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原理原則を守らない会社に将来はない

[要旨]

京セラ創業者の稲盛和夫さんは、機械の実際の耐用年数が、法定耐用年数より短い場合、有税償却となっても、実際の耐用年数で減価償却することにしているそうです。これは、法定耐用年数に従って償却することは、会計の原理原則に反することになるという考え方によるものです。そして、稲盛さんは、原理原則に反する会社に将来はないと考えていたそうです。

[本文]

稲盛和夫さんのご著書、「稲盛和夫の実学-経営と会計」を読みました。同書で、稲盛さんは、税法で定められている、固定資産税の法定耐用年数についての疑問を書いておられました。「経理・税務の専門家は、『決算処理上6年で償却したとしても、税法上は、(京セラで使っているセラミックの粉末を成型する設備は)12年で焼却しなければならない。だから、もし、そうすれば、最初の6年は償却が増えて、利益は減る。

ところが、税金の計算では、法定耐用年数の12年での償却となるので、利益は減っても、その分の税金は、減らないことになる。いわゆる税金を払って償却する、有税償却になる』と言うであろう。(中略)たとえ、実務上の常識がそうであったとしても、経営や会計の原理原則に従えば、有税であっても、償却すべきである。6年でダメになるものを、12年で償却したら、使えなくなっても償却を続けることになる。すなわち、実際に使っている6年間は、償却が過小計上されており、その分が、あとの6年へ先送りされていることになる。

『発生している費用を計上せず、当面の利益を増やす』というのは、経営の原則にも会計の原則にも反する。そんなことを、毎年、平然と続けているような会社に、将来などあるはずがない。『法定耐用年数』を使うという慣行に流され、償却とはいったいなんであり、それは経営的な判断としてどうあるべきなのか、という本質的な問題が忘れられてしまっているのである。だから、京セラにおいては、法定耐用年数によらず、設備の物理的、経済的寿命から判断して、『自主耐用年数』を定めて償却を行うようにした」(25ページ)

多くの会社では、固定資産の減価償却を、法定耐用年数に従って行っています。これは、税法で定められた通りの減価償却を行うことが、会計処理の負担が少なくなることが理由と思われます。しかし、稲盛さんは、法定耐用年数が、実態と食い違っている場合に、法定耐用年数で減価償却を行うことについて、「将来などあるはずがない」と批判しています。私も、実際は6年間しか使えない機械を、税法に従って12年間で減価償却をするとすれば、経営者は正確な費用を把握できないことになり、問題だと思います。

但し、法定耐用年数より短い期間で減価償却を行うと、減価償却費の一部しか損金に算入できなかったり、経理処理の手間が増えたりするなどのデメリットがあります。ただ、法定耐用年数は、公平な課税を行うために定められているという背景があり、このことは、稲盛さんも理解しておられるようです。それでも稲盛さんは、実態に合わせた会計処理を行わ羅ければ、「将来はない」と考えたわけです。それだけ稲盛さんは原理原則にこだわっておられたということです。私は、稲盛さんのように原理原則を追求することが、京セラの発展のひとつの要因だったのではないかと考えています。

2022/12/4 No.2181

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