

話を戻すと、能率の具体的なものは、会社でいえば、従業員への給与などの金銭的な誘因だけでなく、地位、やりがいといった、非金銭的な誘因も含まれます。例えば、給与が少ない会社(=能率の低い会社)は、金銭的な誘因が低いために、従業員の士気がさがったり、退職されたりする可能性が高く、会社の事業に悪い影響を与えることにつながります。そこで、経営者の方は、給与を高くしたりやりがいを与えたりして、従業員の士気をあげたり、長期間勤めてもらえるようにしたりする必要があります。

とはいえ、従業員の給与を高くするだけでよいのかというと、そう単純なわけではありません。給与を高くし過ぎた結果、会社が赤字になってしまえば、投資家が出資してくれなくなったり、銀行が融資をしてくれなくなったりします。また、赤字にならないように製品の販売価格を引き上げれば、売上高が減少してしまうかもしれません。そこで、従業員の給与を上げる代わりに非金銭的な誘因を増やしたり、より利益の得られる事業に進出したりするといった工夫が求められます。

そして、このような、有効性、能率、誘因と貢献のバランスをどのようにとるか、すなわち組織の均衡を図ることは、経営者の重要な役割です。よく、組織のリーダーは、組織を力強く牽引していく役割があると認識されていますが、それは間違ってはいないものの、このような要因を調整する役割も欠かすことはできません。むしろ、組織の調整を上手に行うことができれば、組織としての成果は、自ずと向上していくでしょう。

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